カバードコールETFが活況だが、すべての商品の利回りが高いわけではない

「利回り」に目を奪われず、特性を知り賢く判断しよう――トレードオフを知り、より良い選択を行うには?

Covered-Call ETFs Are Booming. But Not All Yield Is Good
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重要な「トレードオフ」を意識する:

見かけ上より低いリスクで、より高い利回りを提供するカバード・コールETFへの、投資家の人気が高まっていますが、果たして見た目通りの商品なのでしょうか?単純に利回りだけを見て、仕組みに潜むリスクなどを見落としてはいないでしょうか?

モーニングスターのデータによると、過去3年間で1,000億ドル以上の資金がカバードコール戦略やデリバティブ・インカム型の商品に流入しています。カバードコールETFは時に高いインカムを生みますが、それにはコストがかかっています。高いインカムの代わりに、投資家が自覚しないままに放棄しているいくつかのメリットもあります。リタイアメント層やその他のインカム収入を得たい投資家は、高利回り追求のために自らが差し出している「トレードオフ」を認識する必要があります。

モーニングスターの ニュースレター「ETFInvestor 」の編集者、ダニエル・ソティロフがカバードコールETFのリスクとリターンを解説します。

カバードコールETFについて、投資する前に知っておきたい大切なこと

Q1. カバードコールETFとはどんな物で、どのように機能するのでしょうか?:

ソティロフ: 実のところこの運用戦略は何も目新しいものではなく、この数十年オプション市場でトレーダーが活用してきた運用戦略です。ただし、ETFで組成されたのは比較的最近のことです。私は過去10年ほどの間ゆっくりと展開し、この5年ほどは多くの商品が市場に出回るのを見てきました。

どんな物かというと、運用戦略としては、まず原資産(アンダーライング・アセット)を保有します。それは単一銘柄の株式でも、S&P500やNASDAQ100のようなインデックスでも構いません。そして、所有している資産の上にコールオプションを売却します。このオプションは保険契約に似た役割を果たすことを覚えておいてください。その契約を別のトレーダーに売却し、代わりに支払われるプレミアムを得ることができます。

機能としては、このプレミアムがいわば保険料の支払いのようなもので、あなたが得る「インカム」の原泉です。ただし、保険契約と同様に特定の事象が起きたときには、支払いを行う義務が伴います。たとえばコールオプションの場合、その原資産の価格が一定の水準に達するか、その水準を超えた場合、契約を購入した相手に対して支払いが発生します。仕組みを簡単に説明するとこのようなもので、それほど複雑ではありませんが、これが要点です。

Q2. なぜ退職者やその他のインカム追及型の投資家はこれらのETFに惹かれるのでしょうか?2025年、このETFがこれほど人気を集めている理由は何でしょう?

ソティロフ: 「利回り」に尽きるでしょう。これらのETFの「利回り」を見ると、それが本当に人々に魅力的に響くのでしょう。

それは過去に債券型ファンドでもあったことです。その後2010年代のゼロ金利環境では債券利回りがゼロになりました。すると今度は配当株ファンドの利回りが高かったため、しばらくの間人々はこぞって配当株ファンドを購入し、大流行ししました。

そして今はカバード・コールまたはオプション・インカム戦略がもてはやされていますが、それは現在我々の前にある配当株ファンドや債券ファンドよりも利回りがだんだん高くなってきているからでしょう。これが人気の理由で、サーフィンで良い波を求めるように、人々はより高い利回りを追いかけているだけです。

Q3. では、その非常に高いという利回りはどこからやって来るのでしょうか?

ソティロフ: それはオプション契約からのプレミアムです。この仕組みから支払われる保険料(のようなプレミアム)だけで判断すると、配当株ファンドや債券ファンドの利回りよりもはるかに高いです。結局のところ、そういうことです。

しかし、注意する必要があります。これらのプレミアムは時間経過とともに変化するため、ずっと同じというわけではありません。ですから、これらのETFから得られる利回りは大きく変わる可能性があります。典型的な例として、「JPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカムETF」(JEPI)の過去1年間の利回りを見てみましょう。これは現在もっとも人気のあるオプション・インカム戦略ETFのひとつです。このETFの1年間の利回りは、過去5年で最低で6.5%最高で12%の範囲で、その間のどこか収まってきました。2020年にスタートしたETFなのでまだ5年ほどの運用実績ですが、まずまずの結果だと言えるでしょう。とはいえ、利回りは12%から6.5%、ほぼ半分に落ちるし、逆の場合は倍増するわけです。したがって、これらのETFから得られる利回りには、相当大きな変動があることが分かるでしょう。

