ウォーレン・バフェットから学ぶ、お金では買えない大切な10箇条

Berkshire HathawayのCEOを退任する「オマハの賢人」の数々の人生訓に感謝をこめて

Warren Buffett seen on a stage in New York City.
Daniel Zuchnik 通じて Getty

2024年から、筆者は投資に対する感謝の理由を共有するという感謝祭の習慣を始めることにした。今年は、間もなく95歳で早期退任を迎えようとしているウォーレン・バフェット氏にこのコラムを捧げたい。長年にわたってBerkshire Hathaway BRK.Aの株主であり、オマハでの同社の年次総会に時折出席してきた私は、バフェット氏の投資手腕だけでなく、彼が授けてくれた人生への教訓にも感謝している。

たとえ私が将来、バフェット氏のOxyChem買収についての詳細を忘れたとしても、彼が体現した美徳はいつまでも覚えているだろう。それはしばしば印象的な警句として伝えられた。(ちなみに、私のお気に入りは「潮が引いて初めて、裸で泳いでいた者が誰か分かる(Only when the tide goes out do you discover who’s been swimming naked.)」だ。)彼が最近株主に向けて送った感謝祭の書簡も、予想通り知恵に満ちたものだった。

以下に、ウォーレン・バフェット氏から学ぶべき、お金のことより大切な教訓として、10箇条を紹介しよう:

1. Be kind:親切であ

「親切にはコストがかからないが、同時に値付けできないほどの価値がある」とバフェット氏は最近の書簡に記しています。「信仰を持っているか否かに関わらず、行動の指針としてこの黄金律に勝るものは無い」。

バフェット氏は長年、品格ある人物として知られてきた。同社の株主総会で、彼が反対意見を――それがたとえ支離滅裂な長広舌でも――最大限の敬意をもって扱う姿を私は見てきた。「称賛は個人に、批判はカテゴリに向けて」と彼は言う。これは、彼が若い頃にデール・カーネギー氏の『人を動かす(How to Win Friends and Influence People)』から学んだ教訓の一つである。

親切は実際にビジネスにも良い影響をもたらした。「我々は敵対的買収は行わない」とバフェット氏はかつて買収候補の企業に宛てた書簡で伝えた。「合併を進める意向があるなら、電話をください」。かくして何年にもわたり、多くの経営者から連絡があった。

「バフェット氏は私たちの家族を尊重し、私たちのやり方を続けさせてくれました。それはとても大きな意味がありました」と、1983年にNebraska Furniture MartをBerkshire Hathawayに売却したローズ・ブルムキンの家族は語った。従業員や仕事仲間を惜しみなく称賛することも忠誠心を育む。「自分の死んだときのことを考え、そこから逆算して行動せよ」という言葉は人生の指針である。

2. Have integrity誠実であれ

「評判を築くには 20 年かかるが、それを台無しにするには 5 分もかからない」とバフェット氏はかつて語った。多くの人にとって、バフェット氏は誠実・率直・公平という米国中西部的な価値観を象徴する存在である。1985 年にBerkshireと組んで ABC の買収を成功させたCapital Cities Communicationsのトム・マーフィー氏は、「彼は、私がこれまで関わった中で最も公平な人物である。彼は決して我々を利用しようとはせず、常に双方が取引に満足することを望んでいた」と述べている。

交渉では強硬な一面もあったが、バフェット氏は誠実さによって評判を築き、自身とバークシャーの株主に利益をもたらしてきた。その一例として、1991年、スキャンダルにまみれたソロモン・ブラザーズの経営を担ったバフェット氏は自身の方針について議会でこう証言した――「会社の損失には理解を示すが、会社の評判を傷つける行為には私は容赦しない」と証言した。また「自分の行動が、翌日新聞の一面に掲載されても構わないか、自問せよ」という名言は、全ての職場に掲げるべきものだろう。

3.Practice patience忍耐強くあれ

バフェット氏は、「なぜあなたの投資手法を真似する者が少ないのか?」と訊かれ、「誰ものろのろと富を築きたがらないからだ」と答えた。人々の注意は長続きせず、24時間膨大な量のニュースが流れ続け、あらゆる情報がクリックひとつで得られる昨今、我々はかえって最も重要な長期的な視点を見失いがちである。

