セミリキッド・ファンドの流動性危機は「想定外」などではなく、短期投資家が見せる「よくある筋書き」

浮気な資金の流出入は荒れる大波のごとし

このところプライベート・クレジット・ファンドの解約請求が急増しているが、これはセミリキッド・ファンドの運用会社にとって予期せぬ事態ではなかったはずだ。彼らが目にしている資金流出はミューチュアル・ファンドやETF(上場投資信託)ではお馴染みの、短期投資家の行動パターンだからである。

短期投資家の資金は驚くほど似通った動きをする。個人投資家に販売するならば、セミリキッド・ファンドの運用会社はこれを念頭に置いてファンドの流動性を管理すべきである。個人投資家からの資金流入が増えれば増えるほど、ファンドに解約の波が押し寄せるのは「あり得ること」ではなく「時間の問題」になる。

ここで重要なのは、投資戦略の期待収益や想定する投資期間について、明確で合理的な目標を投資家が自覚するよう促すことである。運用会社と投資家が運用目標を共有することが、資金流出を抑制し急激な解約を防ぐための鍵なのだ。しかし、資産の成長期待ばかりがふくらむと、こうしたコミュニケーションがなおざりにされてしまう。

資金を集めたファンドには、いつか急激な資金流出がやって来る

ミューチュアル・ファンドやETFはセミリキッド・ファンドとは大きく異なり、最低でも日ごとに解約請求を受け付けている。一方、セミリキッド・ファンドでは通常、四半期に一度しか解約機会はなく、しかも多くの場合発行済み証券の5%しか売却できないなど解約制限が定められている。

このような流動性の制限は、大規模な解約が発生した場合に流動性のない資産が投げ売りされるのを防ぐために設けられたものだ。従来の(機関投資家や超富裕層向けの)プライベート・ファンドでは定期的な流動性を一切提供してこなかった運用会社としては、四半期ごとの5%の解約は、個人投資家に譲歩した寛大な水準であり、めったに起こらないはずのことだと思っているかもしれない。

これまでプライベート・クレジットやプライベート・エクイティ運用会社の主な顧客であった機関投資家ならば、その通りであったのだろう。しかし、今彼らが相手にしている個人投資家は全く別の動きをする集団なのだ。

彼らの資金の動きとは、以下のようなものだ。アクティブ運用型のミューチュアル・ファンドとETFのほぼすべてに近い約94%が、運用期間のどこかの時点で四半期ベースで5%の資金流出となっている。それどころか、そのような流出があったファンドの平均をみると、四半期ベースで5%以上の純流出が、運用期間の20%近くで発生しているのである。こうした解約が決して「稀な現象」ではないことは明らかであろう。

アクティブ運用においては、急激な資金流出は珍しいことではない

ファンドやETFでは四半期ごとに5%、年間で20%の解約がしばしば発生している

セミリキッド・ファンドにとっても、ある四半期に5%の解約が発生すること自体はそれほど大きな問題ではないかもしれない。しかし、高水準の解約が続けばファンドにとって相当な負担となる。そのため、より適切な比較として、ミューチュアル・ファンドやETFにおいて、1年分の解約率20%(5%の解約×4四半期分)という現象がどのくらいの頻度で発生するか見てみよう。

論理的な出発点としては、ミューチュアル・ファンドやETFで四半期で5%の資金流出がどのくらいの頻度で発生しているかと考えるであろうが、実はそれでは投資家の動きを捉えきれない。ミューチュアル・ファンドやETFの投資家は撤退を決めると、四半期ごとに計画的な解約を行うわけではなく、一気に資金を引き揚げる傾向があるからだ。そこで、より適切なストレステストとして、1年のどこかの時点で解約率が20%以上となるファンドの割合を、「急激な解約」の割合と定義して検証する。

セミリキッド・ファンドはすべてアクティブ運用型であることから、アクティブ運用型のミューチュアル・ファンドとETFを対象として検証した。すると、その大半に「急激な解約」が生じていた運用実績が5年以上ある全ファンドの約80%に、運用期間中に少なくとも1回は1年で20%以上の解約が発生している。しかも、それは単発的な現象ではなかった。少なくとも1回は「急激な解約」が発生したファンドを平均すると、運用期間中の全四半期のうち18%で「急激な解約」が発生していたのである。

タイミング投資の多い資産は「急激な解約」が多い

投資対象によるカテゴリごとに見ると、さらに懸念が増す。セミリキッド・ファンドによく似た投資対象のカテゴリで、「急激な解約率」が最も高くなっているのである。

プライベート・アセット戦略は、一般に投資家のオルタナティブ資産の一部として分類される。モーニングスターの「オルタナティブ」カテゴリに属するファンドは、概して「急激な解約率」が最も高く、オルタナティブ・ファンド全体の90%で、少なくとも1回は1年で20%以上の資金純流出が起きていた。さらに、一般的なオルタナティブ・ファンドは、24%の四半期が「急激な解約」に見舞われていたのである。

