数週間前、私は「勝てるアクティブ・ファンド」を選ぶのは見た目以上に難しく、投資家はそれを誤ると多額の機会損失をこうむる可能性があると論じた。今回は、プライベート・エクイティ・ファンドとベンチャー・キャピタル・ファンドに焦点を当てて、このテーマを再考してみよう。
長期でのリターンの差が比較的小さい投資信託とは異なり、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルのファンドは、運用成果に大きな差が出るものだ。例として、ピッチブックのベンチマーク・データに基づく、25パーセンタイルと75パーセンタイルにおける、様々な種類のファンド間の内部収益率の差を表したものが以下の図表である(棒グラフは青がプライベート・エクイティ、赤がベンチャー・キャピタル、黄色がプライベート不動産、緑がプライベート・デット(債券))を示している。
内部収益率の分散:プライベート・マーケット戦略とベンチャー・キャピタル(25パーセンタイルと75パーセンタイル)
Return Dispersion by Private Market Strategy and Vintage Year
プライベート・デット戦略のスプレッドは縮小しているが、プライベート・エクイティ、ベンチャー・キャピタル、プライベート不動産ファンドの年間内部収益率では、上位ファンドと下位ファンドで10%以上の差があるのがごく普通のことである。
この大きな違いは何によるものなか、また、プライベート市場を投資対象とするファンドに初めて投資することを検討している投資家にとって、どのような意味があるのだろうか。
寿命の差
PEファンドのリターンに大きなばらつきが見られる理由の一つは、PEファンドの寿命が一般的な公募ファンドの寿命よりも長いことである。私募ファンドの寿命はその設計上期限が限られており、オープンエンド型ファンドのは無期限の寿命を持つものが多いのだが、実はオープンエンド型ファンドの中央値をみると、10年に満たない運用期間で終わっている。
PEファンドの寿命が長いことにはいくつかの要因がある。第一に、これらのファンドは投資家から預かった資金を固定化することで、投資信託のような他のファンドが資産を集められなかった場合に直面する可能性のある存続リスク(繰上償還やファンド併合のリスク)を軽減している。第二に、プライベート・エクイティ・ファンドが投資家から託された資本を回収して配分するまでに何年もかかることがあり、さらに、投資したファンドを売却し、その収益を分配してから閉鎖するまでにさらに長い時間がかかることもある。
つまり、不発に終わったプライベート・エクイティ・ファンドは、需要が低迷したり資金流出が相次いだりしても、オープンエンド型ファンドのように数年で消滅することはない。PEは、投資資産を公開市場で売却してファンドを閉鎖(償還)するわけにはいかないからだ。ファンドを閉鎖する前に、保有資産の出口(イグジット)を見つけなければならない。
したがって、パフォーマンスの悪いPEファンドは、消えずに最後まで運用実績のデータに入っている。その結果、公募投資信託のように運用成績の悪いファンドが往々にして消滅してしまう場合に比べて、より長期にわたる幅広い運用成績がデータとして可視化されるのである。
PEファンドのリターンには大きなばらつきがあり、優秀な運用者を選べば大儲けできると期待して興味をそそられる投資家は、その大きな差は運用者の質の違いだけでなく、この種の投資が持つある種の取り返しのつかない性質を反映していることを肝に銘じておくべきだろう。
つまり、一旦ファンドに投資したら、何年にもわたって投資し続けることになる。そのため、潜在的なリターンの高さと引き換えに、その間は少なくともリターンの一部は絵に描いた餅にすぎず、最終的にファンドが保有資産の買い手を見つけるまで完全に実現することは無いと承知の上で、困難な状況でも粘り強く投資に取り組まなければならないのである。
リンゴはリンゴ同士で比べるべき
さらに、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの投資対象はきわめて多様である。従って、こうしたファンドの広範な指数は、異なる投資スタイルが混在しやすく、その違いがリターンがばらつく原因の一つとなっている可能性がある。言ってみればリンゴ同士を比べるべきところで、リンゴとオレンジを一緒にして比較している状態かもしれない。
例えば、ベンチャーキャピタルの発展ステージ(アーリーステージ/レイトステージ)、セクターの専門性(テクノロジー/グロース/ロールアップ)、投資地域(新興国/米国/西欧)など、戦略の焦点を絞った場合、リターンの幅は、広範な分散指標から一見して想像されるよりもはるかに狭いことが分かるかもしれない。
この事実の客観的な傍証として、スタイルを問わず(PEの指数と同様に詳細な分類をせず)、すべての分散投資型の株式投資信託のリターンを単純に比較してみた。その結果、2025年5月31日に終了した10年間で、1年のリターンの分散は約4.3パーセントポイントだった。これは、モーニングスター・カテゴリー内で同種の株式ファンド同士を比較した場合よりもはるかに大きなばらつきである。
プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルのファンドについても、ほぼ間違いなく同じ考え方が当てはまるはずだ。そう考えると、ある運用会社のトップ25%のリターンに驚嘆する投資家は、少なくともそのパフォーマンスの一部が、求められているものと一致するか、あるいは将来優れたパフォーマンスをもたらすような持続性を持つ(と期待できる)特定の属性に起因しているかどうかを、検討するのが得策であろう。
それ以外にも、ファンドマネジャー自身はいくつかの過去の実績があったとしても、新たに募集されるファンドは基本的にすべて白紙の状態であることを念頭に置くことが重要である。これを念頭におけば、過去のリターンの再現性に疑問を持ち、マネージャーの選定において過去の実績に依存しないことの重要性が一層高くなるだろう。
セレブ・オンリー、一般人は立ち入り禁止?
