インデックス・ファンドが初めて登場した1970年代、世間の反応は冷ややかなものだった。批評家はそれを「非アメリカ的」で「平均に甘んじる」と嘲笑した。1976年にVanguardが個人投資家向けに初のインデックス・ファンドを設定したが、設定額はわずか1,100万ドルにとどまり、目標の1億5,000万ドルには程遠かった。インデックス・ファンドの苦戦はその後も数年続き、VanguardのS&P500ファンドは『ボーグルの愚行※』として知られたのである。(※ジョン・クリフトン・“ジャック”・ボーグルはVanguardの創設者)
振り返ってみれば、その後どうなったかは明らかである。Vanguardは米国のファンド業界で圧倒的な資産規模を誇る存在となり、米国のミューチュアルファンドとETFの合計資産は8.5兆ドルを超える。その中には、かつて『愚行』と呼ばれたS&P500連動ファンド、1.3兆ドル超も含まれている。
インデックス・ファンドの波に乗っているのはVanguardだけではない。2023年には、インデックス運用のファンドがアクティブ運用のファンドを純資産ベースで追い抜いた。ボーグル氏は先見の明に富んでいたことが証明され、彼が初期の批判に屈せず信念を貫いたことは投資家にとっても実に幸運であった。
インデックス・ファンドについてファンド業界がこれほど見当違いな認識をしていたことは、いわば業界の利己性を示唆している。ボーグル氏やインデックス・ファンドを非難していた人々は、投資家の最善の利益を優先していたわけではない。彼らは自らのビジネスを守ろうとしていたか、インデックス・ファンドについて十分な調査をしていなかったか、もしくはその両方であった。
業界はインデックス・ファンドの台頭を食い止めようと手を打ってきたが、長期的にはその防衛線を守ることはできなかった。投資家がインデックスファンドの成功と、それを裏付ける研究成果に注目し始めたのである。ノーベル経済学賞を受賞した初の米国人であるポール・サミュエルソンや、後に受賞することになるユージン・ファーマの効率的市場仮説など、トップクラスの研究者が、アクティブ運用が総じて価値を生み出していないことを示す基礎的な論文を続々と発表した。
インデックス・ファンドの普及を目指す戦いは、ボーグル氏一人のものではなかった。ファンド業界で将来巨頭となる人々が、インデックス・ファンドに引き寄せられた。1971年、Wells Fargo (WFC)はジョン・マックォーン氏、レックス・シンクフィールド氏、デイビッド・ブース氏らのチームにより、初の機関投資家向けインデックス・ファンドを立ち上げた。彼らは後に共同でDimensional Fund Advisorsを設立し、現在では1兆ドルの資産を運用している。
GMOの共同創業者であるジェレミー・グランサム氏も、同年Batterymarch Financial Management向けにインデックス・ファンドを立ち上げた。投資家や研究者との連携が、これら将来のファンド業界を背負う人材を、頂点へと押し上げる原動力となったのである。
インデックス(指数)のポジティブな進化
ETFは長年にわたってインデックス投資(パッシブ投資)と密接に結びついてきた。米国でアクティブ型ETFが登場したのは、SPDR S&P 500 Trust ETF (SPY)が生まれてから15年後のことである。しかし、現在でも米国ETFの純資産の91%はパッシブ型ETFが占めている。
さらに、アクティブ型ETFのかなりの部分も、Dimensionalが提供するようなインデックスに近い戦略で運用されている。そのためアクティブETF資産でさえ、伝統的なETFのDNAの一部を受け継いでいると言えるだろう。インデックス・ファンドの創設者たちが、アクティブ運用を用いて指数の硬直性を改善する方法を見出したことは、特に驚くようなことではない。
インデックス・ファンドはインデックス追随の「難所」を改善する工夫も行った。Vanguardはインデックスの構成銘柄入れ替え時に、複数日に分散して取引することで市場インパクトを抑え、執行価格を改善した。Invesco RAFI US 1000 ETF(PRF)およびSchwab Fundamental US Large Company ETF(FNDX)の指数設計・提供会社であるResearch Affiliatesは、ストラテジックベータETFのリバランスリスク対策のために、インデックス・ポートフォリオを4つに分割し、四半期ごとに1つずつリバランスする方式を採用した。これら改善の工夫により取引コストは低下し、リバランスのタイミングによる「運」を抑制することで長期的なパフォーマンスの平準化にもつながった。
技術的進歩は、ニッチ市場の指数に連動するETFにも新たな可能性をもたらした。たとえば初期のパッシブ型地方債ETFは、当時の技術的制約により流動性の低い地方債市場の一部を対象外にせざるを得なかった。具体例をあげると、SPDR Nuveen Bloomberg Muni Bond ETF(TFI )には、2007年の運用開始時から、「AAAおよびAA格付の債券のみを対象とし、病院、住宅、たばこ、航空関連の地方債を除外する」など旧来の除外基準があった。そのためモーニングスターは、かつてこのファンドの運用プロセスを「平均以下(Below Average)」と評価していた。その後2025年6月に採用指数を変更することで同ファンドはこれらの課題に対処し、現在では「平均以上(Above Average)」の評価を得ている。2007年当時はインデックスを投資可能なものとするにはこうした制約が必要だったが、現在では地方債の流動性向上と電子取引の改善によって過去の除外基準は不要になっている。
債券型ETFは技術進歩の恩恵を最も受けた分野である。幅広い分散投資を行うインデックス・ファンドは、アクティブ運用が投資対象とする市場全体により効率的に投資する手段となった。インデックス・ファンドが持つ低コストという優位性は、アクティブ運用がそれらを上回る運用成果を上げることをさらに難しくしている。
