「アクティブ」「パッシブ」という言葉は、投資戦略を語る際に頻繁に使われるが、これは単純な二分法なので微妙なニュアンスの差を表しきれない。実際には、指数連動型のパッシブ運用型ETF(上場投資信託)でも、リスク/リターンのトレードオフを見ると極めて『アクティブ』な運用を行うものがある。また、アクティブ運用型ETFにも、幅広い市場指数とさほど変わらないものも存在している。
どちらが優れているというわけではない。どちらにも運用の良いものも、悪いものもある。アクティブかパッシブかに関わらず重要なのは、運用過程(Process)とそれを担う人材(People)である。実際、ETF間の違いを見極めるときに、今後ますます重要性を増すのはこれらの要素になるはずだ。
黎明期:パッシブファンドとコスト革命
ほんの数十年前まで投資家にとって唯一の選択肢は、アクティブ運用型のミューチュアルファンドだった。1970年代初頭にパッシブ運用型のミューチュアルファンドが登場すると、高額な手数料がアクティブ・ファンドの大きな弱点になった。パッシブ・ファンドは、大勢のファンドマネジャーやアナリストによって株式や債券を評価してポートフォリオを構築する必要がないので、手数料を大幅に安くすることができた。パッシブ運用では、銘柄選択の代わりに、指数の構成銘柄を適切な比率で保有するだけでよいのである。
(※訳注:とはいえ、現在のように安価で計算能力が高くて速いコンピューターが普及していなかった時代には、指数の計算も、ポートフォリオの複製も、リバランスやコーポレートアクションへの対応も、売買発注も、今よりずっと手間とお金のかかる仕事だったことでしょう。)
それ以来投資手法は多様化し、投資家は、手数料の高いアクティブ運用と低コストのインデックス・ファンドという選択肢を手に入れた。初期のインデックス・ファンドの多くはS&P500種指数への連動を目指すものであったが、指数がカバーする市場は広がってゆき、最終的にはすべての上場企業の株式を保有する、より広範なトータル・ストック・マーケット・ファンドへの道が拓かれた。これらのファンドはS&P500よりも市場全体をより多く保有するため、段階的にパッシブ運用を行っていくという方法をとっていた。
Vanguard Total Stock Market ETF(
VTI
それらのインデックス・ファンドやそのETF版は、歴史の中で成功を収めた。長年にわたり、投資家は数千億ドルもの資金をこれらのETFに投資し続けてきた。なぜなら、それらは良好なパフォーマンスを示し、長期的に多くのアクティブ運用ファンドを上回る成果を上げたからである。もちろん、すべてのアクティブ運用マネジャーを下したわけではない(※ 訳注:そもそもパッシブ運用は、トップを諦めてビリを避け、平均を確保する戦略です)。高い手数料を課しながら、市場を上回る成果を上げるアクティブ・ファンドも中には存在している。
中身があるのか、誇大広告か
インデックス(指数)は1990年代末から2000年代初頭にかけて、ベンチマークから投資商品へと進化した。現在では、アクティブ運用マネジャーの評価の目安としてではなく、投資家はファンドを通じて様々な指数に低コストで投資できるようになっている。多くのアクティブ運用マネジャーがベンチマークを下回る運用結果を見せていたため、これは投資家にとって魅力的な提案となった。
ひとたび投資対象として受け入れられるようになると、インデックスはさらに市場とは別の方向へ『進化』を続け、中には市場を上回ることを目指す指数も現れた(何かしらの投資戦略を採用して、その要素を取り込んだ新たな指数が作られた)。こうした指数を採用した「ストラテジックベータETF」は、『市場を上回ることができる潜在的な可能性を持つ』という物語をうたい文句として、資産運用会社が広範な市場インデックス・ファンドよりも段階的に高い手数料を課すもっともらしい根拠を与えた。高い手数料を課せば、資産運用会社の収益は向上する。運用会社はまた、販売すべき新商品を探しており、この新タイプのETFはまさにうってつけの商品だった。アクティブ・ファンドよりも運用コストがずっと低いという点も顧客に訴えやすかった。
さらに、ストラテジックベータETFが持つリスク要因は、投資家や研究者の間で広く受け入れられるようになっていた。割安株や小型株といった要因が、市場全体のパフォーマンスを上回っただけでなく、アクティブ運用者が達成したアウトパフォームの理由の大部分を説明できるという学術論文も発表されたからである。