オルタナティブに分類される運用商品は、投資家が戦術的(つまりタイミングを図る)資産配分のために活用されることが多い。しかし、セミリキッド・ファンドは、絶対にそのような目的で使うべきではなく、もしそんな使い方をすれば、やがて問題を抱え込むことになる。

オルタナティブ・ファンドでは、「急激な解約」が増加傾向にある

投資家がセミリキッド・ファンドを短期の投資対象と考えるなら、集中的な解約が相次ぐことになるだろう

オルタナティブ以外についても詳しく見ていくと、最も頻繁に「急激な解約」が発生するカテゴリは、ここでも典型的なセミリキッド・ファンドの戦略に近いものが多いことがわかる。

例えば、バンクローン・ファンドの97%で少なくとも1回の「急激な解約」が見られ、それらを平均的すると四半期の23%で「急激な解約」が発生していた。バンクローンとプライベート・クレジットは、いずれも変動金利ローンのエクスポージャーを提供しており、より積極的な利回りを求める投資家にアピールする投資対象である。同様に、プライベート・エクイティは小型株投資と類似点が多いと考えられるが、小型株ファンドは通常、大型株ファンドよりも「急激な解約」が発生する傾向がある。

以下は少なくとも1回の四半期で「急激な解約」があったファンドの割合が多いカテゴリの一覧である。

オレンジはバンクローンおよび米国小型株のグロース/バリュー/ブレンド戦略、青は様々な債券やセクター株式、投資戦略のカテゴリである。

「急激な解約率」が最も高いモーニングスターのカテゴリ一覧

セミリキッド戦略に最も類似した上場資産カテゴリは、「急激な解約率」が最も高いものの一部となっている

積立投資の多い資産は「急激な解約」が少ない

では、「急激な解約」が最も少ないカテゴリにはどんなものがあるだろう。検証してみると、ターゲット・デート・ファンド(TDF)だった。多くの投資家が401(k)プランを通じてTDFを保有している。毎月積み立てるというDCプラン(確定拠出年金)の性質上、継続的な資金流入があり、資金流出は比較的少ない。プライベート・エクイティやプライベート・クレジットの運用会社が、DCプランに参入しようと躍起になる理由がお分かりいただけるだろう。

しかもTDFからの資金流出額は、退職金プランのスポンサーがミューチュアル・ファンド版から集団投資スキーム(CIT)へ移行しているため、実際よりも大きな数字になる傾向がある。TDFの「急激な解約」は、実際にはこれよりもかなり低い水準にあると考えられる。例えば、2025年には、TDFのミューチュアル・ファンドとETFで合計370億ドルの純流出が見られたが、モーニングスターの調査によると、ミューチュアル・ファンドからCITへの移行額は540億ドルもあったことが判明している。

「急激な解約率」が最も低いモーニングスターのカテゴリ

通常、退職口座に関連付けられるアロケーション・ファンドや、税制優遇措置のある地方債ファンドでは、資金流出が最も少ない傾向がある

大きな波がやってくる

セミリキッド・ファンド、特にプライベート・クレジット・ファンドは、近年、巨額の資金流入を記録していた。「Blackstone Private Credit」、「Cliffwater Corporate Lending」、「Blue Owl Credit Income」といったファンドでは、過去5年間だけで運用資産額が2,000%以上も急増した。これらのファンドが、急激に資金を集めたミューチュアル・ファンドやETFによくある典型的なパターンをたどるとすれば、今後数年間で解約請求が急増するはずだ。

運用資産1億ドル以上のアクティブ運用のミューチュアル・ファンドとETFのうち、5年間で1,000%以上の資金純増となったものをみると、約70%がその後の5年間で純流出を記録し、そのうち約40%は運用資産が 半分以下に激減している。

以下のグラフは5年で1,000%以上の純流入があったファンドのうち、その後の5年間でどのくらい純資産額が増減したかを示している。縦軸は全体に占めるファンド数の率、横軸は純資産の増減率を表す。(※100%を超えて減少したファンドがあるのは、運用期間中の運用益による純資産拡大を含んでいるためである)。

資金流入の多かったファンドやETFは、その後5年間で通常、急激な流出に見舞われる

セミリキッド型の構造は短期的な流出を抑えられるが、長期的な傾向を食い止めることは困難だろう

セミリキッド・ファンドの解約制限は、短期的な資金流出をある程度抑制できるが、5年以上の期間で見れば、目先の収益や話題性のある投資を追い求める熱しやすい投資家の資金が、次の注目ファンドへと雪崩を打って出ていくのを食い止めることは難しいだろう。

