出口が混みすぎて解約できない!:セミリキッド・ファンド(半流動性ファンド)の落とし穴

「Blackstone Private Real Estate Income Trust 」の流動性危機が教えてくれたこと

Collage illustration with the text "投資信託" at the center and a calculator and graphical elements in the background.

<重要なポイント>

  • 非公開市場の資産(プライベート・アセットなど)に投資をするために、半流動性ファンドに投資資金が流入している。しかし、投資家はこうした投資商品は流動性が低いことを意識して、投資計画を立てる必要がある。
  • 半流動性ファンドでは、必ずしも運用成績が悪くなくても、多数の投資家が解約に殺到することがある。
  • 半流動性ファンドの出口(解約請求)に投資家が殺到すれば、完全に資金化されるまでに1年、あるいはそれ以上の時間がかかる可能性もある。
  • 投資家は、「もしも」という仮定ではなく、「いつかそうした事態が起きたら」という心構えで、流動性リスクを投資計画に織り込んでおかなければならない。

投資家は、プライベート・クレジット、プライベート・エクイティ、プライベート不動産など、かつては手が届かなかった非公開市場の資産クラスに投資をするために、先を争ってセミリキッド・ファンドに殺到している。モーニングスターの「セミリキッド・ファンドの現状2025」によると、ほとんどの投資家が利用できるセミリキッド・ファンドの純資産総額は、2022年末の2150億ドルから2024年には3440億ドルに増加している。

セミリキッド・ファンドには、インターバル・ファンド、テンダーオファー・ファンド、非上場事業開発会社(BDC)、非上場不動産投資信託など、さまざまな仕組みがある。これらのファンドは、ファイナンシャル・アドバイザーがいれば一般的に容易に購入できるが、投資家の解約額に制限が設けられている。ほとんどのファンドは四半期ごとにファンド純資産の5%まで解約を認めているものの、運用会社が独自に具体的な限度額やタイミングを規定できるので、ファンドによって条件は様々だ。こうした制限は、資産運用会社が流動性の低い資産を不利な時期や価格で売却せざるを得なくなる事態を防ぐことを目的としている。その結果、投資家が資金の一部、あるいは大部分を、長期間手にすることができなくなる可能性もある。

プライベート・クレジット(直接融資)は、セミリキッド・ファンドへの資金流入の大半を占めている。これらの戦略が提供する高い利回りと一見安定したリターンに惹かれる投資家は、ファンドの純資産の5%を上限とする四半期ごとの流動性があれば十分だと思うかもしれないし、実際、もし何事も起きなければそれで十分だと言えなくもない。

しかし、ひとたび投資家の心理が変化すると、解約請求が急増し、投資家は撤退(換金)が困難になる可能性がある。2023年、非上場不動産投資信託(REIT)で2番目に純資産額が大きかったセミリキッド・ファンド「Blackstone Real Estate Income Trust」(BREIT)の事例が示すように、こうした状況では、運用会社がすべての解約に応じるまでに数四半期かかる可能性がある。この非上場REITは、投資家に代わって集合住宅、データセンター、倉庫などの産業用不動産等不動産を所有し、その運用管理を行っていた。

本稿では、BREITの経験から得た教訓を考察する。

教訓1:パフォーマンスの低迷が報じられなくても、流動性枯渇リスクがある

ミューチュアル・ファンドや上場投資信託では、パフォーマンスの悪化に伴って投資家の資金が流出する傾向があるが、純資産価格の変動が少ないセミリキッド・ファンドは必ずしもそうではない。セミリキッド・ファンドの評価額は変動が緩やかなため、投資家は運用実績に先行して純資産の価値が高いうちに投資資金を引き揚げる可能性がある。

下図は、BREIT と上場 REIT の時価総額加重ポートフォリオを保有するインデックス ETF 「Vanguard Real Estate ETF」VNQ に、2017 年 1 月にそれぞれ 1 万ドル投資した場合の、2025 年 5 月までの投資成果である。この期間にBREITへの投資は2万1000ドル以上となった。「Vanguard Real Estate ETF」への投資より約6000ドル多く、その間の下落も小さく、その頻度も少なかった。

BREITとバンガード不動産ETFで1万ドルのグロース

2022年、米国連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げは、不動産市場、特に上場不動産投資信託に大きな波乱をもたらした。例えば「Vanguard Real Estate ETF」は1年間で26%下落した。一方、公開市場での取引で価格が決まるのではない非上場BREITは、決算報告ベースで8.4%のプラスリターンを達成した。そのリターンの大部分は1株当たり純資産価値の上昇ではなく分配金によるものだ。また、1年間で損失を計上したのは11月の0.84%の下落のみだった。