ストラテジックベータ指数や、それらの指数に連動するETFの根底にある考え方は、アクティブ運用者のアウトパフォーマンスの主な要因を、ずっと低いコストで運用に実装することだ。この観点では、ストラテジックベータ指数はアクティブ運用戦略とパッシブ運用戦略の交点にあるものとも言える。よって立つリスク/リターンのトレードオフについてはアクティブでありながら、指数に連動を目指す点ではパッシブな運用を行うのである。
さて、「果たしてストラテジックベータは、目論見通りの結果を出したのか?」
――全てではないものの、部分的にはこの問いを肯定する証拠が存在している。以下のグラフは、2025年12月までの10年間について、モーニングスター・メダリスト・レーティングで「銀(Silver)」を獲得したSchwab Fundamental US Large Company ETF(FNDX)と、「金(Gold)」評価のアクティブ・ミューチュアルファンドDodge & Cox Stock(DODGX)を、VTIと比較している。
赤、青どちらの折れ線がどのファンドを示すか明記していないが、それがまさにここでの重要なポイントである。こうしてみると、 ETFとアクティブ・ファンドを見分けるのが困難なことがよく分かる。(両者はパッシブ運用ETFとアクティブ運用ファンドであるから)根本的な運用プロセスが大きく異なるにもかかわらず、驚くほど似た軌跡をたどり、ほぼ同じ地点に到達している。2本のファンドは、どちらもバリュー(割安株)志向のポートフォリオであり、かつ経営の優れた企業を優先して投資するという、戦略的な共通点があり、これが過去のパフォーマンスが非常に似通っている理由を説明している可能性が高い。
ストラテジックベータはアクティブ運用を模倣します
この例は意図的に選んでおり、全てのストラテジックベータETFを代表しているわけではない。高評価のアクティブ運用ミューチュアルファンドのリスク/リターン・プロファイルを、低コストのストラテジックベータETFでほぼ再現することが可能であることを示す意図で選択したものである。
ただし、この傾向が今後も続くかどうかは別の問題だ。このような結果を事前に予測できる可能性は低く、他のストラテジックベータ・ファンドのリスク/リターンが、アクティブ運用型ファンドと一致すべきだと主張しているわけではない。
ストラテジックベータETFの中には、中身よりも誇大宣伝のおもむきが強いものもある。例えば、iShares MSCI USA Value Factor ETF(VLUE)は、特定のリスクをコントロールしながら、割安株へのエクスポージャーを高めることを目指している。このETFは、「企業価値倍率(EV/Cash Flow)」というさほど一般的ではない指標を採用しており、これは(市場価格のない)非上場企業を評価する際に用いられる指標である。また、セクターの配分比率を市場全体に連動させることで、割安株型戦略に見られるセクターバイアスによるリスクの高まりを回避している。さらに、保有株式は約150銘柄に限定し、ポジション配分比率の決定はバリュエーションを考慮して行うとしている。
しかしこうした工夫を凝らしても、ラッセル1000バリュー指数のような広範なバリューベンチマークと、十分に差別化を図ることに必ずしも成功しているとは言えない。
以下のグラフは、VLUEとVanguard Russell 1000 Value ETF(VONV)を、VTIと比較したものである。前掲のグラフと同じく、ファクターETFとシンプルなパッシブETFの区別を明示していないので、どちらがどちらかを判別するのは依然として困難である。2017年7月から2019年6月までの2年間を除けば、いずれのETFを選んでも投資家は非常に似通った経験をしたはずだ。両ETFは交互に相手を上回ったり下回ったりしながら、最終的にはほぼ同じような結果に着地している。複雑な戦略を付加しても、結果は似たり寄ったりだったのである。
ストラテジックベータはパッシブ型を模倣します
やがて投資家は、特定のひとつのリスク要因に特化したファクターETF(FNDXやVLUEなど)への関心を失っていった。そのためストラテジックベータETFは、さらなる『進化』を遂げ――運用会社は、1本のETFで複数の異なるリターンの源泉(リスク要因)へのエクスポージャーを提供すると謳う、斬新でより複雑な指数の物語へと目を向けた。マルチファクターETFと呼ばれる商品の誕生である。
