検証してみた!AIチャットボットは老後のための資産運用ポートフォリオを構築できるのか?

ChatGPTとCopilotをロボアドバイザーおよびターゲット・デート・ファンドと比較分析

コラージュ・イラストレーション:分解された円グラフと、コンピューター、ポートフォリオ、アバターを見つめる投資家の画像が組み合わさった作品。

ここ数年、AI(人工知能)の話題がニュースの見出しを席巻してきたことには然るべき理由がある。AIの登場は、産業革命に例えられるほどわれわれのあらゆる行動様式を変え、効率を向上させるからである。AI が世界をどのように変えるかという予測が展開されるにつれて、すでにAIの存在に脅かされている業界や職業もある。

金融分野の仕事は、その脅威にさらされている典型的な例である。あるAI モデルは、多くの若い金融アナリストが毎年苦労して受験するCFA 試験の3 つのレベルすべてに合格できる能力をすでに示している。とは言え、試験に合格した人間のアナリストに、AIが取って代わっているわけではない。むしろアナリストたちは、より生産性を高めるために AI を活用するよう奨励されている。

しかし、現在最も脅威にさらされているのは人間の仕事ではなく、最新AI技術の遠い“いとこ”が担っている仕事だったとしたらどうだろうか。

ロボアドバイザーが自動投資にもたらした変革

ロボアドバイザーは、投資の自動化が進む中で2000年代に登場した。人間のアドバイザーよりも手数料が安く、手軽に活用できる利便性から人気を高めた。ロボアドバイザーは、基本的な投資信託やターゲット・デート・ファンドよりも個々の人に適した分散投資ポートフォリオを提供することを目的としている。

ロボアドバイザーは通常、投資家の目標、投資期間、リスク許容度を把握するための診断から始まる。その診断結果を、様々な要素に基づいて資産配分を選択するために事前設定された枠組みに適用する。低コストで手間のかからない投資手法を望む人々にとって有用なサービスである。

AI は発展中の新しい技術であり、今日のロボアドバイザーがまだ再現できていない付加的な能力を持っている。より深い洞察や詳細を得るためにフォローアップの質問を行うことができ、より幅広い投資対象候補を検討する潜在力を持ち、日々進歩している。

AIチャットボットvs.ロボアドバイザー、ターゲット・デート・ファンド(TDF)――ポートフォリオ構築を検証する

AIチャットボットがロボアドバイザーと競争できる能力があるか否かを検証するため、ライフステージの異なる2人の仮想投資家に関する情報を提示した。投資家Aと投資家Bへのプロンプトは下記の通りである。

投資家A(25歳)

  • 私は現在25歳で、60歳で退職したいと考えている。初期投資として1万ドル保有しており、退職まで毎月500ドルを追加投資する予定である。リスク許容度は中程度だと思う。分散投資されたポートフォリオを構築してほしい。

投資家B(60歳)

  • 私は現在60歳で、今後2~5年以内に退職したいと考えている。現在保有しているポートフォリオの評価額は200万ドル、退職するまで毎月500ドルの拠出を継続する予定である。リスク許容度は中程度とだと思う。分散投資されたポートフォリオを構築してほしい。

これらの投資家プロンプトを、2 つの AI チャットボットと 2 つのロボアドバイザーに提示した。

ロボアドバイザーはAIチャットボットとは異なる形で情報を処理する――それぞれのアンケートに基づいて推奨を行うことはできるが、追加の質問を行ったり、投資家の目標やリスクプロファイルを明確化したりする能力はない。また、一般的に設定された資産配分のモデル数が限られている。

アンケートを通じてロボアドバイザーに提供される情報は、AIチャットボットに提供される情報と同じ投資家プロファイルを伝えるものである。またプロンプトは、必要に応じて米国に集中したポートフォリオではなく、グローバルに分散されたポートフォリオを要求している。

