プライベート市場への投資を主流化しようとするオルタナティブ資産運用会社の動きは勢いを増している。資産規模がそれほど大きくない「非適格者」でも購入できるセミリキッド(半流動性)・ファンドの資産総額は、2025年6月末時点で約4500億ドルに達し、2024年末と比べて16%、2022年末から見ると77%増加している。
セミリキッド・ファンドには、インターバル・ファンド、テンダー・オファー・ファンド、非上場事業開発会社(BDC)、非上場REITなどが含まれる。これらのファンドは通常、四半期ごとに資産の5%~10%程度の範囲で償還を受け付ける仕組みとなっており、この方式を採用することで、運用会社は流動性の低い証券に投資しながら、規定された条件(解約時期、解約請求額など)の範囲内で投資家が持ち分を売却できる仕組みになっている。
こうした流動性が低い証券は、ダイレクト・ローン(直接融資)やプライベート・エクイティのような非公開資産への投資であることが多く、ほとんどの場合、保有資産規模に基づく「適格基準」を満たさない投資家は購入することができない。
中でもクレジット(信用)に特化した戦略が依然として人気が高く、セミリキッド・クレジット・ファンドの資産は2025年6月末時点で2300億ドルに達し、2024年末からわずか半年の間に22%増加している。これらのファンドは、変動金利とレバレッジを組み合わせることで、公開市場の債券よりも高い利回りを実現している。変動金利では短期金利に対するスプレッドに基づいて利払いを行うため、そのインカムは短期金利が高ければ上昇し、金利が低下すれば下落する。
米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げサイクルが一般に予想されており、実際にそうなった場合、変動金利型クレジット・ファンドから得られるインカムは将来減少する可能性が高い。しかし、この資産クラスに対する投資家の投資意欲にかげりは見えない。
以下のグラフは2022年から2025年、各年末の資産残高(2025年は6月末)を示しているが、クレジット(青)の増加が目覚ましいことが分かるだろう。
非上場REITについては、純資産はGAAP(米国会計基準)ではなく、運用会社による公正価値の推計に基づいて算出されるようになった。この変更によって、報告される資産額は以前のレポートと比べて高くなっている。GAAPでは、資産は取得原価に基づき、減価償却が控除されていたが、運用会社の推計の方が高く見積もられているからだ。ただし、カテゴリー全体では横ばいから減少傾向にあるという流れに変化はない。
インカムを求める投資家がセミリキッド・ファンドへと食指を伸ばしている
Investor Demand for Income Drives Semiliquid Fund Asset Growth in 2025
※モーニングスターDirectおよびSECの開示による。データは2025年6月末時点。
プライベート・クレジットの繁栄は続いている
最も人気があり、急成長しているセミリキッド型の投資ビークルは、依然として非上場BDC(事業開発会社)である。これは、ローンを通じてプライベート・クレジットに直接かつ明確に投資できる手段である。BDCとして登録するためには、ファンドのポー トフォリオの70%以上を非上場企業または時価総額2億5000万ドル未満の上場企業への融資に投資する必要があり、REITと同様に課税所得の90% 以上を株主に分配しなければならない。
ただし、これらのファンドはコストが高い傾向があり、多くの場合、1.25%の運用管理費用に加えて、12.5%程度の収益連動型の成功報酬が差し引かれる。非上場BDCの資産は2025年6月末時点で1450億ドルに達し、2024年末から23%増加している。
以下のグラフは、2022年から2025年、各年末の資産残高(2025年は6月末)を示しているが、非上場BDC(青)の資産額が増加していることが分かる。非上場BDCの資産は2025年6月末時点では1450億ドルに達し、2024年末から半年で23%増加した。
2番目に増加率が高かったのは買収戦略を基本とするテンダーオファー・ファンド(黄)で前年末比18%増、資産残高は940億ドルである。次いで、定期的な解約機会を特徴とするインターバル・ファンドが16%増の1180億ドル、非上場REITが4%増の920億ドルだった。
セミリキッド・ファンドの中で非上場BDCが最も人気を集めている
Nontraded Business Development Companies Are the Most Popular Semiliquid Vehicle
※モーニングスターDirectおよびSECの開示による。データは2025年6月末時点。
セミリキッド・クレジット・ファンドの動向
