モーニングスター・メダリスト・レーティングが、よりシンプルで透明性の高い評価へと刷新されました。改定された評価のメソドロジーは、ファンドやETF(上場投資信託)のほか、半流動性ファンド(セミリキッド・ファンド)などにも適用され、より分かりやすく透明性の高い、将来見通しを勘案した評価を提供します。
レーティングは従来通り「金(Gold)」「銀(Silver)」「銅(Bronze)」(総称してメダリスト)が付与されます。メダリストの評価は、市場サイクル全体を通じてカテゴリ平均を上回るパフォーマンスが期待できるとモーニングスターが予想していることを示すものです。なお、メダリスト以外の評価として、これまで同様に「中位(Neutral)」「下位(Negative)」が付与されます。
このメソドロジーの改定については2025年12月に発表されました。ファンドの運用費用についての評価をより明確に示すとともに、評価体系をより簡素化し、新たな定量評価モデルと、世界の36万以上のファンド(シェアクラス)にレーティングを付与するための一貫した評価基準が導入されます。
これまでと同じように、将来の超過収益を生み出す可能性を評価するため、3つの評価軸(3つのP)、「運用担当者(People)」、「運用プロセス(Process)」「運用会社(Parent)」について、ファンドアナリストまたは定量モデルが評価します。今回の改定では、ファンドアナリスト、または定量モデルのいずれの評価においても、透明性、一貫性、そしてファンド間の比較しやすさを向上させることを目的としています。
新しい「メダリスト・レーティング」の枠組みは、2026年4月23日から順次適用され、5月3日(日)までに全世界のファンドに適用が完了する予定です。適用完了後は、メダリスト・レーティングの算出対象となるすべてのシェアクラスの評価が、新メソドロジーに基づくものとなります。これにより、簡素化された評価体系のもと、モーニングスターが確信が高いと考える投資機会を、より明確に把握できるようになります。
モーニングスター・メダリスト・レーティングとは
「メダリスト・レーティング」は、モーニングスターのアナリスト(アナリストがカバーしていない場合は定量評価モデル(※))によって付与されるレーディングです。レーティングは、そのファンドが同一カテゴリ内の他ファンドを上回るパフォーマンス(超過収益)を生み出すことができるかを判断するために、3つの評価軸(「運用担当者」、「運用プロセス」、「運用会社」)のレーティングに基づき算出されます。
(※ 2026年3月31日時点では、オーストラリアおよびニュージーランド籍のファンドは、定量評価モデルによるメダリスト・レーティングは付与されません。)
「運用担当者」の評価は、ファンドで主に投資判断を行う運用責任者と、アナリストを含むチームのリソースを検証します。「運用プロセス」は、運用戦略の有効性と再現性を評価します。「運用会社」は、運用会社が自社の利益より投資家の利益を優先しているかを分析します。
モーニングスターは、この3つの評価軸レーティングとファンドの運用費用についての評価を総合的に判断し、「金(Gold)」「銀(Silver)」「銅(Bronze)」「中位(Neutral)」「下位(Negative)」の5段階のレーティングを付与します。これにより、同一カテゴリ内で超過収益を生み出す可能性を示します。
新メダリスト・レーティングの分布
今回のメソドロジー改定において、世界各国の多くのファンドに付与されている総合メダリスト・レーティングに変化はありません。変化がある場合でも5段階のレーティングにおいて、1段階の変化にとどまるケースが大半です。全体的には、「金(Gold)」「銀(Silver)」の評価が増加し、「銅(Bronze)」「中位(Neutral)」「下位(Negative)」の評価が減少する見込みです。
以下は、従来のメダリスト・レーティング(青)と改定後のメダリスト・レーティング(赤)の評価割合の分布を示しています(全体を100とする)。
新・旧メダリスト・レーティングの分布
よりシンプルになった評価体系
