新しいETFに関する重大な指摘と、本当に勝つのは誰かについて

投機は莫大な富で人生を一変させるかもしれないが、たいていは破滅への道となる

ETF "の文字を中心に、左右に矢印を配したコラージュイラスト。

本稿で言及されているファンドの中には、運用会社からの依頼によりレーティングを付与しているもの、またはモーニングスター・インデックスに連動を目指すものが含まれています。下記に記載されている*印の付いたファンドが該当します。詳細な開示情報については、各ファンドの頁をご参照ください。

訳者注:本稿はETFを論じていますが、日本では投資信託でもレバレッジ型の商品が多数運用されています。むしろブルベア型の運用は日本の方が浸透していると言えるかもしれません。長期投資と投機に近いレバレッジ投資について、日本の投資家の方が冷静に住み分けができているという声もあります。それにしても、レバレッジ投資を好む投資家が多いのか、昨年12月には人気の高い「MSCIオール・カントリー・ワールド指数」を参照するレバレッジ型のファンド「auAM レバレッジ・オールカントリー(愛称:レバカン)」も登場しました。これは、仕組債を通じて、日々の基準価額の値動きが、」「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・米ドルベース)」を円建て評価した場合の値動きの2倍程度となることを目指すファンドです。

価格変動の大きさに賭ける

金融市場には価格変動が付き物である。株式、インデックス、ETFの日々の価格変動は、常にその事実を示している。もっとも、こうした変動のほとんどは小さく、取るに足りない退屈なもので、時間の経過とともに概ねプラス方向に複利で積み上がっていく傾向がある。

特別に大きな値動きはニュースになりやすいが、それには当然の理由がある。大きな上昇は人生を変える大金を生む可能性があるからだ。そしてこれが、価格変動性(ボラティリティ)の高いETFが何十本も市場に登場した主な理由である。

短期的な利益を狙ってそうしたETFに投資家が群がる。ただし、相応のリスクも付き物であり、免れる術はない。大幅な上昇が見込まれるETFは、同様の、あるいはそれ以上の下落リスクを抱えている。ETFを用いた「投機」は、リスクの高い取引なのである。

不完全な指標としての正規分布

価格変動性(ボラティリティ)は、投資リターンの標準偏差を用いて示されることが一般的である。これは、「起こりうる結果の範囲とその確率」を反映しています。これにより、投資商品のリスクの規模を合理的に評価することが可能になる。

それらの確率分布はベル型曲線を描く:中程度のリターンはより一般的であり、正負いずれにおいてもより大きなリターンが発生する頻度(確率)は低くなる。以下のグラフは、1976年9月からのバンガードS&P500 ETF(VOO)の月次リターンの確率分布を示しており、横軸がリターンを、縦軸が発生した月数を表している。このグラフも理論通り、中程度のリターンが発生する月数が多く、正負いずれも大きなリターンの月は少ないベル型の分布となっている(データ数をより多くとるために、過去データを長く遡って使用している)。

VOOのベル曲線

しかし、標準偏差は、金融市場に当てはめると完璧なものではない。標準偏差はリターンが正規分布に従うことを前提としているため、極端な事象が発生する実際の確率や、市場が経験する激しい変動を正確に反映しきれないのである。

例えば、バンガードS&P500 ETFは、グラフの対象期間(1976年9月から2025年10月まで)において、約4.6%の月でマイナス7パーセントポイント以上の下落を記録した。もしリターンが正規分布に従うならば、この確率は3.2%であり、言い換えれば、同ETFは正規分布モデルが示すよりも頻繁に、極端なマイナスリターンが発生した月があったということだ。 上昇局面においても同様の傾向が見られ、同ETFは正規分布よりも高い頻度で極端なプラスリターンを記録している。

理論と現実の差は小さいように見えるかもしれない――極端な下落月と正規分布の差はわずか1.4%だ――だが、そのアンダーパフォーマンスの程度は大きく、長期的な影響をもたらすかもしれない。わずかな確率の差を侮ってはならないのである。