ハイイールド債券ETFも進化している。たとえば、2007年に登場した初期のETFであるiShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF(HYG)やSPDR Bloomberg High Yield Bond ETF(JNK)と、現在のETFとの間には小さいながらも重要な違いがある。
下記の表は、アナリストがモーニングスター・メダリスト・レーティングを付与した4つのハイイールド債指数連動型ETFについて、各ETFが採用している指数の最低発行額と構成債券の数、そして年率換算リターンを示している。
初期のETFであるiShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETFおよびSPDR Bloomberg High Yield Bond ETFは、最低発行額の要件がより高い指数に連動していた。一見すると些細な違いのようだが、より新しいJPMorgan BetaBuilders USD High Yield Corporate Bond ETF(BBHY)やiShares Broad USD HY Corporate Bond ETF(USHY)が追随する指数は、初期のハイイールドETFと比較してカバーしているハイイールド債券の数が約70%も多い。この特徴とより安い手数料のおかげで、後発ETFは先発ETFを上回る運用成績を実現している(表の右端が2017年10月25日から2026年1月13日の年率換算リターン)。
High-Yield Bond Indexes Have Grown More Inclusive
JPMorgan BetaBuilders USD High Yield Corporate Bond ETFが、iShares Broad USD HY Corporate Bond ETFよりパフォーマンスが悪かった事実は、採用指数に今でも改善の余地があることを浮き彫りにしている。
債券ETFを立ち上げるときには、当初は指数をサンプリングし、資産が増加するにつれてポートフォリオを拡大するのが一般的である。通常、債券は株式よりも大口で取引されるため、ETFの初期段階で多数の銘柄を保有することは、不可能ではないにせよ費用がかさむ。そのため、運用者は資金流入に応じて新たな債券を徐々に組み入れていくほかないのである。
JPMorgan BetaBuilders USD High Yield Corporate Bond ETFは、対象指数よりも大幅に少ない債券を組み入れたままの期間が長かった。一方、iShares Broad USD HY Corporate Bond ETFは迅速に資産を集め、ポートフォリオを急速に拡大した。両ETFがたどった道筋の違いは、iShares Broad USD HY Corporate Bond ETFが獲得した年率33ベーシスポイントの超過リターンとして示されている。
一部の指数は本質を見失っている
インデックス投資の利点は、基礎研究に則る運用、厳しいコスト管理、そして低コストという土台の上で育まれた。しかし、現在米国市場に存在する2,000を超えるインデックスETFのすべてが、この基準を遵守しているとはとても言えない。
驚くべきことに、インデックスETFは1,800以上の異なる指数を採用している――この事実に、私は思わず二度見してしまった。300本以上のパッシブ型ETFは0.75%を超える手数料を課しており、平均的なアクティブ型ETFよりも高コストである。これらのETFは、初期のインデックス研究者たちには到底想像もつかない存在であろう。
こうした『進化』は、改善ではなくビジネス上の必要性によって生じた。主流の指数は普遍化が進み、広範な市場を対象とするハイイールド債指数ETFでさえ、10ベーシスポイント未満の手数料で提供されているものがある。こうした背景を抱えて、ETFの運用会社は新たな資産を獲得し、より高い手数料を正当化するために、戦略を差別化せざるを得なくなっている。
高コストで高度に差別化されたインデックスETFは、インデックス投資の理念とは正反対の存在になっている。運用会社がビジネスをしようとする姿勢を責めるつもりはないが、筆者自身は0.75%以上の手数料を課すインデックス・ファンドを購入しようとは思わない。
以下の図表は、モーニングスター・インデックスと比較した、米国のETFの3年間の超過リターンについて、経費率が最も安いものから最も高いものまで5分位に分けて示している。
Index ETF's Average 3-Year Excess Return by Fee Quintile
投資家は、手数料が安いインデックス型ETFを選択することで、利益追求型のETFの餌食になることを回避できる。そして、超低コストで広範な市場をカバーする指数を採用したインデックス型ETF「ではない」商品を物色する人でも、依然として手頃な選択肢を見つけることは可能である。上のチャートにおいて、パフォーマンスが本格的に悪化するのは、手数料の第3五分位からである。第2五分位と第3五分位の境界は0.35%なので、この基準より安い手数料のETFを選択すればよいだろう。
ETF市場には、去年「買うべき」と言われた多数の戦略が存在している。高額な手数料を課す目新しい戦略には懐疑的な姿勢で臨むべきだろう。同様に、より高コストのファンドを提案する資産運用会社には、投資家を低コストのインデックス・ETFから遠ざけようとするビジネス上の理由があるということを認識しておこう。
あなたが最もアドバイスを求めるべきではない人とは、『ボーグルの愚行』という言葉を生み出した人々である。◇
※ 本稿はモーニングスターの記事「What Today’s Index ETFs Get Right, and Wrong, for Investors」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