プライベート市場は、長期的に投資を続けられる資金と、明確に長期的な投資目的を持つ投資家を前提としており、腰の軽い短期投資家を想定して設計されていない。

顧客との目的共有が急激な流出を抑制する

「急激な解約」を最小限に抑える最善の方法は、顧客が適切な期待値を持つようにし、運用成績の変動や悪いニュースに一喜一憂しないように促すことである。責任ある資産運用会社は、アドバイザーやRIA(登録投資顧問)と長期的な関係を築くために多大な時間と予算を注いでいる。なぜなら彼らを通じた顧客への情報提供を重視しているからで、十分な情報を得てファンドに共感している顧客は、簡単に他の運用商品に乗り換えたりしないからだ。

モーニングスターによる運用会社評価である「パートナー・レーティング」で「高い(Highi)」評価を得ている運用会社の中には、「急激な解約」の頻度が最も低い水準の会社がある。こうした運用会社は、ほとんどの場合、同業他社に比べて投資資金をかき集めることを最優先とは考えていない。

主要な運用会社をみると、「急激な解約」の頻度に大きな差が見られる

顧客が運用会社に愛着を持ち、定着率が高い顧客基盤を持つ運用会社は、急激な資金流出が少ない

例えばCapital Groupでは、運用期間中に1年間で20%以上の解約が少なくとも1回発生したファンドはわずか28%にとどまっていた。これは業界平均である78%のほぼ3分の1の水準である。Capital Groupは、アドバイザーに対して運用商品を提供するだけでなく、ビジネスの運営や成長を支援するサービスを提供しているため、彼らの厚い信頼を勝ち取っているのである。

同様に、Dimensional Fund Advisors(DFA)はかつて、アドバイザーが同社のファンドを取り扱う場合、それに先立って同社の教育プログラムに自費で参加することを条件としていた。DFAは、彼らの顧客がDimensionalの運用戦略や、ファンドのパフォーマンスの特性、そしてなぜ長期で投資し続けることが誰にとっても有効な手段なのかについて、理解を深めることを重視している。DFAのファンドの解約率が業界平均を大きく下回っているのは驚くに当たらない。さらに言えば、この数字も過大評価されたものである可能性がある。というのも、DFAでもファンドからETFシェアクラスへの乗り換えが急増しているからだ。

セミリキッド構造は事態を緩和するのか、煽るのか?

セミリキッド・ファンドの投資家は、一般的なミューチュアル・ファンドやETFの投資家よりも長期の時間軸で投資していると考えられがちである。しかし、最近のプライベート・クレジット・ファンドを襲った解約ラッシュによって、どうやらそうではなかったことが露呈した。さらに大きな問題は、機関投資家を含む多数の投資家が解約請求をした場合に直面する「按分払い」、つまり希望する満額の解約ができない状況が起きたときに、個人投資家がどう反応するかである。

四半期ごとに解約請求を受けるというセミリキッド(半流動性)の仕組みは、そのタイムラグによって投資家が頭を冷やすための時間的な余裕を生むため、資金流出圧力を緩和する効果があるかもしれない。

しかし同時に、この仕組みこそが資金流出をさらに悪化させる原因になるかもしれない。

投資家が「解約は按分払いになる」と予想し、「他の投資家も解約請求をするだろう」と考えた場合、できるだけ多くの資産を解約しようと急ぐのは当然であろう。投資家は、按分払いになることを承知の上で、最終的に希望通りの解約金額を得るために解約請求額を水増しして提出する可能性もある。そうなれば、事態は解約をめぐる入札合戦を煽り、最終的には解約の狭き門を余計に狭めて深刻化させるだろう。

結論:按分払いは避けられない

セミリキッド・ファンドの運用会社や投資家は、ミューチュアル・ファンドやETFが経験してきた資金変動のパターンが自分には無縁のものだと錯覚すべきではない。

ETFの台頭は、投資家がより流動性の高い運用商品を求めている証拠である。ところがセミリキッド・ファンドはその流れに逆らって、ETFへの乗り換えで投資家離れが起きているミューチュアル・ファンドよりもさらに流動性が低い仕組みの商品で、個人投資家向け市場に挑んでいる。

投資目的を共有しない短期投資家をセミリキッドという檻に閉じ込めようとすれば(あるいは罠に誘い込もうとすれば)、いずれ出口を求めてパニックが起きる事態は避けられないだろう。◇

※ 本稿はモーニングスターの「Why the Semiliquid Fund Liquidity Crunch Was Inevitable」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針