ターゲット・デート・ファンドをベンチマークとした

推奨されたすべての資産配分に対して、ターゲット・デート型の上場投資信託(ETF)をベンチマークとして比較した。

ターゲット・デート型ETFは、退職後のための資金を運用する際のもう一つの低コストな選択肢である。これらは、投資家が希望する退職時期に近づくにつれて資産配分を調整するため、ロボアドバイザーの合理的な代替手段となる。投資家Aへの推奨は、iShares LifePath Target Date 2060 ETF(ITDH、2060年を退職目標年とする運用)を比較対象とし、投資家Bへの推奨は、iShares LifePath Target Date 2030 ETF(ITDB、2030年を退職目標年とする運用)を比較対象とした。

AIチャットボットとロボアドバイザーおよびターゲット・デート・ファンドの比較 結果

各プラットフォームが推奨を提示する方法は異なるので、比較を容易にするために推奨内容を下表にまとめた。この表は、各推奨ポートフォリオの資産配分を「米国株式」「海外(米国以外)株式」「債券」「現金/その他」の 4 つの資産カテゴリに分類している。「その他」には REIT、オルタナティブ、マネーマーケットファンドが含まれる。

AIチャットボットであるChatGPT と ロボアドバイザーのSchwab Intelligent Portfolios は具体的なファンドを提示しなかったが、株式・債券・その他の細分化された内訳を提示した。一方、AIチャットボットのCopilot とロボアドバイザー Fidelity Go は、より幅広い資産配分の推奨に加えて具体的なファンドも提示した。

AI対ロボアドバイザーの資産配分

ご提案

25 歳の投資家Aの結果

異なる推奨内容において一定のパターンが見られた。投資家A に対する推奨は、ロボアドバイザーと AIの示した ポートフォリオの間で驚くほど整合性があった。各ツールにおける株式の総エクスポージャーは 65〜70%の範囲であり、ターゲット・デート ETF における 97%の株式配分と比較するとリスクは控えめであった。

ターゲット・デート ETF の一つの限界は、投資家の嗜好やリスク許容度を考慮できない点である。リタイア年をターゲットとする投資期間のグライドパスだけを考慮し、それに応じて標準化したポートフォリオを構築するためである。投資家Aにとっては、ターゲット・デート ETF は最もリスクが高く、最も高いパフォーマンスを示す可能性があるポートフォリオとなった。

60歳の投資家Bの結果

投資家B の推奨もほぼ整合していたが、Schwab Intelligent Portfolios は例外であった。Schwab のロボアドバイザーは、圧倒的に保守的なポートフォリオを構築した。最も高い債券・現金比率を推奨するとともに、株式エクスポージャーを米国株と海外株を合わせてわずか 37%に抑えたのである。

仮想投資家AおよびBにおける資産配分比率の違いは、ポートフォリオ構築の上で、提供された情報のどこに重きを置いたかによって説明できる。

投資家A の場合、AIチャットボットとロボアドバイザーの両者が「中程度のリスク水準」のポートフォリオ構築を目指しており、その目的を達成したように見える。しかし、各推奨に見られる中程度のリスクのポートフォリオからも分かるように、投資家の年齢、投資期間、リタイア目標は、中程度のリスク許容度ほど重視されなかった。

投資リサーチアナリストとしての筆者の見解

投資家Aについては、ターゲット・デートETF以外のすべてのポートフォリオは、今後 35 年間は資金を引き出す予定のない投資家にとっては保守的すぎると主張したい。

投資家 Bについては、Schwab Intelligent Portfolios が債券と現金の配分を大きくしているのは、この投資家が数年以内に退職する予定であるからだと考える。退職に伴い資金の引き出しが発生し、適切な規模の現金バッファおよび/または収益源が必要になるためである。他のポートフォリオは Schwab のものと大きく乖離してはいないが、明確な違いが存在する。

ターゲット・デートETF、ロボアドバイザー、それともAIチャットボット?投資家はどれを活用すべきか

すべての投資家が同じものを求めているわけではなく、また、金融知識のレベルや自身のリスク許容度に対する認識も異なる。これらのツールはそれぞれ異なるタイプの投資家に向けた体験を提供している。