投機は昔からの市場の相棒

正規分布の両端における極端な上昇/下落の可能性は、現在取引されている多くの新しいETFの設計思想に反映されている。2025年1月から11月にかけて上場された940本以上の新規ETFの多くは、高ボラティリティを特徴としている。モーニングスターの分類によれば、新ファンドの約30%はトレーディング・ツール型(日本のブルベア型等)に、さらに5%はデジタル資産(暗号通貨)に分類されている。 ほぼ全てが、広範な株式市場に連動するETFと比べると、敢えて価格変動性を高くしており、主に投機の手段としての選択肢となる商品である。

これらのETFは意図的にボラティリティを高めて組成されているが、それは買い手を惹きつけるために大きな上昇の可能性を持つ必要があるからだ。価格変動性を高めることで、ベル型曲線の正/負両端で極端に大きなリターンが発生することになる。この仕組みによって、より高い上昇とより大きな下落が発生する道が開かれるのである。

投機への欲求は大昔から存在している。エドウィン・ルフェーブルが著した1923年のトレーディングの古典『欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア(Reminiscences of a Stock Operator)』は、悪名高いトレーダー、ジェシー・リバモア氏をモデルにした主人公(ラリー・リビングストン)が激動の株式市場に賭けて成功と失敗を繰り返す波瀾万丈の物語である。

主人公のリビングストン(あるいはリバモア氏)の手法を定義することは難しい。多くの人は彼をデイトレーダーと呼ぶであろうが、トレンドフォロワーやモメンタム投資家と表現する人もいるだろう。ギャンブル依存症と対比するのも不自然なことではないし、彼の成果もまた、似たようなものであった。彼の人生は、株式に賭けては富を築き、また賭けてはすべてを失う繰り返しであった。

ここには重要な教訓がある。投機は人生を変えるほどの富を生み出す可能性があるが、信じ難いほどリスクが高く、不確かなものであり、往往にして破滅への道となるものである、ということだ。

この物語の皮肉な点は、リビングストン自身が自らの行動が投機的であると十分に認識していることである。彼は本書の冒頭章において、株式市場における投機の長い歴史に言及している:

私が若い頃に胸に刻んだもう一つの教訓は、ウォール街に新しいことは何もないということだった。投機は、まるで山々のごとく太古の昔からそこにあった。今市場で起きていることは、すでにかつて起きたことであり、いつか再び起きることに過ぎない。私はこの真実を決して忘れたことは無かった。

リビングストンの指摘は正鵠を射ている。何世紀にもわたり、投機的な流行は途切れることなく続いている。チューリップ、鉄道、インターネット株式、住宅ローン、ビーニーベイビーズ……投機的な流行の例は後を絶たない。

投機の対象は時代とともに変わっても、中核を成す人の性(さが)は今も昔も変わらない。主にレバレッジ型やインバース型の投資手段を提供するトレーディング・ツール型のETFに賭けられた資金は、過去6年間でほぼ4倍に増加している。以下のグラフが示す通りトレーディング型ETFの残高は、2020年1月の360億ドルから2025年11月末には1400億ドルを超えるまでに拡大している。

取引ツールETFが増加しています

これらのETFは極めて危険なリスクを内包している。特定の日に高いリターンを生む可能性があるが、それがいつなのかは非常に予測が難しく、長期では壊滅的な損失を生むことになる。このようなETFはどれも、最終的にはゼロに向かって減少していくもので、長期投資家には向かない商品である。

ボラティリティが見せる光と影

では、これらの商品はなぜこれほど人気があるのだろう?この問いへの答えは多数あり、いずれもある程度は正しいと言えるだろう。人気の背景に投機への飽くなき渇望があることは確かだ。また、これらのETFに投資する人全てが、自分が冒しているリスクを理解しているわけではないという意見も一理ある。彼らは潜在的なリターンに目が眩み、リスクという影を意識していないのである。