以下の表は、資産規模トップ10のセミリキッド・クレジット・ファンドの純資産、直近の資金流出入、リターンを示している。
資産規模トップ10のセミリキッド・クレジット・ファンド
Top 10 Largest Semiliquid Credit Funds Midyear Scorecard 2025
※モーニングスターDirectおよびSECの開示による。データは2025年6月末時点。純資産と資金流出入は100万ドル単位。非適格者も購入できるインベスター(I)クラスのパフォーマンスを採用している。
Cliffwater Corporate Lending CCLFXは、純流入額で引き続きインターバルファンドをリードしており、2025年上半期の流入額は45億4000万ドルで、Blackstone Private Creditに次ぐ2位だった。非上場のBDCはほとんどが直接ローンを保有しているのに対し、Cliffwaterは保有ファンドとの共同投資を通じて、他のプライベート・クレジット・ファンドと直接ローンの両方に投資を行っている。
上位10ファンドはモーニングスターLTSA米国レバレッジド・ローン指数を上回っているが、アウトパフォームの要因は多くの場合レバレッジによるものである。
PIMCO Flexible Credit Income PFLEXは、モーニングスターのセミリキッド・ファンドに対する最初のレーティングにおいて、モーニングスター・メダリスト・レーティングで「銀(Silver)」を獲得した。これは、当ファンドが市場サイクル全体を通じてモーニングスター・カテゴリー・ベンチマークを上回る可能性が高いことを示している。スターマネジャーであるDan Ivascyn氏とAlfred Murata氏が率いるピムコのトップクラスのチームは、伝統的戦略とリスクの高い戦略の両方にまたがる、実証済みの投資機会への注目を主軸とする相対価値アプローチを採用している。
このファンドは、2025年6月30日時点で、直接融資の割合が6%と比較的少なく、公社債の保有比率が63%と高い点で、トップ10にランクインした他のファンドの戦略の多くとは一線を画している。レバレッジを活用しており、これが同業他社に対する相対リターンの上昇に寄与している。
最大のセミリキッド・エクイティ・ファンドの動向
以下の表は、資産規模トップ10のセミリキッド・エクイティ・ファンドの純資産、直近の資金流出入、リターンを示している。
資産規模トップ10のセミリキッド・エクイティ・ファンド
The 10 Largest Semiliquid Equity Funds Midyear Scorecard 2025
2024年にCliffwaterに買収されたCascade Private Capitalは、急速に資産を集め続けている。このファンドは主にプライベート・エクイティ・ファンドのセカンダリー・オファリングに投資している。セカンダリー・ファンドは、プライベート・エクイティ・ファンドの持ち分を割安で取得し、それを元の純資産価値に戻して評価することで、リターンを押し上げることが期待できる。資金流入が順調であれば、更に良好なパフォーマンスにつながる可能性がある。投資家はこの現象を理解して、セカンダリーに特化したファンドの初期リターンが高くなる傾向があることに注意すべきである。
資産規模が大きいセミリキッド・エクイティ・ファンドのパフォーマ ンスは、2025年上半期はおおむね良好だった。モーニングスター・USマーケット指数は、2月から4月にかけて約20%下落し、リターンに影響を与えた。セミリキッド・エクイティ・ファンドは、投資対象である原資産の実際の価格変動性を過小評価していると指摘されており、この評価の歪みによってアウトパフォームしているように見えている可能性がある。
投資家はセミリキッド・ファンドでオルタナティブ資産運用会社を好む
この1年ほどの間、公募ファンドやETFで定評のあるファンド運用会社について、世間の注目を集める報道が相次いだが、セミリキッド・ファンドの投資家から大きな支持を得るには至っていない。
この分野で最大手のプロバイダーは、プライベート市場への投資を専門とし、早い時期からファイナンシャル・アドバイザーへのマーケティングを開始していた機関である。たとえば、Blackstone は、2011年にプライベート・ウェルス部門を立ち上げている。
資産規模による上位5社は、「非適格購入者」が買うことができるセミリキッド・ファンドの全資産の約46%を運用している。Blackstone の市場シェアは2025年上半期にやや低下したが、これは、非上場 REIT に対する投資家の関心が依然として低調なためである。なお、Blackstone Real Estate Income は非上場REITの中で圧倒的な規模を誇っている。 ◇

