バンガードの手数料引き下げは、米国の資産運用会社にとって、関税以上に大きな問題

バンガードの最新の動きは、他の資産運用会社に一層の手数料引き下げ圧力をかけるだろう

2019年12月6日(金)、米国カリフォルニア州サンフランシスコにあるブラックロックのロゴ。
Yichuan Cao/Sipa USA 通じて AP

カナダ・メキシコ・中国からの輸入に対して米国が関税率を引き上げるという脅威が、株式市場を動揺させています。しかし、モーニングスターが調査対象とする米国を拠点とする資産運用会社が影響を受けるニュースは、他にもあります。

総額9兆2000億ドルの運用資産(24年末時点。ミューチュアル・ファンド、ETF、マネー・マーケット・ファンドの合計)を誇るバンガード社が、商品の約4分の1にあたるファンドの運用手数料を引き下げたことは、他の運用会社にとって関税問題の他に更に厄介なニュースが追加されたということです。

モーニングスターが調査対象とする伝統的な資産運用会社は、預かり資産の自律的な成長(投資資金の増加)よりも市場リターンに依存して運用資産を伸ばしてきました。そのため、関税の賦課(市場リターンと短期金利の両方に影響を与える可能性が高い)は、近い将来、彼らの運用資産の総額に影響を与えるはずです。

現在の運用資産の状況は、5年後、10年後の姿に大きな影響を与えるため、いかなる市場の下落も、私たちの適正価値推計値に何らかの下押し圧力を与えます。

とは言え我々は、伝統的資産運用会社の将来の運用資産額の水準を予測する際に、数多くのカテゴリーについて少数の観測筋による10年先の将来予測に注目する傾向があります。そのため、短期的な下落は将来のどこかでいずれ回復する可能性が高いと言えます(10年間の資産クラスについての我々の推計リターンは変化しないと仮定します)。

これは、モーニングスターの適正価値推計値は、短期的な市場の変動による影響は限定的であり、一般的には市場トレンドに従うということを意味します。

手数料の圧縮は運用会社にとって常に頭の痛い課題

バンガードによる手数料引き下げの決定は、別の問題も提起します。過去約10年にわたって伝統的資産運用会社が晒されてきた手数料引き下げの潮流が、これからも継続する可能性が高くなるからです。

バンガードの手数料引き下げ幅の中央値はわずか1ベーシス・ポイント程度ですが、同社は87ファンドの総経費率を1~6ベーシス・ポイント引き下げています。これは我々が調査対象としている資産運用会社にとって、引き下げに追随するようプレッシャーがかかるということです。

手数料引き下げは、我々が調査対象とする9つの伝統的資産運用会社にとって、長期にわたって抱えている課題です。

今回の手数料引き下げは、過去10年間に業界の他社が行ったほど劇的に運用報酬が減少するわけではありません。資産加重経費率は業界全体の平均でみると、低下のペースは以前より緩やかになり始めています。一方、モーニングスターが調査対象としている運用会社の総経費率は、過去数年間とほぼ同じペースで低下し続けています。

調査対象としている資産運用会社は、歴史的に、アクティブ・ファンドでも業界平均的を下回る手数料の価格設定を行ってきたため、手数料引き下げ圧力は同業他社より低いようです。

しかし、過去1年間では、この数字はいくらか変化しているように見えます。なぜなら、調査対象とする資産運用会社の方が、業界全体よりも、実施された手数料引き下げ率が大きかったからです。

インベスコ(IVZ)、フェデレーテッド・エルメス(FHI)、アフィリエイト・マネジャーズ・グループ(AMG)はいずれも、過去数四半期の間に業界平均やアクティブ運用ファンド全体を上回るベースで運用手数料が低下しています。

フランクリン・リソーシズ(BEN)は、ウェスタン・アセット・マネジメントが出した損失を中期的に取り戻そうとしているために、同様の引き下げ戦略をとる可能性が高いでしょう。◇

<米国資産運用会社の概要>

運用会社名
ティッカー
適正価値推計値
株式レーティング
エコノミック・モート・レーティング
適正価値の不確実性
アフィリエイテッド・ マネジャーズ・グループAMG$195★★★なし高い
ブラックロックBLK$1,100★★★広い高い
フェデレーテッド・ エルメスFHI$42★★★なし高い
フランクリン・ テンプルトンBEN$22★★★なし高い
インベスコINV$19★★★なし高い

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針