このような好調なパフォーマンスにもかかわらず、投資家が不動産市場全体の見通しに懸念を持ったため、セミリキッド・ファンドに対する解約請求が増加した。BREITは毎月、純資産総額の最大2%まで(四半期あたり5%以内)の解約を認めているが、2022年第4四半期から投資家の解約請求が急増した。

レッスン2:出口までの道は遠いかもしれない

次の図表は、2022 年 10 月以降、毎月の解約額(青:運用会社による買取額)と、超過解約請求額(赤:解約請求に応じられなかった額)を示している。2022 年 11 月から 2023 年 12 月にかけてBREIT は、ファンド保有者の一部が実際に受け取った額を上回って、非常に多くの解約請求を受けていたことが分かる。

BREITは、何も間違ったことをしたわけではない。目論見書に記載された通り、毎月資産の最大2%まで、四半期ごとに5%を上限として解約請求に応じて買い取るという義務を常に果たしていた。しかし、それは当時投資からの撤退を希望していた人々にとっては、慰めにはならなかったかもしれない。

Blackstone Real Estate Income Trust の流動性危機

償還請求は14か月連続で四半期ごとの制限を上回り、しばしば上限を大幅に超えていた。解約請求額が5%の上限を超えた場合、比例配分方式で処理され、例えば、解約請求額がファンドの10%に相当する場合(上限は5%なので)、各投資家は請求額の半分しか受け取ることができないことになる。実現されなかった解約請求は、翌月に再提出しなければならなない--何度も列に並び直さなければならないことは、その可能性に対して十分な心構えができていなかった投資家にとって、負担の大きい経験となっただろう。

一方運用会社は大きな損失を被ることなく、過大な解約請求に迫られた時期をうまく乗り切った。しかし、2023年以降、BREITの運用実績は「Vanguard Real Estate ETF」に代表される公募REITを下回っている。BREITの流動性は、2023年1月にカリフォルニア大学の年金基金から45億ドルの投資を受けたことに支えられている。この資金を、解約を管理するために充てれば、大規模な資産売却の必要性を減らすために活かせるかもしれない。そうは言っても、投資家はすべてのセミリキッド・ファンドがこのような機関投資家との関係から支援を受けられると考えるべきではない。

レッスン3:流動性リスクを取る自覚と資産の分散

「セミ(半)」という言葉に惑わされてはいけない。セミリキッド・ファンドへの投資は、「流動性リスク」に完全に手を出しているということだ。BREITの流動性の危機が示したように、投資家は長期的な視野を持つだけでなく、ポートフォリオの流動性をどの程度犠牲にしても構わないかを考えなければならない。パニック時に資金化を求めて解約が殺到すれば、投資家は窮地に陥る可能性があるからだ。

セミリキッド・ファンドが解約制限を設けているのには明確な理由がある。ファンドの裏付けとなる投資対象資産が、必ずしも容易に売買できるものではないからだ。(上場された株式や債券、REITに投資を行う)ミューチュアル・ファンドやETFとは異なり、セミリキッド・ファンドは通常、数年単位の出口戦略を持つ非上場・私募の資産によって組成されている。大型株式でも長期的な投資期間が必要(本当に必要!)だが、プライベート・アセットはさらに長い忍耐を要する投資なのだ。

投資対象とする資産の流動性が低く、解約(換金)条件が限られているため、投資家はこうした資産以外に別途流動性の供給源を確保する必要がある。多くのセミリキッド・ファンドは解約請求に応じることができるが、最も必要な時に解約が保証されているわけではない。

だからこそ、セミリキッド・ファンドへの投資において最も重要な考慮すべき事項は、ポートフォリオ全体で見た流動性が実際の自分のニーズに合っているかどうかということだ。この点で自分が必要とする流動性と合致していないと、望ましくないタイミングで他の資産を売却せざるを得なくなったり、予期せぬ事態に対応できなくなったりする可能性がある。セミリキッド・ファンドに投資する場合には、ポートフォリオ内で適切なバランスを保つことが、長期的な成功の鍵となる。◇

※ 本稿はモーニングスターによる「Slow Way Out: When Semiliquid Fund Exits Get Too Crowded」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は原文が優先されます。

※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資商品、投資手法はどを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目標、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針