もう一つこれらの金融商品が伴う特性は、プレミアムが原資産の価格変動に結びついており、それがプレミアムが大きく変動する理由となっていることです。したがって、原資産のボラティリティが高まるにつれて、プレミアムは上昇して利回りも高まりますが、資産がより安定するにつれてプレミアムは下がります。つまり、これらの運用戦略に取り組むときに注意すべきことは、配当株ファンドより高いインカムが得られる分、信頼性は低いかもしれないということです。

Q4. 投資家はどのような種類のトレードオフを行っているのですか?

ソティロフ: いくつかあります。まず、利回りは魔法のようにどこからともなく現れるわけではありません。バックグラウンドでオプション取引が行われており、この時実際にあなたが手放しているのは、原資産の長期的な成長を享受することです。基本的には将来の価格上昇を目先の利回りと交換している、というのが私の考え方です。要するに、原資産の成長に加えて、保有期間中に得られる(配当など)すべての追加収益を得ることはできません。

オプションプレミアムから利回りを得ているのですが、オプションには基本的に、その原資産の上値にキャップ(上限)がかかるので、上値に制限があります。これがこの仕組みに組み込まれたメカニズムです。この上限があるため、カバード・コールETFのトータルリターンは、原資産を超えるリターンは得られない可能性が高いのです。いくつかの摩擦要因となる機能を加えた結果、原資産よりパフォーマンスが低下する可能性が高くなります。

重要なことは、投資家としてこの仕組みを見るならば、優れた長期投資にはならないだろうと思います。もし私が若くて、十分なリスク許容度などを兼ね備えているならば、多少リスクは高くてもS&P500ETFなどの低コストの、利益のほとんどが長期的な価値上昇に裏付けられた資産を選ぶと思います。これが、多くの人が理解すべき重要なことです。資産形成に取り組んでいる場合、優れた長期投資のツールにはならないということです。

Q5. 米国ではETFは節税効果の高い投資として知られています。カバード・コール型ETFの税務上の留意点は何ですか?

(※ 米国の税制の説明なのでスキップしても大丈夫です)

ソティロフ: たしかにETFはキャピタルゲイン課税の繰り延べがあるため、税効率に優れています。ただし、それは資産の価格上昇に対して支払う税金ですよね。インカムについては大きな恩恵は無く、カバード・コール戦略というのはインカムを捻出するための戦略です。ですから、ETFの税務上の効率性の恩恵をすべて避けて通るようなものです。言い換えれば、ETFが与えるすべての税の恩典を放棄するということです。

インカムについても少し異なる方法で課税されます。オプション保険料は、実際にはIRS税法の1256条の対象であり、60%の長期キャピタルゲインと40%の所得税がかかるので、少し複雑です。人よりうまく対処できる人も居ると思いますが、一般的にはこうした商品に投資をした場合、納税時期に少し複雑になる可能性があります。

Q6. カバード・コールETFを保有するなら、課税口座と繰延口座のどちらが良いですか?

ソティロフ: 収益のほとんどがインカム由来ですから、課税繰延口座で保有する必要があります。これがちょっとした罠のようなもので、多くの人がインカムを使う目的で保有しているので、課税対象口座で保有しているおそれがあります。実際の保有者の選択は不明ですが、課税繰延口座で保有すべきです。

Q7. カバードコールETFを保有するのに最適な 退職金口座は?

ソティロフ: 保有口座についてもうひとつ考えるべきことは、何が最適かということです。あなたが様々な口座を持っている場合、どの口座に置くのが最適かということです。ロスIRAのような非課税口座は、インカムへの課税が無いため理想的です。

Q8. 2025年のカバード・コールETFのパフォーマンスについて。どのような結果が出ていますか?

