「一喜一憂しない投資家」が増えてきた: 新NISA3年目の現在地

2026年第1四半期の資金フローと投資行動の変化

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2026年に入り新NISAが始まって3年目を迎えました。累計買付額は2027年末には100兆円を突破する見通しとなり、日本の個人投資家の資産形成において、NISAはもはや欠かせない制度として定着しています。

本記事では、モーニングスターが発表した「NISA概況レポート2026年第1四半期」をもとに、最新の買付動向、年初一括買いをめぐる議論、そして2026年第1四半期の投資信託市場の資金フローを解説します。

NISA買付額が過去最高を更新

金融庁の最新データによると、2025年のNISA年間買付額は18兆7,935億円となり、前年比8%増で過去最高を更新しました。2014年からの累計買付額は71兆4,295億円に達しています。年間18兆円の買付ペースが続けば、2027年末には累計100兆円突破が視野に入り、当初政府が掲げていた目標(56兆円)の2倍に迫る水準となります。

2025年の買付動向を前半・後半で見ると、上半期は市場の不確実性を背景に前年同期比4%増にとどまりました。一方、下半期は日経平均株価が5万円を突破するなど株式市場が好調に推移し、前年同期比14%増と大きく伸長しました。

つみたて投資枠が牽引するも、伸びの鈍化に注意

成長投資枠とつみたて投資枠の内訳を見ると、2025年の増加分の大半はつみたて投資枠(前年比26%増)によるものです。ただし、つみたて投資枠の増加ペースは2025年後半に鈍化しており、既存の利用者が継続投資を続ける一方、新規のつみたて投資開始者が徐々に減少している可能性を示唆しています。

2027年開始予定の「こどもNISA」を含め、新たな投資家層にいかにNISAを広げるかが、今後の重要な課題といえるでしょう。

成長投資枠とつみたて投資枠の買付額推移(兆円)

年初一括買いは本当に「正解」か

近年、NISAにおける「年初一括買い」──1月に成長投資枠の非課税枠をまとめて使い切る投資行動──が広がっています。2025年・2026年とも、1月の投資信託への純資金流入額はいずれも2兆円を超えており、この傾向はデータでも明確に確認できます。

一括投資を支持する論拠としては、「期待リターンがプラスである限り、早く投資するほうが理論上有利」「過去のシミュレーションでは一括投資のほうが積立投資を上回ることが多い」などが挙げられます。

しかし、当社の分析では、ある年に投資を行った資金については、投資期間が10年の場合、年初一括投資と年4回分割投資の平均リターンにはほとんど差がないという結果が示されています(米国株式・世界株式・日本株式のいずれでも同様)。さらに、最終結果のブレ幅(最高値と最低値の差)は分割投資のほうが小さく、リスク管理の観点から分割投資の合理性が確認されます。

長期投資を前提とするならば、年初の一括投資にこだわらず、資金を複数回に分けて投資する行動が、リスク管理の観点では望ましいのではないでしょうか。

米国株式
世界株式
日本株式
年初一括年4回分割年初一括年4回分割年初一括年4回分割
投資期間1年
平均13.0%9.1%12.0%8.4%8.3%5.4%
最高61.8%34.3%50.7%29.6%54.6%36.5%
最低-48.9%-39.8%-52.7%-43.1%-41.5%-31.7%
投資期間10年
平均11.0%10.9%9.1%9.0%5.8%5.7%
最高21.2%19.8%17.0%15.8%13.1%12.3%
最低-1.8%-0.7%0.0%1.4%-1.8%-1.6%

出所: Morningstar Direct。投資資金を年初一括、または年4回(1/4/7/10月初)分割投資した場合の、その後1年および10年のリターンの平均、最高、最低。米国株式はMorningstar米国株式指数、グローバル株式はMorningstarグローバル株式指数、日本株式はMorningstar日本株式指数。全て税引前配当込み。2001年から2025年のデータでシミュレーション。運用費用は控除していない。

2026年第1四半期: 史上初の6兆円超え

2026年1〜3月の日本籍公募株式追加型投資信託への純資金流入額は6兆7,089億円となり、四半期ベースで史上初めて6兆円を突破しました(前年同期比約1兆4,000億円増)。1月単月では過去最高となる2兆7,558億円の純流入を記録し、年初一括買いの影響が鮮明です。

なお、注目すべきは3月の動向です。中東情勢の緊張など地政学リスクの高まりで市場が不安定化した局面でも、投資信託市場ではパニック売りに相当する資金流出は観察されませんでした。市場の急変に対して、投資家が中長期的な視点を保ち、比較的冷静に行動していることがうかがえます。

新NISA開始後の各年1-3月の投資信託市場への純資金流出入額(億円)

低コスト・インデックスファンドへの集中が続く

純資金流入上位には、引き続き低コストの株式インデックスファンドが並びました。1位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と2位の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の合計純流入額は約1.8兆円に達し、両ファンドは四半期中に純資産総額が10兆円を突破しました。単独ファンドとして純資産10兆円を超えるのは日本初であり、NISAを軸とした長期積立需要がこれらのファンドの規模を急速に押し上げています。

一方で、資金フローの多様化も見られます。

  • 毎月分配型ファンド:インカム重視の投資家層が依然として存在
  • 金関連ファンド:地政学リスクの高まりと金価格上昇を背景に複数のファンドが上位に
  • アロケーション型ファンド:分散投資を意識した動きが継続

株式型への集中は依然として強いものの、リスク分散を意識した投資行動が着実に広がっています。

テーマ型ファンド:流行の移り変わりに要注意

テーマ関連ファンドでは、構図の変化が明確です。2年前に圧倒的な人気を誇った半導体関連ファンドやインド株ファンドからは資金流出が目立つ一方、AIを支える基盤技術やインフラ関連をテーマとするファンドへの資金流入が確認されました。

このサイクルは、テーマ型ファンドに特有の資金フロー・パターンを改めて浮き彫りにしています。本来は中長期的な成長を見据えて投資する性質のテーマであっても、話題性の変化に即応して資金が短期的に移動する傾向があります。短期的なトレンドに振り回されて「高値掴み」しないよう、テーマ型ファンドへの投資こそ中長期の視点を持った投資行動が求められます。

純資金流入額上位10ファンド

2026年第1四半期

まとめ: 「分散と継続」が資産形成の軸

長期の資産形成においては、投資タイミングを過度に追求する必要はありません。長期投資では一括投資と分割投資の平均リターンに大きな差はなく、むしろ分割投資はリスクを抑える効果があります。また、低コストのインデックス・ファンドを通じた世界株式・米国株式から投資を開始することは理解できますが、過度に集中させることは留意が必要です。自身のリスク許容度に応じてアロケーション型や債券型を組み合わせた分散が、今後の不確実な市場環境においても持続的な資産形成につながります。

市場が揺れる局面でも冷静さを保ち、長期・分散・継続という原則を守ることが、NISAを真に活かす道といえるでしょう。◇

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針