ミューチュアルファンドの世界では数十年前に、「アクティブ型とパッシブ型のどちらが優れているか?」という激しい議論がありました。現在では、同様の議論がETF(上場投資信託)について起きています。果たしてこの議論は意味のあることなのでしょうか?そして、アクティブ型とパッシブ型のETF、実際にはどちらが優れているのでしょうか?
本題であるETFの分野に移る前に、まずミューチュアルファンドをめぐる過去の議論について振り返ります。
かつての議論:アクティブ・ファンド vs. パッシブ・ファンド
アクティブ・ファンドを支持する論点は以下の通りでした:
- 市場は非効率的であり、アルファは常に存在する。
- 市場低迷時には、ファンドマネジャーはキャッシュポジションを積み増すなど、防御的な対応を取ることができる。
- ファンドマネジャーには柔軟性があり、確信度の高い市場分野に投資することができる。
アクティブ・ファンドに対する反論は以下の通りでした:
- インデックス・ファンドよりもはるかに経費率が高い。
- 売却しなかった投資家に税制上不利なキャピタルゲイン課税が生じることがよくある。
- 個々のファンドマネジャーに由来するリスクがある。
当時モーニングスターなどが発表したデータは説得力のあるものでした。手数料の高いアクティブ・ファンドは、同様の資産クラスに投資を行う手数料の安いパッシブ・ファンドに比べてパフォーマンスが劣る傾向がありました。
今日の議論:アクティブETF vs. パッシブETF
現在、税制上有利なETFの普及と手数料の低下により、アクティブ運用に対する従来の反論は、ETFに関しては以前ほど説得力を持ちません。アクティブETFは同種のミューチュアルファンドより税効率が良い構造をしています。インカインド(現物拠出・償還)と呼ばれる仕組みにより、売却しない投資家にキャピタルゲイン課税が発生しないためです。また、アクティブETFの手数料は低下傾向にあります。
モーニングスターのETF・パッシブ戦略リサーチ(北米担当)のブライアン・アーマーは最近の記事で、「2020年に登場して以来、累計約3,000本のアクティブETFが設定されました。純資産額は当時の1,400億ドルから、現在は1.6兆ドル以上まで増加しています」と述べています。
2025年末時点の平均経費率をみると、パッシブ型の株式ETFは0.14%、債券ETFはさらに安く0.09%でした。一方、アクティブ型の株式ETFは0.44%、債券ETFは0.33%でした。数十年前のミューチュアルファンドに比べれば、アクティブ型とパッシブ型の運用経費率の差は、ETFでは大幅に縮小しています。
では、アクティブETFの運用者にとって、このわずかな経費率の差を埋めるほど『市場の非効率性』は有効なのでしょうか?アーマーの報告では、2025年までの3年間では、運用成績がベンチマークを上回ったアクティブETFの割合は50%でした。
アクティブETFの半数がパッシブETFを上回るパフォーマンスを維持する可能性があり、ETFという構造がミューチュアルファンドで生じる税の非効率性の問題を解決するため、アクティブETFがパッシブETFと同様に十分な成果を生むと考える人もいるでしょう。しかし、私はその結論にすぐには同意することはできません。
最初に浮かんだ疑問は、果たしてアクティブETFの半数が、ほんとうに今後もパッシブETFを上回り続けることができるのか?ということです。特に、成績不振のファンドは往々にして償還されるため、生存バイアスを考慮に入れると、なおさら疑問が残ります。この点については、時が経ってみなければ真相は分かりません。
しかし、たとえアクティブ型がパッシブ型と同程度のパフォーマンスを維持したとしても、銘柄選択による市場との乖離は、アクティブ・リスクという追加的なリスクをもたらします。そして金融理論では、投資家は追加されたリスクに見合う報酬を求めるとされます。つまり、より高いリターンが要求されます。
最後にもう一点、ベンチマークによる比較は完璧な科学というわけではありません。債券型の資産クラスの例を見ましょう。モーニングスターのデータによると、先に挙げた期間と同じ2025年末までの3年間で、アクティブ型の中期コア債券ファンドの74%がベンチマークを上回りました。
