とあるビットコインETFは2倍になったが、投資家リターンはその4分の1に満たなかった

iShares Bitcoin Trust ETFは上場来で年率46%以上の上昇率を記録したが、投資家リターンの平均はわずか年率11%にとどまった

ビットコイン、株価表示板、そしてスマートフォンを見ている投資家を題材にしたコラージュイラスト。

もしも、2024年1月5日の上場時に iShares Bitcoin Trust ETF (IBIT)に一括投資していたなら、現在ではかなりの利益を得ることができただろう。最近の売り圧力後も、この上場投資信託は2025年11月26日までに年率約46%のリターンを上げており、追随目標とする暗号通貨の上昇を反映した動きを見せている。

以下のグラフは、IBIT上場日に1万ドル投資した場合の 資産額の変化を示している。

iShares Bitcoin Trust ETF: Growth of $10,000 Since Inception

しかし当然のことだが、投資家が上場初日に一斉にETFを買って資金を倍増させたわけではない。投資家は、上場後の好きな時期に、各自のペースで異なる金額を投資している。その結果2025年11月26日までにトータルで約630億ドルがこのETFに流入した。以下のグラフは、青の面グラフが累積月次資金純流入額を、赤の棒グラフ(右軸)が各月の純流入額を示している。

iShares Bitcoin Trust ETF: Cumulative and Monthly Net Flows Since Inception

投資家リターンはどうだったか

この資金フローのデータを踏まえると、問題となるのは当該期間における投資家たちの売買のタイミングと資金規模を考慮した上で、彼らが集団としてどのような結果を手にしたかということだ。

この点を検証するため、ETFの設定日から2025年11月26日までの日次純資産残高と純流出入額を集計し、このデータに基づき、投資家の平均的な金額加重リターンを推計した。その結果、投資家リターンは約11.2%(年率換算)だった。絶対値としては悪くないかもしれないが、同期間におけるETFのトータル・リターンは46%だった。つまり投資家が実際に手にしたリターンはそのほんの一部、4分の1未満に過ぎなかったのである。このリターンの差(ギャップ)は、投資家の売買タイミングの悪さに起因するものである。

以下のグラフは、左が当該ETFの投資家リターン、真ん中がETFそのもののリターン、右のマイナスが両者間のギャップを示している(年率換算)。

iShares Bitcoin Trust ETF: Annual Dollar-Weighted and Total Returns Since Inception

※ 上記の金額加重リターン推計値を算出するために組み込んだ純資産および推定日次純流入データの詳細については、本稿最後の「付記」を参照。

この年率11.2%という金額加重リターンと比べると:同期間で米ドルでは、短期米国債は4.7%、米国投資適格債は5.3%、米国株式は23.3%、そして「米国株式60%・債券40%」のポートフォリオは15.7%の収益率だった。

以下のグラフは、赤が当該ETFの投資家リターン、青は左から米国債3ヵ月もの、米国投資適格債、米国株式60%・債券40%ポートフォリオ、S&P500指数の年率リターンを示している(年率換算)。

iShares Bitcoin Trust ETF: Since-Inception Dollar-Wgt Return vs. Total Return of Other Asset Classes

ギャップを理解する

ここまで見てきたように、ETFのトータル・リターンと金額加重リターンで表される投資家リターンとの間には大きな差が生じている。では、その理由は何だろう?

ETFは、ほとんどの投資家の資金が流入する前に最大の上昇を記録した。その状況は、以下の表で確認することができる。ここでは、各時点におけるETFの資産規模に基づき、ドル建ての総損益額を推計している。

純資産総額(10億ドル)
推計総損益(百万ドル)
日数
全体に対する日数の割合
<1-13.3112%
1-5640.4274%
5~101,357.6162%
10~152,173.0122%
15~25-1,498.421731%
25~507,051.29514%
50~754,727.117826%
75~100-7,251.613520%

※ 上記の推計損益の算出方法の詳細は、本稿最後の「付記」を参照。

当該ETFは、運用開始後最初の66日間で、金額過重リターンの約60%(約42億ドル)を生み出し、その間に65%以上の上昇率を記録した。同期間中の1日当たり平均純資産はわずか約48億ドルだった。 それ以降では約30億ドルのリターンを上げたが、これははるかに大きな資産規模(平均純資産492億ドル)に分散されており、同期間のリターンは累積で約24%、年率換算で13.2%にとどまった。

さらに、投資タイミングが金額加重リターン(投資家リターン)にどのように影響したかを示すため、当ETFの設定日である2024年1月5日を始点として、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月…と期間を延ばした場合の金額加重リターンを算出した。

下記のグラフは、 各期間における金額加重リターン推計値(青点線)と、トータル・リターン(黄棒グラフ)と、その差(ギャップ、赤棒グラフ)を示している。

iShares Bitcoin Trust ETF: Forward-Extending Annual Dollar-Wgt and Total Returns Since Inception

最初の期間(設定日から2025年1月5日まで)ですでに、ETFのトータル・リターンと平均金額加重リターンとの間には約21パーセントポイントの差が生じていた。これは、設定後数か月間にリターンが急伸した一方で、資金流入が出遅れたことを反映している。この「ギャップ」は、より長期の期間(最長は設定~2025年11月26日まで)においても大きく開いたままとなっているが、それはこの期間中トータル・リターンが鈍化する一方で、資金流入が継続したためである。

注意すべき点

当ETFの運用会社であるブラックロックの担当者に、この推定金額加重リターンとトータル・リターンの間に見られる明らかな乖離について話を聞いた。同社は、このギャップを説明し得る、あるいは緩和し得る要因として、以下の三点を挙げている。

