手数料を払う価値のあるファンドと、そうではないファンドの違いとは

カバードコール型ETFやプライベート・ファンドは、投資家にとって受け入れがたいトレードオフを伴う

ファンドについて言うならば、コストに見合う場合と全く割に合わない場合を見分けるのは、時に難しい。

そもそも、多種多様な形態や資産規模のファンドが何千とあって、選択肢が多すぎる。市場全体を対象とするファンドもあれば、ごく狭い特定の業種やテーマに特化するファンドもある。インカム確保を最優先とする戦略もあれば、トータル・リターンを目指す戦略もある。さらに、市場の動向にかかわらず、特定の期間内に目標リターンの達成を狙う戦略さえある。

多くの場合、ファンド販売の常套句は結局のところ利便性や安心感を強調するものである。多少の追加コストを支払って確実性を得たり、障害を取り除いたり、不安を和らげたりしたいかどうか?という話である。追加コストを払う価値がある場合もあれば、割に合わない場合もある。

本稿では、一定の利便性、自動化(お任せ機能)、あるいは確実性を提供するファンドのために、投資家が追加費用を支払う価値があると考えられる事例をいくつか考察する。一方で、カバードコール型ETFやプライベート・クレジットのクローズドエンド型ファンドなど、そうではない留意すべきケースについても取り上げる。

コストに見合う価値がある場合

  • 追加料金が発生しない場合

これはまぁ、当然のことだろう。提供される利便性に対して追加料金を支払う必要がなく、明らかな欠点や代償(トレードオフ)も無いならば、それに文句を言うのは難しいだろう。

おそらくこの典型的な例は、ターゲット・デート・ファンドで提供される無料のリバランスとグライドパスの調整である(※訳注:日本では信託報酬にその分のコストが内包されているので、信託報酬そのものが高水準でないことを確かめる必要がある)。モーニングスターの「Mind the Gap」調査によれば、こうしたファンドに備わっている自動化、いわばお任せ機能のおかげで投資家は自ら行動する必要が無いため、ほとんどの投資家がこれらのファンドのトータル・リターンの大部分を獲得することに成功している。下の表左端がアロケーションファンドを示しており、トータルリターンと投資家リターンの差(ギャップ)を示す黄色部分がほとんどないことが分かる。

カテゴリグループ別年間投資家リターン差(2024年12月31日終了の10年間)

また、トータル・マーケット戦略も同様の傾向が見られる。ポートフォリオ内で個別の銘柄を選択・維持する必要がない、市場全体に投資を行う戦略である。多数の個別銘柄で投資をしても似たような結果となるはずだが、利便性やコスト面でトータル・マーケット戦略に軍配が上がるという好例である。

もちろん、ターゲット・デート・ファンドが採用するグライドパスが人生の各段階にとって適切かどうか、トータル債券市場ファンドが国債に偏りすぎていないか、といった議論はあるだろう。しかし、それらの議論は本質から少し外れている。自動化や個別ポジションの統合によって、投資家が保有銘柄を自分であれこれする必要がない状態をつくれば、投資家が自分に不利益になる売買を行ってしまう可能性は大いに低くなるのである。

  • 追加コストを払うことで、より大きな費用を回避できる場合

「結果が確定している」金融商品を買う場合を考えてみよう。より多くのコストを支払うか、何かを諦める必要があるはずだ。例えば年金保険の場合、元本の複利効果と引き換えに、保証された一定期間のインカムを得ることになる。理論上は最適とは言えないかもしれないが、研究によれば、これは消費をためらう傾向のある人々が、退職後に財布の紐を緩めて自分のためにお金を使うことを促す効果をもたらす場合もある。

ファンドについて言えば、最も関連性の高い最近の事例は「バッファー上場投資信託(ETF)」である。この種のETFは、コストが高く、不要だと批判の的になる金融工学を用いているため多くの議論を呼んでいる。

しかし、私が行った調査では、市場の不確実性を受け入れられない、あるいは耐えたくない投資家の多くが、この種の金融商品にしがみついて投資をしているし、実際にこれらのETFは概ね意図した通りに機能しているように見える。

バッファーETF:ドル加重リターンと時間加重リターンの年次比較

この機能によって、これらの投資家は理論上の最大リターンを放棄しても、市場の変動に突き動かされて高コストな売買を行わずに済んでいる。差し引きして見れば、まずまずと言えるのかもしれない。

  • 摩擦を取り除き、より幅広い分散を実現する場合

これも議論の余地はあるが、「手間を省く仕組み」には確かに一理ある。

例えば、現在では類似した満期、信用格付け、その他の属性を持つ数十本の債券を束ねているターゲット満期型債券ETFや、満期が段階的に分散された債券を組み合わせて構成するラダー型債券ETFが数多く存在する。これらが高度な商品かと言えば、それほどでもないだろう。しかも追加コストが上乗せされている。それでも、より幅広い分散やその他の目的を、一度に、余計な手間をかけずに達成したい投資家にとっては、たしかに価値がある場合もあるだろう。

反対の状況として、資産を複数の銘柄に分散させるのが面倒なために、特定の証券やセクターに過度に偏ってしまう投資家もいる。ETFが 資産の分散を容易にし、同時にリスク軽減につながるのであれば、利用しない理由はあるだろうか?