変更点を詳しく述べる前に、変更されない点をお伝えします。モーニングスターでは引き続き、世界約130名のアナリストが、これまで数十年にわたり用いてきた透明性の高い手法を用い、3,200以上の運用戦略の3つの評価軸について定性評価を行います。アナリストは、明確なルールに従って評価を行い、その評価内容は記録され、他のアナリストによるレビューも受けています。この仕組みにより、どのファンドが質の高い投資を行っているか、そして今後も良好な運用が期待できるかを、一貫した基準で判断できます。
新たなメダリスト・レーティングは、同じカテゴリの他ファンドと比べた時に、どのファンドがカテゴリ平均を上回る可能性が高いかを明確に示し、市場サイクル全体を通じてカテゴリ平均を上回るとモーニングスターが予想するファンドを浮き彫りにします。
「運用担当者」、「運用プロセス」、「運用会社」の3つの評価軸レーティングは、「高 (High)」「平均以上 (Above Average)」「平均 (Average)」「平均以下 (Below Average)」「低 (Low)」の5段階で引き続き表示します。
さらに、ファンド評価をより強固なものとするために、ファンドの運用費用が投資家にとって優位となるか、あるいは逆風となるかを示す「メダリスト・レーティング運用費用スコア」をマイナス2.5からプラス2.5の範囲で表示します。これは、運用費用が 将来のパフォーマンスを予測する上で最も重要な指標 となる傾向があるためです。この運用費用スコアは、運用費用の低いファンドの評価を高め、運用費用の高いファンドの評価を下げる要素となります。
新たな評価手法では、各評価軸にシンプルな比重を設定し、それらを合計することでファンドのメダリスト・レーティングを決定します。アクティブ運用ファンドとパッシブ運用ファンドでは、運用の目的や運用成果の出し方が異なるため、評価軸ごとの比重が変わります。
以下は、アクティブ運用ファンドとパッシブ運用ファンドの、3つの評価軸に対する比重の一覧です。
メダリスト・レーティングの入力比率の新しい簡略化された方式

米国大型グロース株式ファンドのいくつかのシェアクラスについて、評価軸レーティングと運用費用スコアがどのように表されるか、例として以下に示します。
新しいメダリスト・レーティングおよび評価軸ごとのレーティングや費用スコアの表示例
カテゴリ内での相対比較
従来の評価方法では、カテゴリ内の全ファンドがモーニングスターが設定したベンチマーク指数を上回ることを目指しているという前提に基づいていました。新たなメダリスト・レーティングでは、過去にファンドがカテゴリ指数に対してどれだけ超過収益(アルファ)を上げてきたかという点を、レーティング算出の要素から除外します。
アロケーション型ファンド、コア以外の株式ファンド、および債券ファンドのカテゴリにおいて、カテゴリ指数における資産配分、セクター比率などは、そのカテゴリ内での典型的なファンドのものとは大きく異なることがしばしばあります。そのため、カテゴリ指数との比較は、同じカテゴリ内の他ファンドとの比較ほど重要ではありません。したがって、新たな評価方法では、カテゴリ指数ではなく、同じカテゴリ内のファンド平均と比較してメダリストを評価します。
より透明性の高いデータ項目の設定
2026年3月31日時点で、約17万5,000本のファンドおよびETFのシェアクラスがメダリスト・レーティングを付与されていますが、そのうち約13万本は、少なくとも1つの評価軸レーティングがアナリストによる直接評価されたものではなく、定量評価モデルにより評価されたものとなっています。
従来の定量評価手法では、機械学習モデルを用いてアナリストの定性評価を模倣し、評価軸レーティングを算出していました。このモデルは良好なパフォーマンスが見込まれるファンドを効果的に特定しますが、機械学習モデルの性質上、どのデータ項目がファンドのメダリスト・レーティングに影響を与えたかを特定することが難しいものでした。
改定された定量評価モデルによる評価軸レーティングの算出では、より明確で透明性の高いデータ項目を用います。これらは、モーニングスターのアナリストが各評価軸をどのように評価するかをふまえた、シンプルなデータ項目です。例えば、「運用担当者」の評価軸においては、アナリストはファンドマネジャーの経験に着目します。今回、新たなデータ項目「ファンドマネジャー成功経験値」がモデルに追加され、キャリアを通じて優れた運用実績を積み重ねてきた運用担当者が運用するファンドか否かを測定します。これが運用担当者の評価軸レーティングの土台となります。日本でも、ファンドマネジャー情報の開示が進むことにより、この評価項目がより精緻なものとなり、投資家により有益な情報がもたらされることが期待されます。