第一の要因はアクセスである:このETFの設定当初、一部の主要ダイレクト証券会社やファイナンシャル・アドバイザーのプラットフォームでは、利用が承認されていなかった。そのため、ETFは開始当初から急速に上昇したものの、潜在的な需要が満たされない状態が続いた。そのため、追加承認を得てより幅広い層にアクセス可能になるにつれて、過去2年間にわたり資金流入が続いたとみられる。

第二の要因はデリバティブおよび複数レッグ取引の成長である:大口機関投資家が、ETFを使ってビットコイン先物と現物ビットコインの価格差を裁定取引したり、オプションポジションをヘッジする手段としてETFを利用したりする。これはiShares Bitcoin Trust ETFを参照するデリバティブや仕組債が急増したことに伴うものである。

こうした取引は、単一の取引、すなわちETFのロング・ポジションを買うだけの単純な取引を見ると非経済的に見えるかもしれない。しかし、行われた複数の取引全体をみればこれらの投資主体に利益をもたらしたり、リスクをヘッジしたりする効果がある。

第三の要因は現物によるインカインド移転である:現物ビットコインの大口保有者が、それをETFと交換する現物移転取引がある。当該ETFは2025年7月にこの移転を承認し、それ以来、複数の大口暗号資産投資家との間で総額30億ドルを超える交換を実施した。これらのケースでは、ETFの金額加重リターンは、投資家が現物ビットコインをETFと交換した後に得たリターンを示すが、交換前の現物ビットコインのリターンは反映されない。

なお、第二と第三の要因は、当ETFに限らず、資金がミューチュアル・ファンドやETF以外の金融商品(ビークル)から流入またはそれらへ流出するあらゆる状況にあてはまる。そのような場合、当該ファンドやETFの金額加重リターンは把握可能であるが、資金の流入元または流出先となった他の金融商品のリターンについては把握できない。

まとめ

当ETFは本来の役割を果たしてきた。ビットコインの動きにほぼ完璧に追随し、運用開始以来優れたトータル・リターンを達成している。問題は、投資家が乗り遅れたように見えることだ。ETFが運用開始後数か月で急騰してから投資したため、平均的な投資家リターンが低く抑えられてしまったのである(前出のいくつかの注意点を踏まえても)。

投資家が臆病だったとは言えない。当該ETFは設定以来、取引日の80%で資金純流入を記録しており、投資家はその後おおむねETFを保有し続けているようだ。しかし、金額加重リターンとトータル・リターンの間にある大きな「ギャップ」は、投資方針を堅持することの重要性を浮き彫りにしている。現在の投資家が投資し続ければ、平均金額加重リターンは徐々にETFのトータル・リターンに近づくはずである。もし投資し続けなければ、投資家リターンは引き続き劣後する可能性が高いだろう。

また、「ストーリー」に用心すべきだという教訓も示している。このETFの上場は、暗号資産市場の「民主化」における画期的な出来事として歓迎され、個人投資家からの資金流入がビットコイン価格をさらに押し上げると主張する声もあった。確かにビットコインはその後上昇したが、最大の上昇はETFがまだ多くの資金を集める前、初期段階に記録された。これは、そのストーリー自体が完全に間違っていたということではないものの、ストーリーの大筋が正しくても、投資家が投資タイミングを誤る可能性があることを示している。

<付記>

以下の表は、、iShares Bitcoin Trust ETFの金額加重リターンを推計するために用いた2024年1月5日の設定日から2025年11月26日までの推定日次純流出入額を示している(単位はドル)。

Data Incorporated Into Dollar-Weighted Return Estimate

計算に用いた推定日次純流出入額は、ブラックロックがETF設定時から2025年9月30日(直近の定期報告書提出日)までの四半期ごとの米国証券取引委員会(SEC)提出書類で決算報告ベースで報告した数値と、下記の通りほぼ近いものとなっている。

期間
ブラックロックの決算報告ベースの資金流入額(百万ドル)
私の見積もり(百万ドル)
差額(百万ドル)
2024年1月5日~2024年3月31日13,98513,95827
2024年4月1日~2024年6月30日3,7713,7674
2024年7月1日~2024年9月30日3,7743,7704
2024年10月1日~2024年12月31日15,75715,7534
2025年1月1日~2025年3月31日2,7142,7121
2025年4月1日~2025年6月30日12,46212,4602
2025年7月1日~2025年9月30日8,5528,5502
2024年1月5日~2025年9月30日61,01560,97144

同様に、投資家の金額加重リターンに関する筆者の金額ベースの推計は、四半期ごとのタイミングの差異はあるものの、ブラックロックの決算報告ベースとほぼ一致している。 総括すると、2024年1月5日の運用開始から2025年9月30日までの期間において、投資家が獲得した利益は268億ドルと推計され、これはブラックロックの決算報告ベースの数値(269億ドル)に近いものである。

期間
ブラックロックの決算報告ベースの純利益および利益(損失)(百万ドル)
筆者推計(百万ドル)
差額(百万ドル)
2024年1月5日~2024年3月31日3,8043,863(59)
2024年4月1日~2024年6月30日(2,110)(3,081)970
2024年7月1日~2024年9月30日107946(839)
2024年10月1日~2024年12月31日12,43212,735(303)
2025年1月1日~2025年3月31日(6,458)(6,643)185
2025年4月1日~2025年6月30日14,46814,640(171)
2025年7月1日~2025年9月30日4,6784,388290
2024年1月5日~2025年9月30日26,92026,84872

iShares Bitcoin Trust ETFの四半期ごとの米国証券取引委員会(SEC)提出書類へのリンク

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※ 本稿はモーニングスターによる記事「A Bitcoin ETF Doubled in Value. Its Investors Made Only One-Fourth of That」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と相違がある場合は、原文が優先されます。

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、投資手法、投資対象などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針