セミリキッド・ファンド:急成長と直面する課題。そしてアジアの動向。

運用資産は6,000億ドル規模に拡大。一貫した情報開示など透明性向上が、信頼性醸成の鍵。

セミリキッド・ファンド(流動性が限定されるファンド)の急速な台頭は、大きな関心を集める一方で、厳しい眼も注がれている。セミリキッド・ファンドに対する懸念の多くは、その急激な拡大を反映しており(図表1)、特に、従来の投資信託が備えている日々の流動性に慣れ親しんだ個人投資家の間で顕著である。もっとも、それは構造そのものに致命的欠陥があるというより、十分な理解が進んでいない比較的新しい商品であるという側面が強いと言える。

図表1:半流動性ファンドの資産残高は、2022年末以降、2倍以上に増加しています

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Source: Morningstar Direct, PitchBook, SEC filings. Data as of March 31, 2026.

同時に、言うまでも無くある程度の精査が行われることは予期されるし、それが適切でもある。セミリキッド・ファンドは、本質的に流動性の低い資産への投資機会を提供しつつ、定期的な流動性も確保するという、難しいバランスの上に成り立っている。モーニングスターのレポート『セミリキッド・ファンドの構造を解き明かす ― アジア太平洋地域の視点』で概説しているが、「無料の昼食は無い」のである。流動性と収益を天秤にかけてバランスを取ることは、言うは易く行うは難しで、こうした構造の多くは、まだ市場サイクルを通じた検証を十分に受けていない。

セミリキッド・ファンドをめぐる主な懸念点

まず、投資家の理解度と期待の問題がある。セミリキッド・ファンドへの投資に伴うリスクの多くは目新しいものではないが、個人投資家にとっては馴染みの薄いものである。そのため、ファンドの実際の動きが投資家の期待通りではないという事態が生じる。中心的な課題のひとつが流動性のミスマッチである。容易に売却できない資産に投資しつつ、同時に解約(換金)の仕組みを設けているからだ。この問題は、市場環境が悪化した時に、解約制限(ゲーティング)や解約枠(額)の制限が適用されることで、より顕著に表面化する。

次に、手数料も注目すべき問題である。この種のファンドは、高額で複雑な手数料体系になっていることが多く、費用対効果について疑問が投げかけられている。モーニングスターの最近の調査によると、セミリキッド型ファンドの年次報告書における1年あたりの純経費率(借入コスト調整後)の平均は3%を上回っている。

さらに、透明性も重要な課題である。 評価額はモデルに基づいて算出される場合が多く、更新頻度も低いため、組入資産の価値が把握しにくくなる。また、商品設計は商品ごとに大きく違いがある。たとえば一部の戦略では、流動性の高い資産への配分比率を高めているにもかかわらず、非公開市場並みの(高い)手数料を徴収しており、その結果、期待されるエクスポージャー(市場への投資効果)が実質的に薄くなる可能性がある。

より広い視点では、透明性の欠如は評価額の問題にとどまらない。モーニングスターは以前から、ポートフォリオの保有銘柄、ポートフォリオマネジャーの責任と実績、パフォーマンス目標やベンチマークについて、より明確かつ一貫性のある情報開示を提唱してきた。一定の水準の透明性が確保されなければ、投資家が自身の保有資産や、それらの戦略がどのように運用されているかを正しく評価することは難しいからだ。

香港およびシンガポールにおける規制動向

規制の観点では、香港やシンガポールなどの市場では、個人投資家へのアクセス拡大について、慎重かつ計画的なアプローチをとっている。広く門戸開放するのではなく、ファンドの構造に保護措置を組み込む方針である。償還制限、解約制限(ゲーティング)、事前通知期間を定めた解約申請などの仕組みは、解約対応のために(ファンドが不利な条件で)資産売却を迫られることを防ぎ、投資家を保護するように設計されて、ファンドの流動性を非公開資産特有の流動性に整合させる役割を果たしている。

このアプローチは、個人投資家への提供方法にも反映されている。シンガポールの「長期投資ファンド(LTIF)」の枠組みでは、明確な保護措置を備えた専用の仕組みが導入されている。一方、香港では既存の制度の枠内で、段階的にアクセスを広げている。いずれの地域でも、幅広い参加を認めつつ、明確な安全策(ガードレール)を設けて、市場開放をコントロールすることを目指している。

透明性と情報開示をさらに強化する余地もある。現在、評価手法はまちまちで、手数料体系は複雑なものもあり、商品ごとに情報開示の質にはばらつきがある。今後は、より強力で標準化された情報開示、独立した第三者による評価の活用拡大、より明確なガバナンス体制の構築などを通じて、一貫性を高めることに注力すべきである。

一方で、非公開市場への個人投資家のアクセスを拡大するという大きな潮流は続いている。上場市場と非公開市場の融合は構造的な変化であり、投資家の需要は拡大し続けている。セミリキッド・ファンド市場の運用資産残高は6,000億ドルに迫っており、2022年以降で2倍以上に増加した。これは、セミリキッド・ファンド市場の規模と成長の勢いを如実に示している。

米国で起きている解約制限(ゲーティング)や償還制限に関する最近の報道を受けて、一部の投資家はより慎重な姿勢を見せ始めている。これは市場開放の流れが反転したことを示唆するものではなく、黎明期の熱狂から、この仕組みが実際にどの程度機能するかを、より厳密に検証する段階へと移行したことを示している。

信頼構築には時間が必要だ

これには、投資家教育の充実、透明性の向上、そして市場サイクルを問わず一貫した運用成果が求められる。この種の投資においては、信頼がひと際重要な鍵となる。商品の複雑さ、流動性の低さ、評価頻度の低さなどの特性があるため、広範で持続的な拡大のためには、商品とその運用者の両方が投資家からより強い信頼を獲得する必要があるからだ。

結局のところ、成功は単に投資機会を拡大することだけでなく、信頼を築き、投資家が「自分が何を購入しているのか」を確実に理解できるようにし、投資家の期待に応える成果をもたらすことにかかっている。◇

※ 本稿はモーニングスターの「Semiliquid Funds: Growth, Growing Pains, and What Comes Next」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針