最後に、アクセスのしやすさという問題がある。例えばあなたは、ベンチャー・キャピタル・ファンドの上位25%のリターンを手にしたいと思うかもしれない。しかし、必ずしもそれが手の届くところに在るとは限らない。何故かというと、上位の人気ファンドの中には、申し込みが殺到して募集上限をオーバーしていたり、最低投資額が高額だったりするなど、個人投資家や富裕層には手の届かない条件を設けているものもあるからだ。
特にベンチャー・キャピタルでは、最も成功しているファンド群でパフォーマンスの継続性を示す証拠がいくつかあるが、最高のリターンが得られる領域は一般の投資家は「立入禁止」である。ファンドに潜在する大きな収穫を手にすることができるのは、ごく限られた人々だけだ。
(※編者注 では、普通の人には手の届かない世界かというとそうでもない。ファンド・オブ・ファンズという形で、もっとアクセスしやすく作られたファンドもある。しかし、一般人でもアクセスしやすい代わりに、莫大な成長の可能性を享受できない仕組みである。とはいえ、ヘミングウェイの「持てる者と持たざる者」ほどの格差というわけではないだろう。)
このトレードオフ、つまり誰でもアクセスができる代わりに潜在的な上昇部分(アップサイド)を放棄するという状況を理解するために、以下の図表を参考にしてほしい。プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルのファンド・オブ・ファンズのリターンのばらつきを調べ、それをプライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルのファンド自体のパフォーマンスのばらつきと比較することで、潜在的なアップサイドを諦めてアクセスを得ることの感覚をつかむことができるだろう。
以下は、ピッチブックのデータを使った比較である(青がファンド・オブ・ファンズ、赤がPEやBCに直接投資を行うファンド)。PEやBCに直接投資を行うファンドそのものよりも、ファンド・オブ・ファンズ間のリターン分散の方がはるかに狭いことがわかる。
リターン分散の比較:ファンド・オブ・ファンズとファンド自体の比較
プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの一流ファンドに投資するほど資金が潤沢ではない投資家にとって、ファンド・オブ・ファンズがアクセスを提供することを考えると、これは注目に値する。ファンド・オブ・ファンズは、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの分野に足を踏み入れたばかりの投資家や、最高の運用会社にアクセスするための規模や血統(!)を持たない投資家にとって、潜在的なリターンの幅がどのようなものかをハッキリ示しているからだ。
もっとも、ファンド・オブ・ファンズで、最高のプライベート・エクイティ・ファンドやベンチャー・キャピタル・ファンドのパフォーマンスに匹敵するような優れたリターンを得る可能性や、逆に非常に悪い結果を被る可能性が、ゼロになるというわけではない。とはいえ、ファンド・オブ・ファンズでは通常、複数のファンド(複数の投資戦略)に資産を分散しているため、プライベート・エクイティ・ファンドの中央値に近いリターンを得る可能性が高くなり、「超一流」や「最悪」の結果を引く可能性は低くなる。
今後増えていくか?「エバーグリーン」ファンド
少し関連した話として、インターバル・ファンドやテンダー・オファー・ファンドのような「エバーグリーン」な投資商品が、富裕層投資家にとってプライベート市場にアクセスするための重要な入り口になる可能性がある。このようなファンドはまだサンプル数が非常に小さいが、今後更に多くの投資商品が立ち上げられるにつれて、これらのファンド間のリターンの分散について、より多くのことが分かるようになるだろう。
一方、いくつかの理由から、リターンのスプレッドが狭くなると予想するのが妥当だろう。まず、エバーグリーン型ファンドではトップクラスの運用者や投資案件にアクセスできない可能性があり、また資産を幅広く分散投資するファンド・オブ・ファンズに依存する可能性があるからだ。そのため、リターン分布の裾野が狭まる可能性がある。
加えて、ファンドの資産をヴィンテージや多様な案件に幅広く分散させることで、リターン を平準化し、ファンドの解約(通常、上限まで認められる)に対応するために十分な流動性を確保す ることができるからである。これは、集中投資が少なく、流動性の低い戦略や景気循環型戦略のウェイトが低いことを示唆しており、その結果、上下に並外れたリターンが発生する可能性が低くなるのである。
結論
プライベート・エクイティ・ファンドやベンチャー・キャピタル・ファンドで「当たり」を引けば、アクティブ・ミューチュアル・ファンドで「当たり」を引いた場合よりも大きなリターンが得られる可能性があるかもしれない。しかし、それが一般投資家が新たに投資した場合に、利益につながるかどうかはあまり明らかではない。
最も明確な方法でアプローチするには、プライベート・ファンドへの投資は換金性がきわめて低い可能性が高いということ(そのようなファンドの流通市場やインターバル・ファンドのような半流動性のビークルの台頭にもかかわらず)、それぞれのファンドが採用している運用戦略などによる特性の違いがパフォーマンスを左右する可能性、そしてあなたが実際に投資することができる金融商品で起こりうる結果の幅、などを前提として検討する必要がある。
ピッチブックの ヒラリー・ウィークが 寄稿。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

