投資信託を選ぶとき、何に注目するでしょうか。「全世界株式がいいのか、それとも米国株式か」「コストはどれくらいか」、などの比較はよく目にします。一方で、その投資信託をどの運用会社が設定し、運用しているのかを、細かく調べることは、あまり多くないのではないでしょうか。
運用会社の考え方や組織文化は、商品ラインアップや運用費用、さらには長期的な運用成果に少なからず影響します。NISAで投資を開始する人が増えている今、個々の投資信託だけでなく、その「作り手」にも目を向けてみましょう。この記事では、モーニングスターの「資産運用会社概要レポート 2026」をもとに、運用会社の評価ポイントを解説します。
※ レポート全文は以下のリンクからダウンロードしてお読みいただけます。
「大手運用会社」と「優れた運用会社」は必ずしも同じではない
新NISA開始後も個人投資家からの資金流入が続き、公募追加型株式投資信託の純資産総額は、2026年5月に200兆円を超えました。しかし、投資信託市場全体が拡大していますが、すべての運用会社が同じようなペースで成長しているわけではありません。
日本の投資信託市場では、上位数社が非常に大きなシェアを持っています。特にインデックス運用の分野では、日銀による巨額のETF保有なども背景となり、市場シェアの集中が進んでいます。インデックス運用においては、これは決して悪いことではありません。投資家が支持する商品に資金が集まるのは自然なことですし、規模が大きくなることで運用費用を引き下げやすくなるというメリットもあります。
日本の資産運用会社残高シェア

ただし、「多くの資金を集める大手運用会社」と「優れた運用会社」は必ずしも同じではありません。投資家本位の商品ラインアップを有し、長期的に良好な運用成果を生み出し、それを支える組織やリスク管理体制を備えた運用会社こそが、投資家にとって良い運用会社だとモーニングスターでは考えています。では、そのような運用会社をどのように見極めればよいのでしょうか。
日本で個人投資家向けに投資信託を提供する運用会社は約80社あります。大手運用会社になると幅広い資産クラスの商品をそろえているため、どの会社も似たような投資信託を提供しているように見えるかもしれません。しかし、商品の作り方や新商品の投入姿勢、人材育成、リスク管理体制などを見ていくと、運用会社ごとの違いが見えてきます。
投資信託のラインアップの面では、テーマ性・ストーリー性をもった新規ファンドを積極的に投入する会社もあれば、無理にトレンドを追いかけない運用会社もあります。低コストのインデックス運用で規模を拡大する運用会社もあれば、専門性の高いアクティブ運用に注力する運用会社もあります。
また、人材育成や後継者計画、運用チームの安定性、運用リスク管理への取り組みなど、投資家からは見えにくい部分にも違いがあります。これらの要素は、個々の投資信託において短期的な差となって現れづらいものですが、長期的には投資信託のリターンに影響を及ぼす可能性があります。
よって、個々の投資信託を選ぶ際には「どの投資信託を買うか」だけでなく、「誰がその投資信託を提供しているか」にも目を向ける必要があります。
運用会社を見る3つのヒント
では、個人投資家の立場では何を見ればよいのでしょうか。運用会社のすべては把握できないと思いますし、それを理解する必要はありません。
まずは次の3つを確認するだけでも、運用会社の姿勢や質が見えてきます。
1. 投資信託ラインアップ
運用会社はどのような投資信託を提供しているでしょうか。
ここでは、投資信託の本数ではなく、新規設定に目を向けてみましょう。流行に合わせた投資信託を次々と投入している運用会社と、長期的な資産形成に役立つ商品を継続的に育てている運用会社では、土台となる文化が異なります。前者は市場環境や投資家ニーズに応じて新商品を積極的に投入する傾向があり、後者は既存ファンドの運用実績や運用体制の強化を重視する傾向があります。
多くの運用会社のホームページでは、純資産総額順に投資信託を並び替えることができます。上位に比較的運用期間が短い(設定日から間もない)ファンドが多く入っていたり、純資産総額上位のファンドが頻繁に入れ替わるような運用会社は、流行に合わせた投資信託を次々と投入している可能性があります。
運用会社における投資信託のラインアップは、その会社の姿勢や文化を体現するものです。是非、各社のホームページを見てみましょう。なお、投資文化が比較的強い運用会社は、運用チームや運用担当者などの情報も開示し、透明性をもって中長期で投資家に安心してもらえるような取り組みを行っているところが多いです。
2. 長期的な運用力
過去の運用実績は将来を保証するものではありません。それでも、長期間にわたり良好な成果を積み重ねている運用会社は、単なる幸運ではなく、それを支える運用面での強みを持っている可能性があります。
個別の投資信託だけでなく、運用会社全体としてどのような運用成果を残してきたのかを見ることも重要です。モーニングスターでは、同じカテゴリ内で過去のリスク調整後リターンを評価したモーニングスター・レーティングを算出・公表しています。以下に平均モーニングスター・レーティングを示しています。ラインアップが絞られている運用会社、インデックス運用が中心の運用会社が多くなっていますが、アクティブ運用が主体の運用会社も含まれています。
平均モーニングスター・レーティング上位11社
なお、「資産運用会社概要レポート 2026」では、モーニングスターのアナリストが評価する運用会社について、ファクトシートを掲載しており、その中で各社のモーニングスター・レーティングの分布を示しています。
3. 運用組織・リスク管理体制
一般的に、優れた運用成果は、ファンド・マネジャー個人の能力だけで生まれるものではありません。
モーニングスターでは、ファンド・マネジャーの経験・能力に加えて、報酬体系、定着状況、リスク管理体制なども重要な要素として評価をしています。これらの項目は個人投資家には見えにくい部分ですが、長期的な運用成果を支える基盤となります。
しかし、これらの情報を個人投資家が自力で収集・比較することは容易ではありません。運用チームの安定性やリスク管理体制、運用会社の企業文化などは、日々公表されるデータだけでは把握しにくいためです。
モーニングスターの運用会社評価は、これらを総合的に評価したもので、モーニングスター・メダリスト・レーティングの一つの評価軸となっています。「資産運用会社概要レポート 2026」では、ファクトシートにて、アナリストによる評価コメントとともに、この評価を記載しています。
今後、投資信託を選ぶときは、個々の投資信託の「中身」だけでなく、その「作り手」である運用会社にも少し目を向けてみてはいかがでしょうか。その際に、「資産運用会社概要レポート 2026」を活用すると良いかもしれません。◇
※ 本稿は情報提供のみを目的としており、特定の投資手法、投資商品などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、投資資金の性格、投資への姿勢などを考慮して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