バフェット氏はかつてこう語った。

人生は雪玉のようなものだ。重要なのは、湿った雪と非常に長い坂を見つけることである。

Warren Buffett

これは複利の原理を美しく表現した比喩であるが、もっと多くのことにも当てはまる。伝記スノーボールの中で、アリス・シュローダーはバフェット氏の別の言葉を引用している。「私は単にお金の複利についてだけ話しているのではない。世界を理解すること、そしてどのような友人関係を築くかという点においても複利効果が表れるのだ」。投資において、バフェット氏は目先の利益のために行動することを避け、機会が熟すまで待つこを良しとした。 また、別の時期には、いたずらに行動せず何もしないことを美徳とした。

「迷った時は持ち続けなさい」と彼は述べている。「私のお金のほとんどは、尻に根を張って座り続けることで積み上げたものだ」。バフェット氏は投資家に、若いうちに投資を始め、借金を避け、過度な売買をしないようアドバイスしている。彼にとって「株式市場とは、忍耐強い人から忍耐強くない人へとお金を移すための装置である」という。

4.Use caution:慎重であれ

「安全のための余裕(Margin of Safety)」という概念は、バフェット氏が師であり上司でもあり、またバリュー投資の父とも称されるベンジャミン・グレアム氏から学んだものである。その後、フィル・フィッシャー氏チャーリー・マンガー氏の影響を受け、バフェット氏の考え方は進化し、「素晴らしい会社を適正な価格で買う方が、そこそこの会社を高値で買うよりもはるかに良い(It’s far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price)」と信じるようになった。とはいえ、彼の倹約精神は変わることなく受け継がれた。金塊貯蔵庫として名高いフォート・ノックス要塞のように堅固なバランスシートが、バフェット氏に割安な機会を捉え、「最後の貸し手」として行動する力を与えた。

しかし、Berkshire Hathawayが現在保有する3,580億ドルの資金は、同社が「裸で泳ぐ」ような事態に陥らないことも保証している。バフェット氏はレバレッジを避け、デリバティブ取引を「金融の大量破壊兵器」と呼んだことは有名である。金融危機を振り返って彼が言った「明日の朝、見知らぬ人の善意に頼らねばならない状況には誰も、決してなりたくない」は広く当てはまる言葉である。備えこそが不可欠なのだ。「いつ雨が降るか予測するのは大した問題ではない。方舟を造って備えることが重要なのだ」 とバフェット氏は語っている。

5.Be positive:前向きであれ

バフェット氏は最近の株主への書簡でこう記している。「株価は思い通りには動かないもので、現在の経営陣のもとで過去60年間に3度、50%くらい下落したこともある。 しかし、絶望しないでほしい。アメリカは必ず復活するし、Berkshireも同様だ」。バフェット氏の投資成功の根底には、資本主義と人間の創意工夫、そしてアメリカに対する揺るぎない信念がある。公平を期すならば、過去数十年にわたる経済成長と資産価格の上昇を彼が経験してきたことも一因だろう。

それとは対照的に、ベンジャミン・グレアム氏の慎重な姿勢は、同彼が目の当たりにした大恐慌や金融パニックによって培われたものである。それでもなお、楽観主義は概して投資家に報いてきた。おそらく、バフェット氏の前向きな姿勢、過去にこだわらない態度、そして「タップダンスをしながら仕事に赴く」という習慣が、彼の長寿に寄与している可能性が高い。それとも、シーズ・キャンディー、チェリーコーク、オマハ・ステーキという食生活のおかげだろうか?

6.Think independently:自分の頭で考えよ

「他者が貪欲な時に恐れ、彼らが恐れる時に貪欲たれ」という言葉は、バフェット氏の逆張り投資の精神を象徴している。1999年、テクノロジー・メディア・通信バブルの絶頂期に、彼は「株価が上がり過ぎている」と警告した。 2008年10月、世界金融危機で市場が急落した時は、バフェット氏はニューヨーク・タイムズ紙に 「アメリカを買え。私はそうしている」と題する論説を寄稿した。

バフェット氏が世の潮流に逆らったのは、何も1999年や2008年が最初というわけではなかった。1960年代後半の(Go-goイヤーズと言われた)好景気後、彼は自分が「この市場環境に適応できない」と感じて、投資パートナーシップを閉鎖したことは有名である。その後、1970年代の弱気相市場では、彼は経営不振の繊維事業であったBerkshire Hathawayを使って、GEICOやWashington Postなどの割安な資産を大量に買い集めた。

チャーリー・マンガー氏が「学習マシン」と評したほどの貪欲な読書家であるバフェット氏は、伝記作家アリス・シュローダー氏に対し、「あなたの正しさや間違いは人々が同意するかどうかで決まらない。事実と論理が正しければ、あなたは正しいのだ」と語っている。