アクティブ運用ファンドの「運用プロセス」評価において、定量評価モデルではインフォメーション・レシオ、すなわちベンチマークに対する超過リターンをトラッキングエラーで割った値を用います。さらに、「運用プロセス」評価には、スタイル・ドリフト(投資スタイル特性の変遷)やボラティリティ(価格変動性)を測定するデータに加え、運用会社レベルで同一資産クラス内で過去においてアウトパフォーマンスを達成した実績も含まれます。
定量評価モデルによる「運用会社」評価は、運用会社の全ファンドについて、運用費用、各ファンドのファンドマネジャーの担当期間、定着率、運用実績、ならびに存続率と償還率を考慮します。
パッシブ運用ファンドの場合、メダリスト・レーティングを決定する上で、「運用プロセス」評価が最も重要な要素となります。定量評価モデルにより「運用プロセス」評価を求める際には、カテゴリ内におけるパッシブ運用のアクティブ運用に対する優位性、カテゴリ指数に対する超過リターンの変動性(トラッキングエラー)、保有上位銘柄への集中リスクなどが重点的に分析されます。
このように定量評価モデルによる算出方法を明確にすることで、ファンドのメダリスト・レーティング算出に際し、どのデータがどのように寄与したかをより容易に特定できるようになります。データ表示やレポートにおいては、定量評価モデルによる評価軸に上付き文字のQ(Quantitativeの頭文字)を付記する方式を継続します。
定量評価モデルによる評価軸レーティングに基づいた評価を行うファンドについては、当該ファンドが、その評価軸レーティング算出に必要なデータの少なくとも半分を支えるのに十分なデータを有していることを要件としています。ファンドが50%のデータ算出率を満たさない場合、メダリスト・レーティングは付与されません。この新たな要件により、新規ファンドや、情報開示が十分でない市場については、完全な定量的メダリスト・レーティングの対象となるファンド数は少なくなります。 例えば、日本ではファンドがポートフォリオの運用責任者名を開示する義務がないため、多くのファンドが、「ファンドマネージャーの実績」など、定量評価の算出元となる「運用担当者」に関する計算の対象外となっています。
固定された評価基準に基づくレーティング付与
従来の手法では、メダリスト・レーティングを決定する際に、一定の分布に従う形で評価を割り振っていました。この方法では、各カテゴリにおける「金(Gold)」「銀(Silver)」「銅(Bronze)」の評価を得るファンド数が制限されていました。今回、分布による手法を廃止し評価閾値を導入します。新しい手法では、定量評価モデルによる評価軸で用いられる長期的なデータの性質なども含め、より安定したレーティングが実現されることが見込まれます。
投資家の皆様はご自身のファンドのメダリスト・レーティングを注視し、レーティングが変わると、なぜ変わったのか疑問に思われることでしょう。今回の変更により分布手法を廃止することで、他のファンドの状況によって自分のファンドのレーティングが変動することがなくなり、レーティングの安定性が向上します。
新メソドロジーの導入
2026年4月23日から順次適用を開始しています。すべてのファンドに新しい固定基準のスコアを一斉に適用することで、ファンド間の比較が容易になります。新メソドロジーの適用により、従来と比較して、「銅(Bronze)」「中位(Neutral)」「下位(Negative)」の評価が減少し、「金(Gold)」「銀(Silver)」の評価が増加しました。
ただし、「金(Gold)」「銀(Silver)」「銅(Bronze)」の評価を得ることが容易になったわけではありません。新メソドロジーのもとでレーティングを算出しても、「中位(Neutral)」よりも上の評価を得るファンドは、約3分の1のとどまります。◇
※ 本稿はモーニングスターの「What’s Changing (and Not Changing) With the Morningstar Medalist Rating?」 をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