しかしこれらのマルチファクターETFも、期待倒れとなって、投資家を失望させた。これらのETFは、複数のリスク要因に分散投資することで、段階的な分散効果を提供するという触れ込みであった。理論上は、1つか2つのリスク要因が低迷しても、他の要因がその不足をカバーすることができるはずである。
それは素晴らしいアイデアのように思えたが、多くのマルチファクターETFは結局、1つか2つのリスク要因を他のリスク要因よりも優先してしまい、そのほとんどが割安株重視のETFとそっくりのパフォーマンスに終わった。アイディア自体は悪くなかったものの、宣伝文句通りの成果を十分に上げることはできなかった。投資家の関心をある程度惹きつけた商品もあったが、爆発的な人気を得るには至らなかったのである。
最後のフロンティア:越境するアクティブとパッシブ、そして2つの『P』の重要性
ストラテジックベータETFの『進化』から得られる重要な教訓がある。それは先述の通り、二つの『P』――運用プロセスと携わる人材――が極めて重要であり、ETFの進化につれてその重要性がますます高まるということだ。
手数料が低下し、税効率がインデックス型ETFと同等となったことで、アクティブ運用型ETFが(アクティブ・ミューチュアルファンドの)代替手段となることが可能になった。投資家もこの変化に注目しており、アクティブETFは今後さらに増加する見込みである。
新たな規制は、アクティブ運用型ETFの成長を加速させる追い風となる。SEC(米国証券取引委員会)は2025年9月29日、ディメンショナル(Diemnsional)に対し、既存のミューチュアルファンドのETFシェアクラス設定の申請を承認する意向を通知した。(※)承認によって、ディメンショナルは既存のミューチュアルファンドに「ETFシェアクラス」を追加することができるようになる。これにより新たなETFが生まれると、既存のファンドにも大きなメリットがもたらされる。ETFの税効率の高い現物取引は、投資信託の全シェアクラスが保有する株式・債券にまで及ぶ可能性があるからだ。当該ミューチュアルファンド全体が不要なキャピタルゲイン分配の支払いを抑制できるようになり、最終的には単独のETFと同等の税効率を享受できるようになる。
(※ 訳注:2001年からバンガード社が保有していたミューチュアルファンドにETFのシェアクラスを追加する仕組みの特許が2023年に期限満了で失効したことで、他社に開放されることになりました。バンガードはこの仕組みによって過去20年で約1000億ドル規模の税負担を軽減したとも言われています。)
これは非常に大きなメリットで、なぜなら、過去数年間にわたり、多くのミューチュアルファンドは、投資家がより税効率の高いETFへ資金を移す動きを受けて、キャピタルゲイン分配を余儀なくされてきたからである。他の数十の資産運用会社も米国証券取引委員会(SEC)に同様の申請を行っており(※)、さらに多くのミューチュアルファンドが承認されることになるだろう。解決すべき課題が残っているため、近い将来にこうしたETFが大量導入されることはないかもしれないが、その波は必ず到来するだろう。
(※ 訳注:Dimensionalに続いて、ブラックロックやフィデリティなど2025年後半から2026年に入って数十社に対して承認が下りています。)
アクティブ運用型ミューチュアルファンドの手数料は、過去数十年間低下の一途をたどってきた。ETFシェアクラスが導入されれば、手数料をさらに引き下げる可能性があるだろう。さらに重要なのは、ETFシェアクラスを導入したアクティブ運用型ミューチュアルファンドは税効率が向上するため、その点であらゆるタイプのETFにもっと近づくことになる。ETFの手数料や税制優遇措置が徐々にミューチュアルファンドにも反映されるようになるにつれ、互いの境界線は更にあやふやになっていくだろう。
だからこそ、アクティブ運用であるかパッシブ運用であるかを問わず、運用プロセスとその背後にある人材こそが、ETF間の差別化においてますます重要になるのである。◇
※ 本稿はモーニングスターの「How the Line Between Active and Passive ETFs Is Blurring」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