過去数年間の市場環境も一因となっているかもしれない。バンガードS&P500 ETFの2020年1月から2025年11月までの日次リターンの標準偏差は21%であった。これは1976年9月1日以降の長期でみた標準偏差17.5%を大幅に上回る数値で、ボラティリティの度合いが劇的に高まっている状況を示している。

それも無理からぬことであろう。世界はこの6年間、パンデミック、東欧での地上戦勃発、貿易秩序を破壊しかねない新たな関税措置といった事態を耐えて進んできた。これらの出来事はいずれも市場急落を招いたが、その度に市場は迅速に回復を果たしたのである。

こうした目覚ましい回復が投機の温床となった。なぜなら、これらのリバウンドはバンガードS&P500 ETFの正規分布曲線の右端に位置する、ありえないほどの好成績を象徴するものであり、莫大な富を生む環境となったからである。

賢明な投資家はこの機会を活用し、低コストかつ広く分散投資を行う、長期的に良好なパフォーマンスが期待できるETFに資金を投入してきた。一方、投機家も同様にこの投資機会を認識したが、短期的な利益を狙い、リスクを増幅させるレバレッジ型のETFを選択したのである。

筆者は、過去数年間で株式やETFへの投資を通じて莫大な成功を収めた人々がいることを認めるにやぶさかではない。大きな賭けが人生を変えるほどの富をもたらしたという事例の数々を、様々なメディアが報じている。しかし、彼らの成功は幸運の賜物であり、たまたま適切なタイミングで適切な場所にいたに過ぎない。こうした事例が投機を正当化する理由にはならないのである。

そして、投機のために全てを失った人々の話を、メディアは滅多に報じないのである。

希望の光が射す方へ

100年以上前にルフェーブル氏が著書を出版してから、資産運用業は大きく変化を遂げてきた。現在では、投資信託やETFによる集団投資スキームもあり、投資家が市場に参加するためのよりよい手段が提供されている。個人投資家にとって、リスク分散、運用手数料や取引コストの抑制が手軽にできる環境になっている。これらの進歩はすべて、投資家にとって有利な条件を整え、長期での投資成果の向上に寄与するもである。

ETF市場の現状は、決して悲観的な話ばかりではない。 過去数年間で二つの大きな前向きのトレンドが生まれた。一つ目は、低コストで幅広く分散されたETF――バンガードS&P500ETF、Vanguard S&P 500 ETF, Vanguard Total Stock Market ETF( VTI

)や、iShares Core S&P 500 ETF(IVV)など――への資金流入が総合的に増加していることである。これらのETFは、他のほぼ全てのETFを上回る資金を集めており、ひと月に数十億ドル規模の資金純流入があることも頻繁にある。

以下の表は、2025年12月末時点の資金純流入額ランキングである。上位のETFは長期保有に適した優れた商品であり、今後も長期にわたってその価値を維持すると期待されているものである。

幅広いETFが資金流入を獲得

第二のトレンドは、第一のトレンドともある意味で関係がある。日々の市場の動きや週、月単位の変動を気にせず、より賢明な長期投資を行っている大勢の投資家が、ひとつの大きな勢力として存在感を増していることである。そのような投資家が存在するからこそ、2020年初頭以降、市場が上がっても下がっても、広範な株式市場の動きに連動するETFには非常に安定した資金流入を続けているのである。これは偉大な成果と言えるだろう。

多くの点において、この表の上位を占めるETFは、過去数年間にわたり蔓延してきたカジノ文化に対する解毒剤と言えるだろう。カジノで唯一、持続的に勝ちを収めるのはカジノ側(ハウス)である。それならば、直接カジノ全体を買って保有し続ければ良いのではないだろうか。

※ 本稿はモーニングスターの記事「Investors Are Overlooking a Big Problem With New ETFs」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針