この結果は、アクティブ運用マネジャーは市場の変化に対応して、クレジットの選択やイールドカーブのポジショニングといった構造的な優位性を活かせるためと考えられます。当然、パッシブ運用ではそれはできません。この主張を裏付けるような話を、かつてバンガード社からも聞きました。2024年11月30日までの過去5年間で、同社のアクティブ債券ファンドの92%がベンチマークを上回っていたという話です。
一例として直近の状況をみると、2024年年初から2026年4月16日までの期間では、アクティブ運用型のVanguard Core Bond ETF(VCRB)のリターンは10.66%で、パッシブ運用型のVanguard Total Bond Market Index ETF(BND)を1.49パーセントポイント上回りました。モーニングスターは、両ファンドを同じ「米国・中期コア債券」に分類し、同一のカテゴリ・ベンチマークで評価されています。VCRBは上位4分の1のパフォーマンスを示しているのに対し、BNDはカテゴリ平均を下回っています。
しかし、これはアルファと言えるのでしょうか?モーニングスターはベンチマーク設定において優れた仕事を行っていますが、完璧な科学というわけではありません。2つのETFとカテゴリ平均はデュレーションは似た水準ですが、以下に示すように信用リスクの取り方には大きな違いがあります。
パッシブ運用のBNDは資産の72%以上をAAA格付けの債券で保有していますが、アクティブ運用のVCRBはAAA格債券の割合が19パーセントポイント近く低くなっています。カテゴリ平均ではAAA格付け債券の割合は15%程度です。VCRBもカテゴリ平均も、一部にBBB格以下のジャンク債(低格付け債)や無格付けの債券が含まれています。一方、BNDには、実質的にそうした債券はほとんど含まれていません。
したがって、VCRBもカテゴリ平均も、アルファを得たとは言えないと私は考えます。アウトパフォーマンスは、より多くの信用リスクを負った見返りに過ぎないと言えるのではないでしょうか。
以下は、2つのETFとカテゴリ平均について、債券の格付け別組入比率を一覧にしたものです。
バンガード・トータル・ボンドETFおよびバンガード・コア・ボンドETFのレーティングの内訳
私からのアドバイス:手数料と分散に注意しましょう
アクティブ運用とパッシブ運用のいずれが優れているかという議論も重要ですが、それ以上に大切なことは、経費率が高いか安いか、集中投資か分散投資か、ということです。
実際、低コストで分散投資をしているアクティブETFよりもはるかにパフォーマンスの劣る、集中投資型で経費率が高いパッシブETFも存在します。一般に、最も低コストで分散投資を行うETFは、広く分散された指数への連動を目指す時価総額加重型のパッシブETFであり、年間手数料はわずか0.03%程度です。
アクティブ型ETFの購入を検討されるのであれば、手数料が安く、広く分散投資されているものを選びましょう。一時的に突出した成績を収めて目立つETFは、手数料が高いケースが多く、資金流入の拡大に伴い成績が鈍化する傾向があるため、注意が必要です。ARK Innovation ETF(ARKK)がその一例です。
私見としては、一般にアクティブETFはアクティブ・ミューチュアルファンドより優れていますが、最もコストが低く、最も幅広く分散されたパッシブETFには及ばないと思います。◇
※ 本稿はモーニングスターの「Active Versus Passive ETFs: Why Lower Fees Still Win」をモーニングスター・ジャパンが翻訳したものです。原文と翻訳に相違がある場合は、原文が優先されます。
※ 本稿は、情報提供のみを目的としており、特定の金融商品、銘柄などを推奨するものではありません。投資における判断は、ご自身の投資目的、投資期間、資金性格、投資への姿勢などを勘案して、ご自身の責任において慎重に行ってください。

