テクノロジー株式のリターンに格差をもたらすAIブーム

年初来で上位企業はきわめて堅調だが、下位10%は数年ぶりの低水準。

円チャートの中にロボットと半導体が描かれたコラージュイラストで、背景にはグラフィック要素が配置されています。

<今回のポイント>

  • 2021年以降みられたテクノロジーセクターにおける二極化は、2026年にその差がますます拡大し続けている。ソフトウェア企業の株価が低迷する一方でハードウェア企業は急騰している。
  • データセンター向けストレージや半導体に関連するハードウェア株式が、テクノロジーセクターの勢いを取り戻す要因となった。
  • 株価と収益のかい離が拡大するにつれ、ソフトウェア関連銘柄は引き続き勢いを失っている。

どこを見るかによって、テクノロジー株式にとっては素晴らしい年とも言えれば、冴えない年とも言える。

AIブームの影響によって著しい格差が生まれているからだ。インフラ整備を支える企業、とりわけ半導体やメモリ製造企業の株式は急騰しており、わずか数か月で株価が2倍、3倍になったものもある。一方、AIによってビジネスモデルや競争優位性が脅かされると市場が懸念しているソフトウェア企業の株式は、下落傾向にある。

「基本的に市場は、AIがソフトウェアのビジネスを大きく変えるだろうと考えている」と、モーニングスターの米国市場チーフストラテジスト、デイブ・セケラは述べている。

「多数の投資家が、ソフトウェア・プラットフォームの多くが最終的にはAIに完全に置き換えられてしまうのではないかと懸念している」とセケラは付け加え、ソフトウェアに対するこうした懸念は行き過ぎだと考えている。

この懸念が、テクノロジーセクター内で非常に大きなリターンのばらつきを生む原因にもなっている。2026年5月13日現在、テクノロジー株式の上位10%と下位10%の年初来平均リターンには、132.51パーセントポイントという驚異的な差が生じている。

ここ数年、パフォーマンスの格差は拡大しており、現在の格差は2025年末時点よりも拡大しており、3年前と比べると約2倍になっている。

以下は、テクノロジーセクターに属する上位10%の企業(緑)と下位10%の企業(赤)の株式の、各年の平均リターンを示している。前述の通り2026年は年初来で132.51パーセントポイントと、その差は期間内で最大である。

ハードウェア、半導体企業がテクノロジーセクターを牽引

テクノロジー株式の上位10%は、年初来で平均93.19%のリターンを記録している。セクター内で時価総額上位10%の企業群にはハードウェア関連企業が含まれており、年初来リターンでセクタートップ5社のうち3社がハードウェア企業である。現在、テクノロジーセクターのトップはメモリハードウェア企業のSanDisk(SNDK)で、年初来のリターンは511.4%と驚異的な上昇を示している。これは、ハードウェアに次いで好調だった半導体関連企業の中でも高パフォーマンスだったIntel(INTC)のリターンの2倍以上に相当する。

ハードウェア関連株式は大幅に上昇し、年初来の平均リターンは92.5%と、テクノロジーセクター全体の2025年のリターンを20パーセントポイント以上も上回った。これは、2020年から2025年までの過去5年間にハードウェア関連株式が記録した平均年率リターン82.7%をも、約10パーセントポイント更新している。

半導体企業もまた、確固たる勝ち組である。モーニングスター米国テクノロジー株指数に含まれる半導体製造機器・資材関連株式は、2026年に平均76.6%上昇し、半導体関連株式全体も平均69.4%上昇した。

半導体関連で好調な企業のひとつとして前述したIntelの株価は、年初来で225%以上も急騰している。モーニングスターのシニア・エクイティ・アナリストであるブライアン・コレロは、Intelの決算に関する最近のアナリスト・レポートで、「同社は第1四半期の決算で売上高について”驚くべき”数字を報告をしており、これを踏まえるとAIのインフラ整備が進むにつれ、同社のサーバー用プロセッサに対する需要は引き続き堅調に推移するだろう」と述べている。

AIブームは、Nvidia(NVDA)のような半導体メーカーの台頭から始まった。現在の状況についてセケラは、「データセンターの拡張ブームが、特にメモリやストレージ関連で幅広い需要があるハードウェア企業の株価をさらに押し上げている」と説明している。「ハードウェア関連株式が上昇している理由は、今後数年間、こうした汎用ハードウェアの深刻な供給不足が生じると市場が予測しているためである」とセケラは述べている。

