あるETFが自ら招いた流動性危機について

ERSharesプライベート・パブリック・クロスオーバーETFにおける問題は、深刻化しているようです。

都市の風景と背景にグラフ要素を配した、鍵のイメージを用いたコラージュイラストです。

私がERShares Private-Public Crossover ETF(XOVR)の苦境について執筆して以降、このETFは資金流出が急増し、2月25日には投資家によって約6億3000万ドルが売却された。このETFは主に保有する上場株式を売却することで解約に対応したため、ETFに残っている流動性の低いスペースXの特別目的事業体(SpaceX SPV)の資産配分比率が純資産の44.5%にまで膨れ上がっている。

ERShares プライベート・パブリック・クロスオーバーETF:推定日次純流入額およびスペースX特別目的事業体(SPV)の比率

同ETFは、売却が困難な(流動性の低い)資産への投資比率が極めて高くなり、米国証券取引委員会(SEC)が定める非流動性資産保有の上限である15%を大幅に超えた状態にある。これは、投資家が直ちに懸念を抱くべき状況である。

次にどんなことが起きるのか?

事態は今、ルビコン川を渡りつつある。これに似た状況は今までにも確かにあり、例えばロシアがウクライナに侵攻した際にはロシア株ETFが取引停止に陥ったこともある。しかし、これほど大型のETFが、これほど流動性の低い銘柄にこれほど過剰に集中した事例はまったく前例が無い。

今後の展開は主に2つの要因にかかっている:投資家が資金をどうするかと、SpaceX SPVの保有比率を下げることができるか否かである。

投資家がETFから資金を引き揚げ続けるなら、流動性の低い資産の比率が増すことになり、ETFへのプレッシャーはさらに高まるだろう。そうなれば、日々の流動性を提供する手段であるETFの内部に、取引が困難な資産を積み上げてリスクを高めることになり、その影響がリアルタイムで鮮明に現れることになる。

したがって、運用会社がSpaceX SPVの持分について、少なくともその一部を売却できなければ、問題は悪化するだろう。このシナリオにおける最善の結末は、ETFに資金流入があり、保有している公開株式の中で普通株が良好なパフォーマンスを上げるという組み合わせである。もしそうなれば、ポートフォリオ内のSPVの比率が低下する効果が生まれるからだ。

ETFの価格が純資産価値にほぼ連動する従来通りの運用を継続できるかどうかは、現時点では予測不可能である。これまで大きな問題にならなかったのは、マーケットメイカーが水面下でポートフォリオの基礎となる保有株式のカスタムバスケットをETFと交換し、またその逆の取引も行ってきたからだ。しかし、それはSPVの保有比率が現在よりはるかに低かった頃の話である。

ERShares Private-Public Crossover ETFの取締役会が設定をとりやめ、事実上新規投資の受け入れを停止しするとは考えにくい。そんなことをすればSpaceX SPVの保有比率を下げる数少ない手段の一つを失い、ETFがクローズドエンド型ファンドのように、純資産価値に対して大幅なプレミアムで取引される原因となる可能性がある。 ETFの運用会社と取締役会が、さらなる売却を阻止するためにファンドの運用を停止しようとする可能性はさらに低いだろう(米国証券取引委員会(SEC)の承認が条件となる)。

最も可能性の高い今後の展開は、いわば泥縄式の手探りの対応が続くことである。運用会社がSpaceX SPVの保有比率を制御できれば、ETFはほぼ支障なく機能するであろう。しかし、同ETFでさらに売却が増加したり、保有する上場株式の売却を余儀なくされれば、SPVの比率はさらに上昇することになる。

そうなったら、売買スプレッドの拡大やETF価格が純資産価値を下回るリスクが生じる可能性がある。また、SPVの一部をETFにとって不利な条件で売却する必要に迫られた場合、投資家は損失を被る可能性がある。SPVのユニットはプライベート・エクイティの持分自体よりも取引しにくいため、このような事態は十分に起こり得るのである。

投資家がとるべき対応は?

ERShares Private-Public Crossover ETFでは、このように数々の問題が起きている。運用会社によるSpaceX SPVポジションの明確な開示と管理への取り組みは、深刻な欠陥を抱えていた。保有している公開株式群のパフォーマンスは低迷し、SpaceXの評価額が急騰したにもかかわらず、投資家はSPVからほとんど利益を得られていないようだ。こうした欠点だけでも、深い疑念を抱くに足るものである。

現在、運用会社はETFの需要を誤って判断し、SpaceX SPVのポジションが過大な比率となる事態を招いてしまった。これは、運用会社のリスク管理とガバナンス体制に対する投資家の懸念をさらに深め、失格とさえ言えるレベルの話である。

こうした状況を踏まえ、投資家はERShares Private-Public Crossover ETFに極めて慎重になるべきである。

現在同ETFを保有している投資家はジレンマに直面している。SpaceX SPVのポジションから何らかの価値を引き出せること、そしてETFが保有している公開株式のリターンを期待して、ETFを持ち続けるという選択肢もある。しかし、もしそうすれば同時に、ERShares Private-Public Crossover ETFからのさらなる資金流出や、保有している上場株式にさらに損失が発生した場合、流動性の低い保有資産を中心にETFの価値が徐々に低下していくリスクに直面するかもしれない。

ではリスクとは具体的にはどのようなものだろう? 投資家は、市場価格が純資産価値を下回る状況で、さらに流動性が低下したポートフォリオを抱え込む可能性がある。運用会社は他に選択肢がなくなり、SpaceX SPVの持分の少なくとも一部を売却するという苦渋の決断を迫られ、実際にそうなれば、その損失を残った投資家が負担することになる。(見かけ上は2月25日にETFのSpaceX SPVの一部が売却できたようにも見えるが、実際にはETFが流動性確保のために保有していたキャッシュだけが動いた可能性がある)。

このシナリオが何とか回避されることを願っているが、同ETFがこれまで投資家に与えてきた数々の失望を考慮すると、現在保有している投資家は、こうした潜在的な結果について冷静に考える必要があるだろう。◇

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※ 本稿はモーニングスターの「An ETF Faces a Liquidity Crunch of Its Own Making」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。

著者はこの記事で言及されたいかなる有価証券も保有していません。詳細はこちらをご覧ください: モーニングスターの編集方針