ターゲット・デートETFに向く人は

ターゲット・デートETFやターゲット・デート・ファンドは、老後資金を積み立てるための非常に優れた「ほったらかし型」のツールである。ファンドは世界中に分散投資をしながら、ファンド名に記された目標(退職予定年)に近づくにつれてより保守的な運用へと移行する。例えばiShares LifePath Target Date 2060 ETFは、投資家が退職を予定するまで35年としている。そのため、5年後を退職ターゲットとしている同じシリーズの2030ETFよりもリスクの高い資産配分である。ターゲット・デート型ファンドは、淡々と積立を続け、自分の投資を頻繁に確認したくない「ほったらかし型」の人に適している

ロボ・アドバイザーに向く人は

ロボアドバイザーは、一般的なターゲット・デート・ファンドよりもカスタマイズされた資産配分を提供する。各種質問事項への投資家の回答に基づき、投資期間、リスク許容度、投資経験などを判断する。これは、投資プロセスにおいてどこから始めればよいか分からない人にとって、非常に優れたツールである。

うまく設計されたロボアドバイザーは、投資家が口座を開き、責任ある投資を行い、ポートフォリオを心配する時間を費やすことなく資産管理できるよう支援する。しかし、投資家の運用資産が増えるにつれ、どのロボアドバイザーもターゲットデートファンドより高いコストを支払うことになる可能性が高い。金融市場に関する知識が限られており、何から始めればよいか不安を感じる投資家にとってロボアドバイザーは適している

AIチャットボットを(慎重に)利用すべき人は

最後に、AIチャットボットはロボ・アドバイザーと驚くほど類似した提案を行った。リスクの説明、ポートフォリオ管理業務の遂行、そして投資家が今後何を考えるべきかという次のステップを提案した。

しかし、AIチャットボットの信頼性は、それを使う人間の能力に依存する。ロボ・アドバイザーとは異なり、チャットボットは投資家のポートフォリオを目標通りに維持するための実際の取引を実行できない。AIはポートフォリオ構築を行うには有用だが、老後のための投資計画を立てる際に活用できるのは、投資経験が豊富で自信のある投資家に限られるだろう。

多くの新米投資家は、自身のリスク許容度や投資期間を考慮するよりも、リターンの最大化を目指そうとして誤った方向に進んでしまう。AIチャットボットが投資家を責任ある投資行動へ導く可能性はあるが、同時に高レバレッジでリスクの高い投資に誘い込む可能性もある。AI ツールに「年率20%のリターンが実現可能なポートフォリオ」を提示するよう促すと、オプション、レバレッジ、暗号資産投機の話を始めたのである。

AIツールは、こうしたリスクの高い投資の選択肢につきもののリスクを提示した点では評価できる。しかし、現在のAIには制約が欠如しているため、ロボアドバイザーやターゲット・デート・ファンドではあり得ないような余分なリスクが追加される、というリスクがある。投資経験が豊富で、自らポートフォリオを管理できるDIY投資家にとってのみ、優れたツールとなり得るのはこのためである。

もう一つの重要なポイント:イノベーションはリスクを伴う

資産運用における AI の広範な利用は、「実現するかどうか」ではなく、「どれほど早く実現するか」である。ロボアドバイザー、ターゲット・デート・ファンド、AI アシスタントはそれぞれ独自の強みを持つ一方で、それぞれ明確な限界がある。

ロボアドバイザーはほったらかし型の投資家にとって依然として強力な選択肢であり、ターゲット・デート・ファンドは予測可能なグライドパスを提供する。一方で AI は、追加コストなしに動的で個別化され、インタラクティブなガイダンスを提供するという新たなフロンティアを開いている。

しかし、イノベーションは追加のリスクも伴う。AI チャットボットには監督規制がないため、投資初心者を本人の理解を超える戦略にさらす可能性がある。また、AI はユーザー自身が取引を実行する必要がある。現時点では、AI は十分に知識のある投資家向けのツールとして最適であり、単独のアドバイザーとして利用すべきではない。

AIが進化するにつれ、ロボアドバイザーとインテリジェントアシスタントの境界線は曖昧になり、両者の統合が進む可能性がある。投資家の利益のために、両方の優れた点を併せ持つ新たなツールへと進化を遂げるのを目にする日が、近い将来やってくることを期待している。◇

本記事の一部は、モーニングスターETFインベスター誌2026年1月号に掲載されました サンプル号はこちら をクリック してください。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針