SanDiskに加え、大手ストレージ企業としてSeagate Technology(STX)やWestern Digital(WDC)が挙げられる。両社の株価は年初来で、それぞれ194.2%および183.8%上昇している。これらは2026年のテクノロジーセクターにおける上位4社のうち3社にあたり、いずれもデータセンター向けストレージソリューションを提供している。

以下は主なハードウェア、半導体関連企業の年初を起点とした株価の変動率である。

セケラによると、AI関連インフラ拡充ブームにより、ハードウェア企業の収益と営業利益率は急速に拡大しているという。しかしまた、AIインフラ製品への需要が2028年にピークに達すると予想している。これらのハードウェア企業は現在AIブームの波に乗っているものの、需要が減少すれば業界全体が崩壊しかねないとセケラは警告している。

「将来、市場の需要に供給が追いつくにつれて、汎用的なハードウェア企業が最も大きな下落リスクを抱えることになると予想しており、ひとたび売却が始まれば大幅に下落する可能性があるだろう」とセケラは述べている。

以下は、各業種の2020年~2025年の平均年率リターン(ブルー)と年初来のリターン(紺)の比較である。

ソフトウェアやIT関連株式が、テクノロジーセクターの下振れ要因

一方、テクノロジーセクターの下位10%は平均で年初来39.3%下落し、2022年以来の最悪の記録となっている。2026年の年初来リターンが最も低かったテクノロジー株式ワースト10社のうち、8社がソフトウェア企業である。たとえば、ソフトウェアのマーケティング・販売会社であるHubSpot(HUBS)や、交通ソフトウェア企業のVia Transportation(VIA)が含まれており、両社とも2026年年初来で約50%下落している。

ソフトウェア企業の株価は、2025年第4四半期に始まった下落傾向を今年はさらに強めている。モーニングスター米国テクノロジー指数に組み入れられているソフトウェア・アプリケーション・インフラ企業86社のうち、75%以上が年初来で下落している。

対照的に、ハードウェア・半導体関連企業で年初来下落となっているのは、わずか7%程度にとどまっている。

年初来で47.6%下落したAtlassian(TEAM)や44.8%下落したWorkday(WDAY)を含むソフトウェア・アプリケーション企業全体では、年初来平均で23.9%下落しており、業種別でみるとITサービスに次いで2番目に不振だった。2026年のソフトウェア・アプリケーション全体のリターンは、過去5年間の年率上昇率の平均である27.0%を大きく下回っている。

年初来で42.6%下落したSailPoint(SAIL)や35%下落したZscaler(ZS)などのソフトウェア・インフラ関連企業も同様の状況にある。この業種は年初来平均で5.3%の下落にとどまったものの、過去5年間の年率上昇率の平均である28.6%を大きく下回っている。

以下は、主なソフトウェア 企業の年初を起点とした株価の変動率である(青はモーニングスター・米国テクノロジー株指数)。

2026年、AI隆盛の中でソフトウェア企業がファンダメンタルズを維持できる可能性に、市場ではますます懸念が強まっている。とはいえ、最近の決算発表では、この難局を乗り越えているソフトウェア企業の存在を示す兆候もある。

例えば、年初来で株価が15.5%下落したMicrosoft(MSFT)は、AI関連の需要に支えられ予想を上回る売上高となった。モーニングスターのシニア・エクイティ・アナリストであるダン・ロマノフは、「売上高、利益率のいずれも、われわれの強気な予想をさらに上回っており、さまざまな観点から業績は引き続き良好である」とマイクロソフトの決算報告に基づく最近のアナリスト・レポートで述べている。

セケラは、ソフトウェア企業がAIをビジネスモデルに組み入れて、製品を強化するだろうと考えている。彼は、市場のソフトウェア企業に対する忌避は過剰反応だと分析しており、ソフトウェア企業が捨て去られることはないと考えている。

「AI関連株式は確かに今も魅力的な分野であり、間違いなく長期的な投資機会がある。しかし、投資家は慎重に企業を選別する必要があるだろう」とセケラは述べている。「投資家が長期的な資産形成の目標を達成したいなら、AI関連投資においてはイノベーションの先端を走り、長期で持続可能な競争優位性を持つ企業と、そうではない企業とを峻別しなければならない」とセケラは説明している。◇

※ 本稿はモーニングスターの「The AI Boom Is Creating a Big Gap in Tech Stock Returns」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこのレポートで言及された有価証券を保有しています。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針