リキッド・オルタナティブは、ポートフォリオの分散に役立つ――そう語られることは多い。しかし、すべての戦略が同じように機能するわけではない。近年の市場環境は、その違いをはっきりと浮き彫りにしている。
オルタナティブ戦略は、モーニングスターの『2026年分散投資の展望』における主要なテーマの一つである。このレポートの中で、クリスティン・ベンツ、エイミー・アーノット、ジャック・シャノン、そして筆者は一章を割き、オルタナティブ戦略が株式や債券に対してどのように動いたのか、宣伝文句通りに分散投資の手段としての役割を果たしてきたのかを検証している。
結論を先に挙げると、ファンドなどの形で流動性を加味したオルタナティブ投資である「リキッド・オルタナティブ」戦略は、一様に語れるものではない。ポートフォリオの中で保有して役に立つかどうかは、そのオルタナティブ投資がどのような役割を担うかによって決まるのである。
リキッド・オルタナティブの本質を投資家がより正確に把握する一助として、最近の市場動向から得られる5つのポイントを紹介する。
1:すべての「オルタナティブ投資」が分散に役立つわけではない
「オルタナティブ投資」は幅広い概念である。オルタナティブ戦略すべてが、ポートフォリオに同程度の分散効果を発揮するわけではない。
たとえば、株式ロング・ショート戦略や株式ヘッジ戦略など、オルタナティブの中でも主要な分類に属する戦略の一部は、依然として株式市場と密接に連動するものである。過去3年間で見ると、株式ヘッジ戦略のMorningstar 米国株式指数との相関は約0.98、株式ロング・ショート戦略も約0.95と、非常に高い水準にあった。
つまり、これらの戦略は価格変動を若干緩和する効果はあったものの、株式市場に連動して上下する傾向が顕著だった。これらは本当の分散投資というよりは、実際には株式の値動きを少し抑えたような働きをすると言える。
一方、マーケット・ニュートラル戦略、システマティック・トレンド戦略、そして一部のマクロ戦略などには、まったく異なる特徴がある。これらの戦略は株式との相関がはるかに低く、場合によってはマイナスの相関、つまり株式とは全く関係の無い動きを示すこともあり、ポートフォリオ全体の株式市場への依存度を低減する効果がある。
この違いは、多くの投資家が認識している以上に重要なことだ。ポートフォリオが表面上は異なる資産に分散されているように見えても、実際には株式に大きく支配されている場合があることに、注意しなければならない。
重要なポイント:「オルタナティブ投資」に単に資金を配分するのではなく、それぞれの戦略がどのような役割を果たすのかを理解する必要がある。
2:リターンは重要だが、市況と関連付けて評価する必要がある
株式市場が好調な時には、多くのオルタナティブ投資はパフォーマンスが劣後する。これはオルタナティブ投資の欠陥ではなく、仕組み上意図された動きである。
株式へのエクスポージャーを抑制する戦略や、元本の保全を目的とする戦略は、株価が上昇している局面では追いつくことはできない。それは戦略の失敗ではなく、本来の目的通りにその役割を果たしているだけのことである。
より重視すべきは、それらの戦略が株式や債券と比較してどのような動きを見せたかである。たとえば、株式・マーケット・ニュートラル戦略は過去3年間、株式との相関が約マイナス0.18を維持しており、これはそのリターンが株式市場とはほぼ無関係であったことを意味している。このような動きは、たとえ株式市場が好調なときに絶対リターンが低くても、株式に関わるリスクを相殺する効果がある。
これらの戦略では「トレードオフ」、つまり上昇局面での収益をある程度諦めて、代わりに異なる値動きをする特性が、ポートフォリオの分散効果の根拠となっている。
重要なポイント:オルタナティブ投資をリターンだけで判断すると、真価を見誤ることになる。重要なのは、それらの戦略がポートフォリオ全体にどのような変化をもたらすかである。長期的な視点でリターンへの影響を最小限に抑えながら、下落局面や変動の激しい局面でリスクを低減できるかどうかを、重視すべきである。
3:同分類の平均を見ても全容は分からない
分類ごとの分析結果は、一見すると良好に見える場合もあるが、必ずしも実際に投資した人のリターンを示しているわけではない。
資産規模が小さいファンドや保有者が少ないファンドが「平均リターン」を押し上げる一方で、多数の大規模ファンドのパフォーマンスはさほど大きくないということもある。「平均」と「投資家の実際のリターン」との間にあるこの落差は、見過ごされがちである。
以下の表はオルタナティブ戦略の「分類別平均リターン」と、ファンドの規模を考慮した「資産加重リターン」の比較である。資産加重リターンは、投資家が実際に経験したリターンにより近いものと考えられる。
表は左から、分類名、ファンド数、分類平均リターン、資産加重リターン、キャッシュのリターンを4.3%とした場合のキャッシュ以上のリターンを上げたファンドの率を示している。
2025年のリキッド・オルタナティブ戦略:平均値が隠す、投資家ごとの大きく異なる実態
表を見ると、特にマクロトレーディング戦略のような分類では、ファンドごとにアプローチが異なるため、結果のばらつきが大きいことが分かる。さらに残念なことに、規模の大きなファンドほどパフォーマンスが劣る傾向もうかがえる。