それだけの価値がない場合

一方、利便性や確実性のために追加コストを支払うことが、便益に見合わない、あるいは許容できないほどの代償(トレードオフ)を伴うと考えられるケースもある。

  • リターンを前倒しで得るために、自分に不利益になる場合

カバードコール型ETFは、個別株式とオプションを組み合わせて投資し、上昇局面での利益の一部を獲得、下落リスクの一部を軽減、そして売却するオプションのプレミアムからの魅力的な利回りの獲得を狙うものである。投資家がこの種のETFに群がるのは、広範な株式市場や債券市場との連動性が比較的低く、豊富なインカムを生むと考えられているためである。

手元にある鳥(確実なインカム)は確かに魅力的かもしれないが、主要なカバードコール型ETFは、単純な株式3分の2・現金3分の1を組み合わせたポートフォリオを上回ることに苦労している。以下は、純資産残高トップ10のカバードコール型ETF(青)と仮想ポートフォリオ(赤、株式2/3、現金1/3を保有)の過去1年、3年、5年、10年のシャープレシオ(縦軸)を比較したものである。

過去実績に基づくシャープレシオ:カバード・コール戦略を採用する上位10銘柄のカバードコール型ETFと、仮定の2/3株式・1/3現金ポートフォリオとの比較

(※ 純資産残高トップ10のカバードコールETFには以下が含まれる:Global X S&P 500 Covered Call、Global X Nasdaq 100 Covered Call、Amplify CWP Enhanced Dividend Income、Dividend Aristocrats Target Income、JPMorgan Equity Premium Income、JPMorgan Nasdaq Equity Premium Income、Neos S&P 500 High Income、Goldman Sachs S&P 500 Premium Income、Goldman Sachs Nasdaq-100 Premium Income、Neos Nasdaq 100 High Income)

要するに、これらのカバードコールETFは、過去のこれらの期間において、株式と現金の組み合わせよりもリターンが低いか、またはよりボラティリティが高かったため、リスク調整後リターンが劣っていたということである。

確かに、定期的に分配金を受け取ることができるのは便利であろう。しかし、トータルリターン戦略──たとえば株式と現金のポートフォリオ──に投資し、同等のインカムを得るために定期的に一部を売却する方法と、本質的な違いはほとんどない。この方法なら、はるかに低コストで、カバードコール戦略と同程度のパフォーマンスを得られ、さらに税効率も高くなるのである。

  • 「見かけ」の安定と引き換えに、流動性を放棄する場合

読者の中には、「プライベート市場投資を民主化する」という規制緩和について聞いたことがある人もいるだろう。プライベート(非上場)投資を推す人々は、これらの戦略がもたらす印象的なリターンと抑制されたボラティリティをしばしば強調する。

しかし、この宣伝文句はある人々には魅力的に響くものの、実際には幻影にすぎない可能性がある。これらの非上場資産は、公開市場の証券より実際にボラティリティが低いわけではないからだ。単に時価評価が行われる頻度が低いため、値動きが安定しているように「見える」だけである。

これを示すため、筆者は、関税引き上げ発表前後の期間(2025年3月1日〜5月31日)について、非上場のプライベート・クレジットのクローズドエンド型全ファンドを対象として日次リターンデータを収集した。このデータを用いて、2025年12月31日までの直近3年間でシャープレシオが2.0以上であった上位ファンド群(青の面グラフ)と、全ファンドの平均日次リターン(赤の折れ線)を算出した。

次に、対象ファンドの平均日次リターンを、Morningstar® LSTA® US Leveraged Loan Index の日次リターン(黄色の折れ線)と比較した。この指数は信用スプレッドや流動性、環境の変化などを反映し、ローンを日次で再評価するため、今回の比較対象として選んだものである。

結果を要約すると、最もリスク当りのリターンが良かったプライベート・クレジットのファンド群(青)では、平均日次リターンのボラティリティは、指数(黄)の半分以下であった。一方、検証対象としたクローズドエンド型ファンド全体の平均(赤)では、ボラティリティはベンチマークより3分の1低かった。

非上場プライベートクレジットクローズドエンドファンドとMorningstar® LSTA® 米国レバレッジド・ローン指数℠の比較:日次リターン

興味深いことに、これらプライベート・クレジット・ファンドの3カ月間の平均複利リターンは、指数より劇的に優れていたわけではない。最もパフォーマンスの高かったファンド群(左)ではわずかに指数を上回ったものの、全体(中央)としては指数(右)を若干下回っていた。

非上場プライベート・クレジット・ファンドとMorningstar® LSTA® 米国レバレッジド・ローン指数℠の比較:2025年3月1日から5月31日までのリターン

言い換えれば、このファンド群がこの不安定な期間に優れたリスク調整後リターンを示したのは、際立ったリターンによるものではなく、顕著なボラティリティの低さが主因だったようだ。それにもかかわらず多くの投資家が、(一見)安定したリターンが与える安心感に対して、高額な代価を支払っているのである。

彼らは不利な取引に巻き込まれるリスクを負っている。これらの戦略にかかる高額なコストに加え、この「見せかけの安定性」を維持する最大のコストは「流動性の欠如」である。一度投資すれば、簡単には換金できない。ただし、これは欠陥ではなくこの種のファンド特有の特性である。もし流動性を持たせれば、運用者は売買や評価が困難な証券を(流出する資金のために)取引しなければならず、彼らが作り出した安定性の幻想が瓦解してしまうからである。◇

●カバードコールETFについての記事はこちら(日本語)

●流動性リスクについての記事はこちら(日本語)

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著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針