7.Exhibit humility:謙虚であれ

「能力の輪(Circle of Competence)」はバフェット氏の基本概念である。彼は常に自らの限界を認め、強みを活かすことに努めてきた。この姿勢は、何十年もの間彼をテクノロジー投資から遠ざけてきたが、Apple (AAPL)株式については「本質的に消費者ビジネスである」という理由で買い入れ、Berkshireに多大な利益をもたらした。

「リスクは、自分が何をしているのか理解していない状態から生じる」と彼は説明している。バフェット氏はまた、常に投資上の失敗を認めてきた。例えば「クリーブランド最悪の工場」と彼が呼んだUS Air、もともとのBerkshire Hathaway、その他多くの「(投資)機会を見逃した罪」などである。

彼はまた、夫や父親としての欠点も認めている。 伝記作家アリス・シュレーダーは著書『スノーボール』でバフェット氏について「謙虚さは人の心を解きほぐす」と記している。こうした姿勢は、バフェット氏がデール・カーネギー氏の『間違った時は、迅速にハッキリと認めよ』という助言から学んだ教訓である。

最近の株主への書簡でバフェット氏はこう記している。

過去の過ちを後悔し続けるな。そこから何か少しでも学び、前に進め。

Warren Buffett

8.Be content:足るを知るべし

バフェット氏は「『嫉妬』は七つの大罪の中で、犯しても楽しくない唯一の罪だ」と述べている。他人と自分を比べることは、不満の温床となる。特にソーシャルメディア時代の今は、幸福や成功のイメージが世界中に氾濫している。理想と比べて自分に不足を感じるのは容易だが、その理想は往々にしてただの幻想に過ぎない。

生涯をかけて巨万の富を築きながらも、バフェット氏は幸福はお金や名声、権力からは得られないと強調してきた。

とバフェット氏は学生に向けて語った。ありふれた言葉に聞こえるかもしれないが、バフェット氏は「人生で最も素晴らしいものはお金では買えない」と教えてくれた。

9.Value continuity:継続性の重視

バフェット氏は、自身が退いた後もBerkshire Hathawayが繁栄し続けるよう、後継者体制を整えてきた。新CEOのグレッグ・エイベル氏について、バフェット氏は「優れた経営者であり、たゆまぬ努力家であり、誠実なコミュニケーションをする人物」と評している。エイベル氏のほか、保険の専門家であるアジット・ジェイン氏や、トッド・コムズ氏テッド・ウェシュラー氏らも引き続き重要な役割を担っている。

バフェット氏は最近の株主への書簡で、「チャーリーと私が長年抱いてきたグレッグへの信頼感がBerkshireの株主の中に育つまで、私は大株主のままで居る」との意向を表明している。

慈善活動面では、ゲイツ財団への寄付に加え、3人の子供が運営する慈善団体への寄付を増やすと発表した。「墓場から統治するというやり方が、まともだった試しは無い。現在に至るまで、私にはそうしたいという衝動は一切無い」とバフェット氏は認めている。

10.Practice gratitude:感謝を表す

「私は1930年に、健康でそこそこ頭の働く、白人の男の子としてアメリカに生まれた。おお!幸運の女神に感謝する」とバフェット氏は最近の株主への書簡に記している。彼はこれを「誕生の当たりくじ」と表現したこともある。

バフェット氏の感謝祭の書簡は、幼少期の病気を克服して生き残り、良い環境で、特に愛するオマハで育ち、そして偉大なマンガー氏をはじめとする多くの友人や同僚とともに働けたことへの感謝を示している。

これは、私たち自身がいかに恵まれているかに目を向け、自らの手にある幸運を自覚するための、良いきっかけになる。バフェット氏が言うように、「今木陰で休んでいる人は、かつてその木を植えた誰かの恩恵を享受している」のである。 ◇

さて、本コラムが批判を伴わない賛辞であることに、読者は正しくお気づきであろう。バフェット氏も人間であり、我々と同様に欠点があるのは承知している。彼は投資で失敗したこともあるし、性格上の欠点もあろう。それでも、私は彼の行動と教えから学ぶべきことは非常に多いと考えている。

お時間のある際には、筆者宛てメールを dan.lefkovitz@morningstar.com までお気軽に。フィードバックや、今後のコラムに関する提案をお知らせください。いつでも心よりお待ちしています。

※ 本稿はモーニングスターの記事「10 Things We Can Learn From Warren Buffett That Have Nothing to Do With Money」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

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