重要なポイント:オルタナティブ投資では、分類名や分類平均だけではなく、運用会社の選定と実際にどのような運用が行われているかを吟味することが、より一層重要である。
4:分散投資の効果は常に得られるわけではない
オルタナティブ戦略の中には、特定の環境下でのみ真価を発揮するものがある。
その代表的な例がトレンドフォロー戦略である。この戦略は2022年のように市場が持続的に明確な方向へ動く際に、最も効果を発揮する。一方で、2025年のように相場が乱高下し、頻繁に反転したり、政策に左右されて市場が不安定な状況では、事情が異なる。ファンドの運用指標となるシグナルが頻繁に変化するため、売買判断としての信頼度(有効性)が低下し、戦略が機能しにくくなるのである。
マクロ戦略も同様の課題を抱えている。この戦略は、金利、通貨、グローバル市場全体に見られる明確なトレンドに依存しているため、それらのトレンドが不安定な場合、ファンドごとの運用成果の差が大きくなることがある。
それは、これらの戦略が効果がないという意味ではない。単に、効果が持続することを目的としていないため、組み込まれた機能が環境によって有効に働く場合とそうでない場合があるというだけのことだ。
重要なポイント:オルタナティブ投資による分散投資の効果は、しばしば断続的なものである。期待したタイミングで期待通りに効果が得られるわけではない。
5:オルタナティブ投資が敗北したのではない――単に目立たなかっただけ
2025年を振り返ると、オルタナティブ投資のパフォーマンスが振るわなかったと結論づけたくなるだろう。しかし、それは主に株式市場が好調だったためである。
2025年は株式へのエクスポージャーが高い戦略が、最も高いリターンを上げ、一方で分散投資や元本保全を目的とした戦略は株式に及ばなかった。表面だけ見れば、これは敗北と映るだろう。しかし、ほとんどの場合リターンの低さは戦略の失敗ではなく、株式へのエクスポージャーの低さが直撃した結果である。
例えば、マーケット・ニュートラル戦略は、2025年には8.0%のリターンを上げながら、株式との相関をマイナス0.18に維持していた。この組み合わせは、好調な株式市場では目立たないであろうが、この戦略が果たすべき役割をきちんと反映している。
市場が忙しく変化する中で、多くのオルタナティブ戦略のファンドは株式との相関関係を維持し、あるいはむしろ低下させてきた。つまり、これらオルタナティブ戦略ファンドは本来の使命を果たし続けており、設計通りに上昇し続ける市場環境では目立った成果を示さなかったのである。
重要なポイント:オルタナティブ投資は、毎年必ず勝つことを目的としていない。それらは、長期的にポートフォリオの耐性や安定性を高めることを目的としているのである。
オルタナティブ戦略について投資家が知っておくべきこと
近年の市場の動きから得られる教訓は、投資家にはもっと多くのオルタナティブ投資が必要だということでもなければ、あらゆる戦略をポートフォリオに組み入れるべきだということでもない。
実際、シンプルな株式と債券の組み合わせが、長きにわたってその威力を示している。これは、ほとんどの投資家にとって、それ以上の投資戦略を検討する必要はないことを示唆している。米国株式、グローバル株式、高格付債券を中核とする分散投資ポートフォリオは、今でも堅固な土台である。何か足すというのなら、人によっては米国物価連動国債(TIPS)によるインフレへの備えも有効な選択肢となるだろう。しかし、それ以上の複雑な投資は、多くの場合、必須ではなくオプションとなる。
だからといって、オルタナティブ投資に役割がないわけではない。しかし、オルタナティブ戦略にはトレードオフが伴うことを肝に銘じておくべきである。
株式への依存度を低減し、効果的な分散投資を可能とする戦略もあれば、株式との連動性を保ちつつ、価格変動の緩和を図る戦略もある。どちらも状況によっては有用であるが、どちらも単純な解決策とは言えない。
多くのリキッド・オルタナティブ戦略は、従来のミューチュアル・ファンドよりも複雑な手法や構造である。オルタナティブ戦略は、たいてい手数料が高く、値動きの特性を理解しにくく、年によってリターンにばらつきがある場合もある。そして時には、オルタナティブ投資による分散効果が、支払うコストに見合わない場合もある。
投資家は、オルタナティブ戦略において慎重な選択眼を持つ必要がある。オルタナティブ投資は、ポートフォリオの中核に据えるものではない(リターンを追求するものでもない)。分散投資やリスク管理、あるいはポートフォリオの特定の要素を補完するための、目的を絞ったツールだと考えることが最適である。
オルタナティブ戦略は、適度な資金量で、明確な目的を持って活用する時に、最も効果を発揮するものである。
※ ウェビナーのお知らせ:私と私の同僚たちは、 2026年5月14日に開催予定 のウェビナーで、これらの調査結果やその他の分散投資戦略について議論する予定です 。
※ 本稿はモーニングスターの「Liquid Alternatives Can Diversify Portfolios—but Not All of Them Do」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

