前回は、日本のファンド市場が新NISAと低コスト競争によって大きく変化している現状を、運用資産残高や資金流入の勢いから分析しました。
今回は、私たち個人投資家が本当に信頼できる「運用の質が高い会社」を見極めるために、モーニングスターのレポートが提供する客観的な評価指標と最新のランキングに焦点を当てて解説します。
なお、この記事は、モーニングスターが発行した、運用会社の詳細な分析を含む「日本の資産運用会社概要レポート 2025」に記載されている分析内容を抜粋し、投資家がチェックすべきポイントをランキング形式で解説するものです。
将来の見通しを勘案した評価: 「モーニングスター・メダリスト・レーティング」
モーニングスターでは、ファンドの将来の見通しを勘案した「モーニングスター・メダリスト・レーティング」を付与しています。評価は、金(Gold)、銀(Silver)、銅(Bronze)、中位(Neutral)、下位(Negative)の5段階で行われます。
評価のベースとなるのは、以下の3つの評価軸です。
- 運用担当者 (People):経験豊富なチームか
- 運用プロセス (Process):一貫性のある手法か
- 運用会社 (Parent):「投資家の利益」を自社の利益よりも優先しているか
特に「運用会社」の評価軸では、運用力を重視する文化があるか、運用費用を決める際の理念は適切かなど「投資家本位」の姿勢を有する運用会社であるかを見極めています。
最終的なレーティングは、これら3軸の評価に「運用費用(信託報酬など)」を加味して決定されます。運用費用を抑えるための過度なコスト削減(運用者の削減など)が運用力の低下を招いては本末転倒ですが、コストが長期パフォーマンスに直結する以上、その水準は極めて重要です。 そのため、低コストのインデックス・ファンドが多い運用会社が、高評価ランキングの上位を占める傾向にあります。
残高上位10 社におけるメダリスト・レーティングの金、銀、銅ファンドの割合
運用資産残高上位10社の中で、ブラックロックはファンド本数の68%が高評価を獲得しトップでした。これは、同社が世界的なiSharesブランドを展開し、世界規模の効率性を背景に、運用費用の低い商品を中心に提供していることが背景にあります。
アクティブ運用が中心の会社の中では、コモンズ投信やキャピタル・インターナショナルが提供する多くのファンドが高評価を獲得しています。特にキャピタル・インターナショナルは、投資家重視の姿勢と優れた運用能力が評価され、2025年の日本のモーニングスター・アワードで最優秀運用会社賞を受賞しています。
長期的な「運用の質」を示す: 「成功率」
モーニングスターでは、一時的なブームに乗った実績を残すファンドよりも、長期にわたって安定して投資家にとって良い成果をもたらしているファンドのほうが望ましいと考えています。
運用会社レベルでの「成功率」は、あまり聞き馴染みのない指標ではありますが、以下の2条件を満たしたファンドの割合を指します。
- 計測期間中に、償還(運用打ち切り)や併合をせずに存続している
- リスク調整後の実績(※)が、同じカテゴリの平均(中央値)を上回っている
※ 単にリターンが高いだけでなく、価格の振れ幅(リスク)を抑えて効率よく収益を上げたかどうかの指標。
リスク調整後リターンの成功率上位10 社
高い成功率を達成している運用会社は、一時的な人気に流されず、ファンド・ラインアップを厳選して絞り込んでいる傾向が見られます。成功率上位10社では、楽天投信と三井住友トラスト・アセットを除く8社は、ファンド本数が50 本未満です。例えば、独自のアクティブ運用に特化し、運用会社評価で最も高い評価を受けるスパークス・アセットは、自社の強みにリソースを集中させることで高い成功率を維持しています。なお、米国では、成功率の高い運用会社上位10 社は、概ね25 本未満という絞り込まれたファンド・ラインアップとなっており、日本の運用会社と比較してさらに少ない本数となっています。
実績の「度合い」を可視化: 「モーニングスター・レーティング」
成功率は、カテゴリ内で上位半分以上に入ったかに着目した指標でした。直感的に分かりやすい指標ではありますが、「少し良かった」と「すごく良かった」の違いを捉えたものではありません。モーニングスターでは、この違いを捉える指標として、「モーニングスター・レーティング」をファンドごとに算出しています。
モーニングスター・レーティングは、上記の成功率でも用いた過去のリスク調整後の実績に基づき、ファンドをカテゴリ内で相対的に評価し、それを5段階(★から★★★★★)で示します。最低3年以上の実績で算出され、特に5年、10年の長期の実績がより重く評価されます。
平均モーニングスター・レーティング上位10 社
市場全体で見ると、モーニングスター・レーティングの平均が高いのは、運用費用の低いインデックス・ファンドを中心に提供する運用会社です。運用費用が低い商品は、カテゴリ内で優れた実績を達成するための大きな優位性となるためです。
一方、アクティブ運用のラインアップを中心とした運用会社も上位にランクインしています。あおぞら投信のように、米国ディメンショナルとの提携を通じた体系的でルールに基づくアクティブ運用戦略が、安定したリスク調整後リターンを提供してきたことが評価され、高い平均レーティングを達成しています。また、フィデリティのように、厳選された質の高い運用戦略を日本で展開する運用会社も、高い評価を達成しています。
まとめ
これらの客観的な指標(モーニングスター・メダリスト・レーティング、成功率、モーニングスター・レーティング)を総合的に活用することで、一時的な人気に惑わされず、真に投資家本位で質の高い運用を続ける会社を選び出すことができます。皆さんが保有している、あるいは検討しているファンドの運用会社は、これらの指標でどのように評価されているでしょうか。一度、運用会社全体の「質」という観点からポートフォリオを眺めてみることをおすすめします。
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本記事のもととなる「日本の資産運用会社概要レポート 2025」全文は以下からご覧いただけます。