ソティロフ: 今ではあらゆるところに、多数のこの種のETFがあり、デリバティブ・インカム型のカテゴリーやその近辺に150~170本のETFやファンドが存在し、たくさんのカバード・コール戦略があります。リターンも多岐にわたります。2025年上半期の6か月のリターンでは、上はプラス50%から下はマイナス40%まで大きな幅があります。

これだけバラツキがある理由は、これらのETFやファンドの原資産が異なるためです。単一銘柄の株式の物もあれば、S&P500指数、NASDAQ100指数の物もあり、その他あらゆる種類の証券が原資産となります。そして実際にそれらの資産の上にかかるオプションも多種多様です。したがって、オプションと原資産の組み合わせは膨大なものになります。だからこそ、これほど広い範囲に分散した、バラバラの投資結果を目の当たりにするのです。

そして、コストもまた大きく異なります。非常に安いものも中にはありますが、年率1~2%の運用コストがかかるものもあるので、本当に注意を払うべきです。S&P500指数連動型の低コストETFでは年率0.03%程度のコストですが、こうしたシンプルな商品がモーニングスター・カテゴリのデリバティブ・インカム型のETFやファンドの68%を上回る成績を上げています。

つまり、今、我々が目にしているのは何か?ということです。これらの商品のうちの多数が短期でみて、基本的な市場指数をアンダーパフォームする可能性があり、長期でみればもっと多くがそうなる可能性はもっと高いということです。テーマパークの乗り物みたいに上がったり下がったりするイメージですが、まさにそんな感じです。

Q9. モーニングスターのアナリストは、どのカバード・コールETFが投資家にとって堅実な 選択だと考えていますか?その理由も教えてください。

ソティロフ: モーニングスターがレーティングしている「JPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカムETF」(JEPI)があります。このETFはカバード・コール運用戦略の商品の中ではよく知られたもので、現在純資産最大のカバード・コールETFのひとつです。モーニングスター・メダリスト・レーティングで「銅(Bronze)」を獲得しています。コストについては、経費率は35ベーシスポイントで、現時点では約92%のカバード・コールETFやデリバティブ・インカム型の他のETFより低いコストです。ですから、我々は他の同種の選択肢と比べて比較的コストが安いという点でこのETFを気に入っています。何しろ、何を検討するにしてもコストは非常に重要なポイントですから。

このファンドの運用者はハミルトン・ライナー氏で、彼はこの分野で実績があります。彼はS&P500採用株式を中心に戦略を構築しており、これは流動性が大きい株式だということです。広く分散されたポートフォリオで、単一銘柄のリスクに賭ける単一株式ETFのようなクレイジーなリスクとは無縁です。そして彼は、あなたが株式の下振れリスクに完全にさらされていることをよく分かっており、一種のディフェンシブな株式ポートフォリオを構築している点も我々が気に入っていることの一つです。彼はまた、若干のアウト・・オブ・ザ・マネー(OTM)のコールオプションを売却して、指数の上昇余地を少し維持しようと努めています。つまり原資産の価格上昇にかけられたキャップがあるため、手を打ってもう少しだけ余分に上昇からのリターンを得ようとしているのです。これは彼がこの運用戦略の様々な側面に注意を払って運用しているということです。

もう一つ他と異なる彼の取り組みは、投資家の税務処理の負担軽減です。詳細は省きますが、彼はコールオプションを直接使わず、コールオプションのエクスポージャーを与えてくれる株式連動債を使っています。その結果、所得は通常通り所得税が課税されることになり、先に触れた1256条が適用されないので60%/40%のような分割処理をする必要がありません。ただし、すべて所得税として徴収されるのがデメリットで、この仕組みの方が支払う税額が若干高くなります。一方で、ETF保有者の税務の手続きはずっと楽になりますので、この点はトレードオフとなります。こうした点や低コストであることなどを含めて全体でみると、現時点では、より良い選択肢のひとつだと言えると思います。◇

※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

カバードコールETFに関するモーニングスターからのその他の情報

より高いインカムと利回りの魅力に惹かれ、債券ファンドや配当ファンドから離れる投資家もいる。ソティロフ氏は、それがカバード・コールETFの人気が高まっている理由だと考えている。モーニングスターのニュースレター「ETFInvestor」は、債券、配当、カバードコールETFを比較した。

モーニングスター・リサーチ・サービスのマネージャー・リサーチ・アナリスト、ラン・アン・トランによる投資家がJPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカムETFのようなカバードコール型ETFを保有すべきかどうかを検証するカバードコールETFとバッファETFについて、長所が短所を上回るかどうかを参考に、判断してください。最後に、ボラティリティの低い投資アイデアとして、ジリ貧市場に最適な3つのETFもご参考ください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針