日本の投資信託・ETF市場「最新勢力図」を徹底分析!(その1)

新NISAと巨大パッシブ市場の現状

投資信託のアートワーク

NISAなどで投資信託やETFに投資をする際、私たちは「どのファンド」を選ぶかに注目しがちですが、そのファンドを作っているのは「運用会社」です。ファンドの作り手である運用会社の規模、成長率、そして市場での立ち位置を知ることは、ファンド選びにおいても重要ではないでしょうか。

今回、モーニングスターでは運用会社の詳細な分析を含む「日本の資産運用会社概要レポート 2025」を発行しました。この記事では、レポートの前半部分に記載されている分析内容を要約し、日本のファンド市場の最新の勢力図と、資金がどこに流れているのかを、ランキング形式で解説します。

はじめに: 運用会社評価とは

このレポートの基盤となっているのが、モーニングスターのアナリストによる運用会社評価です。これは、投資家利益の観点から、各運用会社が責任を持って投資家の資金を運用しているかについてのアナリストの見解で、運用会社の投資文化、運用プロフェッショナルの報酬体系、そして運用費用を決める際の理念などの分析に基づくものです。

この評価は、単に過去の成績だけでなく、運用会社の姿勢やガバナンスが長期的なリターンの土台となるかを深く見極めるためのものです。そのため、モーニングスターのアナリストは運用会社の経営陣を含む複数回のインタビューなどを行い、さらに複数アナリストによる評価委員会での議論を経て、最終的な評価を決定します。

市場構造の現在地: 大手と外資の競争

歴史的に、日本の投資信託・ETF市場(ファンド市場)では、野村アセット、大和アセット、アモーヴァ・アセット、三菱UFJアセット、アセットマネジメントOne、三井住友DSアセット、三井住友トラスト・アセットなど大手金融機関グループ傘下の運用会社が、大きな市場シェアを占めてきました。これらの運用会社は、グループ内の銀行や証券会社という強固な販売ネットワークを活用し、残高を拡大してきました。

しかし近年、投資信託の販売会社である銀行や証券会社では、ファンド選定のガバナンスを強化し、質の高いファンドを商品ラインアップに組み入れる動きが強まっています。また、投資家の海外資産への投資需要が高まる中で、長期で優れた運用実績を持つ外資系資産運用会社も、海外株式運用を中心とした専門知識を活用し、日本での市場シェアを徐々に拡大しています。

大変革を牽引するパッシブ運用と新NISA

日本のファンド市場で今、最も勢いがあるのが、低コスト(運用費用が低い)でシンプルなパッシブ運用(インデックス・ファンド)です。

インデックス・ファンドが日本籍の公募追加型株式投資信託(ETF除く)に占める残高シェアは、2015年の約10%から、2025年にはなんと37%へと約4倍に急増しました。この急成長は、三菱UFJアセットの「eMAXIS Slim」シリーズなどの運用費用の低い商品提供が増えたことや、オンライン証券等の従来の対面型チャネルとは異なる形での、投信の購入増加によって牽引されています。

さらに、2024年に改定された新NISA制度は、非課税投資枠の拡大と非課税保有期間の恒久化により、個人投資家の長期的な資産形成への関心を刺激し、ファンド市場全体への資金流入を大幅に押し上げました。2024年における投資信託市場への資金流入額の約30%は、新NISA口座を経由したもので、その多くの部分をインデックス・ファンドが占めています。

運用資産残高ランキング: 市場の「顔ぶれ」と日銀の特殊要因

2025年9月30日時点の運用資産残高(公募追加型投信とETFの合計)トップ10の運用会社は以下の通りです。

順位
運用会社名
運用資産残高(兆円)
1位野村アセット60.5
2位三菱UFJアセット40.5
3位大和アセット32.1
4位アモーヴァ・アセット27.1
5位アセットマネジメントOne14.2
6位三井住友DSアセット10.7
7位三井住友トラスト・アセット9.0
8位フィデリティ・インターナショナル6.5
9位ブラックロック6.3
10位アライアンス・バーンスタイン5.9

上位3社で市場全体の半分強の運用資産残高を有しており、集中度が高いことがわかります。

特に注目すべきは、野村アセット、三菱UFJアセット、大和アセットなどの上位運用会社では、運用資産の70~80%がパッシブ運用となっている点です。これは、2010年代から2020年代初頭にかけての日本銀行(日銀)による大規模なETF購入の影響を強く受けているためです。この「日銀保有分」という特殊要因が、現在の市場シェアの数字を大きく押し上げている側面には留意が必要です。

投資家が「今」選ぶ会社: 純資金流入率ランキング

運用資産残高が過去の規模を示すのに対し、純資金流入率は、期間中にどれだけ資金が新たに流れ込んできたかを示す成長率の指標です。もう少しかみ砕くと「勢い」の指標とも言えるでしょう。

過去1年間の純資金流入率 上位運用会社

過去1年間では、WCM社を外部委託先とするグローバル株式ファンドであるWCM 世界成長株厳選ファンドへ大規模な資金流入があった朝日ライフアセットがトップでした。インベスコもグローバル株式ファンドのインベスコ 世界厳選株式オープンが支持を集めました。

残高上位の会社で際立っているのは、三菱UFJアセットが19.3%と堅調な成長率を記録していることです。これは主に、新NISAを追い風にした低コストのインデックス・ファンドへの資金流入によるものです。

過去5年間の純資金流入率 上位運用会社

過去5年間で見ると、auアセット、ミレーアセット(日本ではGlobal X)、楽天投信、SBIアセットなど、低コストのインデックス・ファンドに注力する新興の運用会社が大きく成長しており、低コスト志向が明確に示されています。また、キャピタル・インターナショナルインベスコなどの外資系運用会社も、力強い資金流入を記録しています。

大手各社のラインアップ「集中度」

大手運用会社の場合、数多くのファンドの運用を行っています。ファンド・ラインアップの「集中度」は、その運用会社の残高に占める上位ファンドの割合を示すもので、一部のファンドにどの程度残高が集中しているかという、運用会社の特性を表します。

残高上位 10 社における上位 5 ファンドへの集中度

残高上位10社のうち7社では、運用資産残高の50%超が、わずか5ファンド(またはそれ以内)に集中しています。これは、日銀が保有するETFを運用している運用会社や、特定の人気ファンドに投資家の資金が集中していることが背景です。

例えば、野村アセットは650本超のファンドを持ちながら、残高の約70%が日銀保有のETFを含む5ファンドに集中しています。また、アライアンス・バーンスタインは、日本における投資信託残高の96%が上位5ファンドに集中しており、同社の米国成長株戦略への依存度が極めて高いことがわかります。

一方で、三井住友DSアセットは集中度が22%と比較的低く、大手運用会社の中では比較的ファンド全体に運用資産残高が分散している傾向が見られます。

次回は、運用会社の質を客観的に測る指標を中心としたランキングを紹介いたします。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針